任天堂のチャレンジとWiiの課題

ゼノブレイドの図
ゼノブレイドはゼノサーガシリーズのモノリスソフトが開発するRPGです。WiiでRPGをヒットさせることができるでしょうか。
今、据え置きゲーム機で最も普及しているハードと言えば、Wiiです。しかし、そのWiiも全く課題がないハードかというとそうでもありません。ソフトはたくさん売れていますが、その多くは任天堂のタイトルで、特にWiiスポーツやNewスーパーマリオブラザーズWii(NewマリオWii)のように多人数で遊べるものが上位をしめます。その結果、任天堂のソフトが出ない時期があると一気に市場が冷めてしまう、という状況があります。

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任天堂は今、かなり集中的にゲーマー向けの、しかも1人でじっくり遊ぶタイプのゲームを投入してこの課題を克服しようとしています。2010年2月11日に発売された斬撃のレギンレイヴに始まり、5月27日に発売されたばかりのマリオギャラクシー2、そしてこれからは、ゼノブレイドやMETROID Other M、ラストストーリーなど、1人用のアクションやRPGなどが多数発売されます。

しかし、このチャレンジはなかなか困難なものになるかもしれません。その理由は、Wiiが置かれている場所にあります。

PS3やXbox 360が自室にあって、Wiiがリビングにある理由

テレビを独占するの図
何十時間もかかるゲームをリビングのテレビを使って遊ぶのは、ちょっとはばかられることもあるでしょう。
Wiiと、PlayStation3(以下PS3)やXbox 360を比べた場合に、大きな違いのうちの1つは、ハードが置かれている場所です。Wiiは家族が集まるリビングに置かれる場合が比較的多く、逆に、PS3やXbox 360はハードを買ったユーザーの自室に置かれるケースが多いようです。

何故そうなるかといえば、利用する状況が違うからですね。Wiiで売れているWiiスポーツやNewマリオWiiは複数人で遊ぶことでより面白くなるゲームですから、自然と人が集まりやすいところにゲーム機が置かれます。WiiFitなんかも、家族のみんなが使えるゲームですから、リビングにあるのがいいでしょう。

逆に、PS3でたくさん売れたゲームと言えば、メタルギア・ソリッド4・ガンズ・オブ・ザ・パトリオットやファイナルファンタジー13といった1人でじっくり遊ぶタイプのゲームです。これを遊ぶのならやっぱりリビングのテレビを長時間独占するよりは、自室のテレビで遊んだ方が落ち着いてプレイできるというものです。また、PS3やXbox 360は増えてきてる海外のゲームの中には、戦争ものや暴力的な表現のあるものも多いですから、こういったものをリビングでやることに抵抗がある人も少なくないかもしれません。

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じゃあ、ひとりでじっくりやるゲームの多いPS3は自室で遊ばれているのに、リビングにあるWiiにそういうゲームを投入したら、どうなるでしょう?

場所の壁

スーパーマリオギャラクシー2の図
スーパーマリオギャラクシー2は、基本は1人プレイですが、もう1人がアシストするといった協力プレイも。リビングにあるWiiで遊んでもらうためには、こういう工夫が必要なのかもしれません。
もちろん、自室でWiiを遊んでいる人もいるでしょうし、リビングで長時間ゲームをする人もいるでしょう。でも、それは多数派ではないかもしれません。

特に、今はニンテンドーDS(以下DS)やPSPなど、携帯機が圧倒的に普及しています。DSやPSPなら誰にも気を使う事なく、邪魔されずに、じっくりとゲームに没入することが可能です。

そんな中で、Wiiで1人用のゲームを遊んでもらうということは、いつでも気兼ねなくできる携帯ゲーム機ではなくて、わざわざリビングにあるWiiを使ってでも遊びたくなるゲームを提供しなくてはいけない、ということです。

WiiスポーツやNewマリオWiiは、わざわざリビングで遊ぶ意味が十分にあります。みんなで1つの画面をみて一緒に遊ぶからです。それによって携帯ゲーム機にはない面白さがあります。では、1人用のアクションや、RPGなどは同様の価値を作ることができるのか、ということがポイントなのです。

PSムーブやNatalの難しさ

PSムーブの図
PSムーブやNatalを使ってみんなが楽しめるゲームを遊んでもらうには、みんなで楽しめる場所に置いてもらうことが必要になります。
この場所の壁は、何もWiiだけにあるわけではなく、全ての据え置きハードにとって重要な問題です。例えばPS3とXbox 360はそれぞれ新しいモーションコントローラーシステム、PlayStation MoveモーションコントローラとProject Natalを発表しています。Wiiのように、体の動きでゲームを遊べるようになり、これを使ってライトユーザーの取り込みを狙います。

この場合は、PS3やXbox 360が自室にあることが障害になります。新しいコントローラーシステムを使ったRPGやFPS、ということであれば問題はありませんし、実際そういうものも出てくるでしょうが、それはユーザー層をあまり広げないかもしれません。そして、家族みんなで楽しく遊べるようなものを使って新規層を開拓しようと思えば、その為にPS3の置き場所を変えるような力のあるゲームを提供しなくてはいけない、ということになってしまいます。

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結局、Wiiも、PS3やXbox 360もそれぞれに合ったユーザー層を獲得していて、そこから層を広げようと思うと、場所の問題が大きく立ちはだかります。このことは、据え置きゲーム機の在り方を示唆しているのではないでしょうか。

据え置きゲーム機の在り方を考え直す

据え置きハードと携帯ハードの図
いまや、ゲーム業界の主流は携帯ゲーム機に。据え置きゲーム機の位置づけは、もう一度見直す必要がありそうです。(イラスト 橋本モチチ
かつては、ゲームハードというのはどれか1つが市場を制すると、その1つが多様な層をユーザーとして獲得し、色んな種類のゲームが売れるようになりました。逆に、トップを譲ったハードは独自の切り口を持って比較的限定されたユーザーが集中します。

しかし、今、据え置きゲーム機のトップを走るWiiであっても、その使われ方は多様とは言えず、はっきりとした傾向があります。多様な層にアプローチできるハードは、据え置きゲーム機から、自分の好きな場所を選んで遊べる携帯ゲーム機に移り、3000万台を越えて普及したDSが今その役割を果たしているように感じます。

過去のビジネスモデルを引き継いでいる現在のハードも、ハードメーカーは厚みのあるユーザー層を目指し、今持っていない市場を取りに行く戦略を立てています。しかし、ここでもう一度、据え置きゲーム機という商品がユーザーにとってどんな存在であるのか、考え直してみる必要がありそうです。

1人でじっくり遊ぶゲームを次々と用意した任天堂のチャレンジは成功し、Wiiは場所の壁を越えることができるのでしょうか。この結果も、重要なヒントになるかもしれません。

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