事実って、恐い

世の中、知らないほうがよかった、ということがままある。
昨年の夏、仕事でコーヒー業界の方に話を聞く機会があった。無駄話の時間に何気なく、パリのカフェで飲むエスプレッソをおいしく感じたことがない、と私は言った。すると業界の方は苦笑しながら、こう返した。
「ああ、パリのカフェね。ほとんどが最低ランクの豆なんですよ。とくにカフェオレに使うコーヒー豆は、ウーン」
その方は唸ったまま、黙ってしまった。しばらくして「パリのカフェのあの雰囲気の中で飲むってことが、まあ、いいんですね」ととりなした。

やっぱりそうだったのか、という気持ちと、知らないほうがよかったという気持ちがないまぜになって、嫌な気分になった。事実って恐いよね。
 

Eが入るのは差別化のため

タラモアデュー
アイリッシュウイスキー『タラモアデュー』のラベル。
で、Whiskyとwhiskey。前回の記事でラベルについて書いたら、知人がウイスキーの綴りのEの有無について教えてくれと言ってきた。私は、知ったからってどうってことないよ、と答えたが、それでも食い下がってこられたので、一応記事にしてみた。
知ったからといって、へぇーっ、て驚くほどのことでもない。それを承知しておいていただきたい。

WHISKEYと、KとYの間にEが入るのはアイリッシュウイスキー。そしてアメリカンウイスキーにもEが入ったものが多い。スコッチ、カナディアン、ジャパニーズはWHISKYとEの無い綴りだ。
では何故アイリッシュはWHISKEYなのか。19世紀のことといわれているのだが、アイルランドの首都ダブリンの業者が、他のウイスキーと俺っちのウイスキーは違うんだ、と誇るため、差別化のためにEを入れた。
ところがアイルランドの他の業者もそれを真似たものだから、アイリッシュウイスキーはいつの間にかWHISKEYと綴るようになった。
ではアメリカンはどうか。(次ページへつづく)