ブランド豚はシングルモルト

とんかつを食べながらウイスキーを飲む。これは初体験のことだった。ビールはある。極めて希だがワインもある。記憶の中に日本酒と熱燗もある。でもウイスキーはなかった。

いつものようにチームキャッツアイのふたりの女性に連れられて店に行ったのだが、今回は驚いた。まず店名。『豚組』ぶたぐみ、って読むしかないんだけど、ほんとかよ、である。
ところが、ほんとうだった。エリートというか厳選したハイレベルなブランド豚がさまざまに仕入れられている。メニューに載せられたブランド名を目にし、店内をそよぐ芳しい香りに鼻孔をくすぐられると、『豚組』という店名が理解できるようになるのだ。
店内と外観
お店は風情ある民家風。2階には座敷があり、各テーブルごとに仕切りがある半個室状態なので、居心地がいい。
ブランド豚は生産者の顔が見える。生産者が良好な環境で真摯に飼育した様子が伝わってきて、食す者に安心感を与える。それはシングルモルトの香味がつくり手や風土、蒸溜所の環境をダイレクトに伝えてくるのと同じだ。
そして品よくさまざまに旨味を主張してくる豚肉に、感動し、凄味さえ感じる。

もちろんとんかつの店であるからして、大石智料理長以下、職人さんの腕がいいからこの凄味を感じさせるのだろうが、それにしてもだ。旨いってのを超越して、至福のとんかつ。これまでロースかつ定食だフィレだのって言って食べていた次元とはまったく異なるものだ。
とにかく個性。そして食べ比べができる。数あるブランド豚から厳選したそれぞれが持つ、独特の旨味を体感するのだ。

待ち時間は鹿肉とバランタイン

で、とんかつが揚げ上がるまでに蝦夷鹿のカルパッチョ(¥1,500)とバランタイン17年をトルネードグラス(¥1,000)で味わう。
このエゾ鹿ってのは高タンパク、低脂肪、低カロリー。食感はまったりとしているが味にはしつこさがない。フルーティでスパイシーな香り、バニラのような甘さに潜むスモーキーフレーバーが快いバランタインの香味がエゾ鹿をしっとりと抱く。これだけで十分満足といえる。

トルネードはバランタインが推奨している飲み方のひとつ。大ぶりの専用グラスにかち割り氷とバランタインを入れ、グラスのステム(脚)を持って円を描くようにまわすというもの。こうするとグラスの壁を香りが華やかに立ち昇るのがよくわかる。好みではあるが、ウイスキーと同量の水を足してまた円を描くようにグラスをまわしてトルネードしてみると香りのエレガントさが増し、口当たりもまろやかになる。

鹿肉とトルネードを満喫しながら、とんかつとウイスキーってのはどんなものだろうと、少しずつ期待感が膨らんでいく。(次ページへつづく)