シェリーからバーボンへ

7月に書いた記事の第2弾。今回はウイスキー今昔的な話をする。
よく、昔はよかったな、旨かったな、と懐古する。まあ人の常だ。ウイスキーに関しても、懐古するシーンにたびたび出くわす。
これは仕方のないことで、ウイスキーの香味は時代とともに大きく変わってきている。それを物語るのが樽の変遷だ。

樽
 どの材でつくられた樽で熟成するかに よって、原酒の香味は大きく異なる。 写真/川田雅宏
ご存知のように18世紀に樽熟成が発見された、というのが通説だ。その樽はシェリーの空き樽だった。そして原酒をシェリー樽に貯蔵熟成させるのが通例化したのだが、現在はどうか。
スコッチの9割が北米産ホワイトオークで、さらにそのうちの9割がバーボン樽の再利用だといわれている。つまりシェリー樽熟成の香味から、バーボン樽熟成の香味へと大きく変化してきているのだ。

バーボン樽が主役の理由

つまり、スコッチはかつての香味を過去へと追いやったということになる。なぜそうなったのか。
古くからイギリスでは輸入ワイン、ブランデーが飲まれていた。その中にはもちろんシェリーが含まれており、いまでもイギリスはシェリーを大量に輸入している。時の流れの中で、まず樽買いからタンクでの輸入となり、またスペインのシェリーメーカーが瓶詰めで売るようになった。
そうなってくるとシェリーの空き樽が入手しづらくなる。世の中はよくできたもので、20世紀前半に北米資本がスコッチに入り込み、ホワイトオークが少しずつ入り込むようになる。
第二次大戦後はそれが顕著になり、決定的となったのは1964年のこと。アメリカでバーボン法が確立され、バーボンウイスキーの定義の中に新樽での貯蔵が義務づけられた。これによりバーボンの貯蔵熟成に1度使われた樽が容易に入手できるようになる。

他の用途に使われなければ廃棄されてしまうバーボン樽は、入手が簡単で安価だ。そこからバーボン樽再利用が一般化していく。
さて次ページではバーボン樽で成功したグレンモーレンジ、コモンオーク(通称スパニッシュオーク)のシェリー樽にこだわるマッカラン、そして世界でも唯一日本のオーク、ミズナラの新樽で熟成を試みているサントリーの共通点について語る。(次ページへつづく)