奈良にこの名店あり


ご主人「はやし」さんは、いわゆる脱サラでお店を築いた人だ。そばが好き。いや、好きなんてものじゃなくて、大好き。その思いだけで、当時蕎麦屋さんが数えるほどしかなかった奈良県の、決して交通至便とは言い難い住宅地の中に、とても素敵な手打ちそばのお店をこしらえた。

私は、電子メールを通じて、その思いが開店として実を結び、そのあと、大けがをしたり、客足が途絶えたり、近所にライバル店ができたりと、いろいろな「事件」があって、それでも年々売上もお客様の数も伸び続け、ついに開店6周年を迎えた今年は、押しも押されもしない奈良野の名店となっている、そうした、全く平坦ではないけれども喜怒哀楽に満ちたストーリーを楽しませてもらった。

その思いは麺線にのる


研究熱心な「はやし」さんは、いま、粗碾の田舎蕎麦にご執心だ。独自のやりかたをあみだして、毎回すこしずつ進化している。もともと技術系の会社に勤めていたから、技術的な改良や改善というのは、「はやし」さんのDNAみたいなものだろう。


▲はやし さんが丹精をこめた黒椿(4月)

「はやし」さんは、そばと同じくらいに、花と人が好きだ。要するに、放っておけないもの、手をさしのべてあげないといけないものを、いつも慈しんでいる。こういう人のそばは、優しい。

最近の林さんの水回しをみせてもらった、適正加水量に向かって9割の水を投入する。「ちょっと水足りないなぁ」と独りごちる「はやし」さんの顔は、砂遊びをする少年のように楽しそうだ。


▲はやしさんの最近の水回し

できあがった田舎そばは、どんな感じなのだろう?