女性も気軽に飲めるバー。

『エヴィータ』を見つけるのは容易だ。銀座8丁目、日航ホテルの2、3軒隣りのビルの9階にある。
オーナーバーテンダーは亀島延昌氏。30代前半の男前だ。
亀島氏が24歳で霞ヶ関の『ガスライト』に勤めていた頃からなので長い付き合いとなる。いくつか店を移り、修業していく中で、プロフェッショナルになっていく様を見つめつつ、最初の出会いの頃と変わることのない生真面目さと少年のような爽やかさを失わない姿に好感を抱いている。

独立していい店を開いた。『EVITA』という女性名詞を冠したところもいい。
「皆さまに愛されるお店を目指して、この名前にしました。女性にも気軽にいらしていただき、構えることなくバーという空間を愉しんでいただきたい」
亀島はこう言う。彼のように明るく親しみやすいキャラならはじめての女性客もリラックスできるだろうし、彼が変に肩に力を入れなければ願わずとも愛される店になるだろうと思う。

店はいたってバーらしい、スタンダードなつくりで、ニューヨーカー的にいえばシーク、つまりシックだ。ほどよい緊張感、ほどよい落ち着きがある。ボトル棚にはウイスキーのオールド・ボトルも見受けられるが、最近よくあるいかにも的ではない。

『エヴィータ』では私は亀島氏のヴィンテージ・マティーニを飲む。砂糖の甘味のあるオールド・トム・ジン、スウィートヴェルモット、シュガーシロップ少々というレシピのマティーニだ。
カクテルに詳しい人なら、レシピだけを聞くと随分と甘そうだなとのイメージを抱かれることだろう。だが、これが意外とドライ。マティーニをあんまり好まない私には喜ばしい味わいなのだ。

これをひと口飲んでからでないと、どうも亀島氏に会った気がしない。無駄口を叩けない。つまり挨拶がわりの一杯がヴィンテージ・マティーニだ。

ただひと言つけ加えておく。他の店に出かけてヴィンテージ・マティーニといってもおそらく通じないだろう。亀島氏と相談して私が勝手に名付けたもなのだ。シュガーシロップを使わなかったら、19世紀末までの一般的なマティーニである。
早い話、その昔のマティーニは甘味があって、赤い色をしていた。いまのように澄んだ辛口のカクテルではなかった。

さて、そろそろ亀島氏のおすすめのウイスキーを紹介しよう。