ドラクエ9に賛否両論

サンディ図
色んな意味で刺激的なサンディ。良くも悪くも印象的なキャラクターですよね。
ドラゴンクエスト9 星空の守り人(以下ドラクエ9)が大変なことになっています。何が大変って、売上げでしょうか? いえいえ、売上げは絶好調、既に300万本以上を販売し、前作のドラゴンクエスト8 空と海と大地と呪われし姫君を上回る勢いです。大変なのは、ユーザーの評価です。発売されると同時に、もしくは直前から、全くの期待はずれである、というような非常に辛辣な内容の批判がインターネット上などで飛び交いました。

どうしてそのような批判が起こったのか。これには多くの理由が考えられ、1つには特定できません。例えば、ハードが据え置きから携帯ゲーム機へ変わったことや、PlayStationシリーズのハードから任天堂のハードに変わったことに対する一部ユーザーの反発。例えば、延期によって、期待と不安の両方があまりに高まってしまったこと。例えば、あまりに強烈すぎるガングロ妖精サンディの存在感……。

ドラクエ9は失敗作だ! という批判そのものがセンセーショナルでもあり、半ばお祭り騒ぎのようになって否定的な評価は拡大していきました。しかし、実際のところゲームの中身はどうだったのでしょうか? 本当に期待はずれの全く面白くないゲームだったのでしょうか? それとも、全く根拠のないデタラメな批判だったのでしょうか?

ガイドの個人的な感想を言ってしまうと、ドラクエ9は期待はずれどころか、非常に質の高い作品だと感じました。しかし同時に、たくさん起きている批判についても、決してデタラメばかりではないと思いました。つまり、良くできているしとても面白いが、楽しめなかった人もいるのだろう、というのがガイドの意見です。

今回は他の様々な理由はちょっと横に置いて、ゲームの中身について、なんで楽しめなかった人がいるんだろう、というお話をドラクエ9の特徴的なシステムをご紹介しつつ考えてみたいと思います。

キャラクターメイキング

ドラクエ3の図
プレイヤーキャラクター全てを作成できるのは、ドラゴンクエスト3 そして伝説へ…以来です。
ドラクエ9でとても重要なのがキャラクターメイキングです。本作では、プレイヤーが操作する主人公や一緒に冒険する仲間達は全て、ユーザーがキャラクターを作ります。名前をつけて、性別や顔や背丈を設定して新しいキャラクターが生まれます。

しかし、本当の意味でのキャラクターメイキングはそこでは終わりません。次は職業とスキルがあります。レベルを上げていくとスキルポイントというポイントが貰え、それを割り振ることでそれぞれのキャラクターは独自の成長を遂げていきます。例えば、同じ僧侶でも、杖を持ち、MPが豊富で、サポートに徹した僧侶も作れれば、回復魔法も勿論使えるけど、武器を持って攻撃にも積極的に参加する僧侶、というのも作ることが可能です。

さらに、装備があります。ドラクエ9では非常にたくさんの装備があります。そもそも装備できる箇所がとても多く、アタマ、からだ(上)、ウデ、からだ(下)、足、アクセサリー、そして武器に盾の8箇所。そしてそれらの装備の大半に、グラフィックが用意され、装備を変える度に外見が変わります。ガッチリ鎧に身を固めた冒険者もいれば、Tシャツを着てジーンズをはき、素手でモンスターに立ち向かう冒険者だってありえます。

ここでまずポイントが1つ。このキャラクターメイキングは、効率的に攻略しようと思えば思うほど、必然的につまらないものになります。例えば、装備。1番強力な防具を装備させようと思えば、どうしたってみんな似たような装備になります。スキルもそうです、より効率的なスキルの組み合わせを追求すると、選択の幅はそれほど広くありません。

次は、モンスターとの戦闘やクエストについて、お話していきます。

戦っても戦わなくてもいいモンスター

逃げるメタルスライムの図
シンボルエンカウントになったので、今回はトヘロスの呪文がありません。プレイヤーが強くなると、逆にモンスターが逃げていく場面も。
今回、モンスターとの戦闘の仕組みが大きく変わりました。ゲーム業界の言葉で言うと、ランダムエンカウントから、シンボルエンカウントになりました。エンカウントとは、遭遇するという意味の和製英語。ランダムエンカウントはプレイヤーが歩いているとランダムに敵と遭遇する方式。従来のドラゴンクエスト(以下ドラクエ)ですね。シンボルエンカウントはマップ上に敵キャラクターが配置されていて、接触すると戦闘になる方式。ドラクエ9ではこのシンボルエンカウント方式が採用されています。

ランダムエンカウントからシンボルエンカウントなると、敵と戦うか、戦わないか、どんな敵と戦うか、そういったことをプレイヤーがかなり選択できるようになります。そしてここにまた、ポイントがあります。先ほどお話したキャラクターメイキングと同じで、より効率的なプレイをしていくと、実に味気ないものになります。

キャラクターのレベルアップは経験値の大きいメタルスライムやはぐれメタルスライムとの戦闘ですませ、後はフィールドでも、ダンジョンでも、徹底的に敵キャラクターを避けていく。そういうゲームの仕組みを上手く使ったプレイをすると、例えばダンジョンでも敵と戦いながら進んでいくサバイバルではなく、ただの迷路になってしまいます。

クエストと宝の地図

DSステーションの図
ゲーム中にも遊びきれないほどのクエストがありますが、さらにオンラインで毎週新しいクエストが配信されます
ドラクエ9には、本編クリアとは関係のない要素がたくさんあります。敵を倒したり、アイテムを持ってくるなど、様々な条件をクリアして報酬を貰うクエスト。地図を元にダンジョンを発見し、最奥にいるボスを攻略しレアアイテムを探す宝の地図。

