面白くても売れないゲーム

売れないスパイラルの図
一度はまると、いかにゲームが良く出来ていても抜け出せない、そんな売れないスパイラルがあるんです。
売れるゲームはどうして売れるのでしょうか。面白いからでしょうか。売れないゲームはどうして売れないのでしょうか。面白くないからでしょうか。必ずしも、そうではありません。面白いのに売れないゲームだっていくつもあります。そんなタイトルが、ユーザーからは隠れた名作というような扱いでひっそり評価されていたりするんです。

売れないゲームというのは、時に、ゲームの中身とは無関係に売れないスパイラルに陥り、脱出できなくなることがあります。今回はそんな、売れないゲームがはまりこむ構造的な問題について、お話してみたいと思います。

新品ソフトは、利益が薄い

リンクとゼルダの図
出荷過多の為に値崩れを起こしてしまったゼルダの伝説 大地の汽笛。こういった状況はお店にとっては大変にマズイわけです。
売れないスパイラルをご説明するには、まず、ゲーム販売店のビジネスについて少しお話する必要があります。ゲームという商品はとても利益の少ない商品です。5本仕入れて、1本あまると、それで粗利が吹き飛ぶ、そんなイメージです。もちろん、値下げをして売ればさらに利益は厳しく、場合によっては大損しながら販売している商品もあります。

最近では、2009年末に発売されたゼルダの伝説 大地の汽笛が値崩れを起こしました。発売1ヶ月もたたずにほぼ半額で買えるお店も出現したほどです。このケースだと、お店はかなり損をしていることになります。

そんなことでは商売にならないだろうと思われるかもしれませんが、これはあくまで新品ソフトのお話。多くのゲーム屋さんは新品は薄利でさばいて、中古で利益を取る構造になっています。中古ソフトは、買取価格も販売価格も、お店が主導的にコントロールできるので利益を作りやすいんですね。

少し話がそれました。大切なのは、新品商品は利益が薄いということ。ですから、適切な数を仕入れて過剰在庫を持たないということはお店を運営していく上で、非常にシビアに考えなければいけない問題です。

この、余さず売らなければいけないということが、売れないスパイラルの大きなキーになります。

5本仕入れて、おしまい

お店の図
もちろんこの話には例外もあります。例えば知育系など、ライトユーザーが多く購入するゲームなどはある程度時間をかけてゆっくり売られます。当然お店も、長いスパンで在庫管理を考えます。
ある、売れないゲームがあるとします。出荷5万本で、初週販売数が2万本。知名度はないけれど、内容が斬新で、一部のマニアなユーザーには期待されていました。で、あるお店がそれを5本仕入れましたと想定しましょう。

じゃあこれが、発売と同時に5本がすぐになくなったら、お店の人は全国の集計なんかもチェックしながらリピート、つまり再発注をかけると思うんですね。でも、初週2万本で、自分のところのお店も2本しか売れなかった。先程お話したとおりで、5本仕入れて3本売れ残ったりしたら完全に赤字です。あまりよろしくない状況なわけで、ちょっと警戒します。

発売1ヶ月後、なんとか伸びて全国で累計3万本まできたところで、先程のお店は積極的にPOPなんかを工夫してゲームの良さを伝え、在庫だった3本を見事売り切ったとします。お店の努力で赤字を出さずにすんだぞ、よかったよかった、と。

しかしですよ、さあ、そこで再発注をかけるか、という話なんです。

メーカーとお店のにらめっこ

グラフの図
ちなみに、メーカーは発売日から時間が経つと中古に出まわって新品需要が減ることも計算にいれます。ただ、2~3万本の販売本数の場合は、絶対数が少なすぎてそれほど中古にも出回りません。
先程もご説明した通り、新品ゲームソフトを売って得られるお店の利益はすごく少ないんです。ですから、折角うまく売り切ったのに、また仕入れるというのはリスクばかりが大きいことになります。品揃えの面も考えれば再発注しないとまでは言い切れませんが、かなりシビアに考えることは間違いありません。そしてこのことが、メーカーにもストップをかけます。

出荷5万本、この時点でメーカーはユーザーが買おうが買うまいが5万本分の売上が確定します。初週2万本がお店からお客さんに売れて、そこから発売1ヶ月後で1万本伸ばして累計3万本まで到達。今度は、そこからメーカーさんが売上を伸ばすためにどれだけ動くか、動けるかという話です。

どのメーカーさんも、出来る限り売上を伸ばしたいと思っています。でも現実的に考えた時に、ここでお金をかけて宣伝や販促を行っても結局まだ残っている2万本が消化されるだけで、お店は再発注してくれないかもしれません。つまり、メーカーの売上はあまり伸びない可能性が高いという話がでてきます。

こうなると、お店はメーカーが売る施策を打ち出さなければ仕入れられず、メーカーはお店が仕入れなければ宣伝しても意味がないという状況になり、硬直状態に陥ります。これが、売れないスパイラルだというわけです。

最初に売れないということが痛恨の一撃となり、勝つための戦いではなく敗戦処理的に業界が動いてしまうと、売れないゲームは浮上するチャンスを失っていきます。

しかも、この痛恨の一撃は、ゲームが面白いか面白いか分かる前に襲いかかってくるんです。

遊ぶ前に勝負が決まる

イナズマイレブンの図
イナズマイレブンは月刊コロコロコミックでマンガも連載。新規タイトルが抱える認知度の低さという壁を、メディアミックス戦略によって乗り越えていきました。(イラスト 橋本モチチ
ゲーム業界は、発売直後の販売評価を覆すのがとても難しい構造になっています。しかし、販売直後の売れ行きというのは、必ずしもゲームのデキによって決まるとは限りません。ユーザーの誰も製品をプレイしていないわけですからね。言ってみれば、期待度や認知度の大きさで数字がきまります。

ゲームソフトというのは、基本的には遊んでみなければ、場合によってはクリアまでやってみなければ面白いかそうでないかの判断ができない商品です。それが、誰も最後まで遊んでいないような状況で評価が決まって、売れない烙印が押されるような状況があるとすれば、それは単純にもったいないと、ガイドはそう思います。面白いゲームが売れない状況というのは、誰も得をしません。

ただし、全ての売れないゲームがこういった形に必ずはまりこんでいくわけではありません。メーカーがリスクを負って根気よく売った結果伸びたゲームもありますし、ユーザーがクチコミで広げていったゲームもあります。例えば、レベルファイブがニンテンドーDS用として2008年に発売したイナズマイレブンは、初週約4万本でした。その後、TVアニメなどのメディアミックス戦略が功を奏し、今では累計約40万本に。さらに、2009年に発売された続編のイナズマイレブン2 脅威の侵略者 ファイア/ブリザードはなんとミリオンヒットを達成しています。

ゲームの開発コストは年々高騰し、1本のゲームに何億円もの投資がされていることはもう珍しくありません。そうやって作られたものが、遊ばれる前に失敗したのでは、あまりにもったいない。商品に力さえあれば発売後にも浮上のチャンスがある、そんな仕組み作りがゲーム業界には必要かもしれません。

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