どちらも、攻略しても本編クリアとはあまり関係のない場合がほとんどです。そして、両方ともやってもやっても終わらないぐらいに大量にあります。ここで3つめのポイントです。ユーザーがこの両方について丁寧に攻略していくと、いつまでたっても終わりません。逆に、無視をしてもゲームクリアには差し支えないので、効率よくプレイしていく人にとっては存在にあまり意味もないものです。

攻略しようとしても、あまりに多すぎて終わらないし、完全に無視しても問題がない。では、なんでクエストや宝の地図なんてものがあるのか、何が面白いのかよく分からない、というプレイヤーがいるんですね。

この3つのポイントから、ドラクエ9をつまらなくプレイする方法、そしてせっかくですから、楽しくプレイする方法についても、お話していきます。

ドラクエ9をつまらなくプレイする方法

ドラゴンクエスト2の図
初期の頃のドラゴンクエストは、回復魔法があと何回使えるかを計算して進むようなシビアなものでした。その頃からプレイしている人なら、あっという間にクリアしちゃう人もいるかもしれません
さて、いくつか特徴的なシステムを取り上げてお話してきました。これらを踏まえて、ドラクエ9をつまらなくプレイするにはガイドが考える限り2つの方法があります。

ひとつは限りなく効率的にプレイする方法。装備も職業もスキルも1番数字の良いものを選択し、モンスターと戦う回数は極力少なくし、クエストも宝の地図も無視する。あっと言う間にクリアできますが、なんとも味気のない、バランスの悪いゲームに感じるでしょう。

もう1つは、プチプチをひとつずつ潰すように全ての要素を網羅するプレイの仕方。あらゆる装備を集め、その為にシンボルエンカウントを利用して同じ敵とばかり何度も戦闘を繰り返し、マップ上のアイテムを拾いにいったり、クエストや宝の地図をひたすらクリアしていく。おそらく前述のプレイ方法よりは楽しめると思われますが、あまりに膨大な量に絶望し、目的を達成する快感を味わうより前に挫折感を味わってしまうかもしれません。

この2つの遊び方、効率的に攻略したり、徹底的にやりこんだりするプレイは、従来のドラクエであれば、コアユーザーの遊び方ではありますがそれ程特殊なプレイではありません。ここで、批判の素が生まれます。今までドラクエを楽しんできたユーザー、しかもかなり遊びなれているコアなユーザーが、これまでと同じように遊ぼうとすると、なんじゃこりゃ、となることがあるんです。もしかすると、発売日に並んで買うような期待感に溢れるユーザーほど、このカウンターパンチをくらってしまったのかもしれません。

ドラクエ9を楽しくプレイする方法

電車の図
都内で電車に乗ったりすると、次から次にすれちがい通信で色んな人のデータを受信します。プレイ人口の多さを実感できますね
ドラクエ9をつまらなくプレイする方法をお話してきましたが、じゃあドラクエ9はクソゲーなのかと言うと、冒頭で申し上げた通り全く逆で、とても練りこまれたソフトであると思います。楽しんでいる人はどんな風に楽しんでいるのでしょう?

キャラクターメイキング、装備、スキル、それらを単に敵を倒すためではなく、本当にキャラクターを作っていく遊びだと捉えて遊ぶ人達がいます。そうすると、キャラクターの外見はもちろんのこと、戦闘で使うスキルや、ステータスもあわせて、とても多彩なキャラクターメイキングを楽しむことができます。

シンボルエンカウントはプレイに幅を持たせます。さっさと本編をクリアしてしまいたい人は、実に素早い時間で攻略することもできますし、経験値の高いモンスターを色んなスキルを獲得させることに利用して、キャラクターメイキングを楽しむこともできます。目の前の敵を倒しながら進んでいけばいつもどおりのドラクエです。

自分だけのプレイヤーキャラクターを作ったら、それを使ってコミュニケーションを楽しむ用意が今回のドラクエ9にはあります。ワイヤレス通信機能を使ってマルチプレイを遊ぶことができます。たくさんあるクエストや宝の地図はまさにこのために用意されていて、みんなで一緒にプレイするとまるで別物のように面白くなります。マルチプレイまでいかなくても、すれちがい通信機能を使って、いろんな人とキャラクターやプロフィールの見せ合いっこをすることもできます。流石に国民的RPG、ちょっと人の多い場所に行くだけで簡単にすれ違い通信に成功できます。

ドラクエ9のような極めてメジャーなゲームで、楽しめる人と、そうでない人に大きく分かれるということは、ゲーム業界のスタンダードが変わりつつある、ということを意味しています。

群像時代のドラクエへ

冒険者達の図
今回、勇者という職業がないことも、とても象徴的なのかもしれません。みんなで遊ぶことを考えれば、プレイヤーは唯一無二の勇者ではなく、多種多様な冒険者である方がいいんです(イラスト 橋本モチチ
ドラクエ9を楽しめる人と楽しめない人との差を簡単に言うと、別にすれちがい通信やマルチプレイをしなくても、自分の作ったキャラクターを家族や友達に見せて遊ぶような気質の人はすごく楽しめるでしょう。すれちがい通信機能を使ったとしても、何人とすれちがいをしたらゲームのやり込み要素が達成できるか、とだけ考えてしまうタイプの人は向かないかもしれません。

つまり、自分のプレイをいろんな人に見せびらかして遊べるような人は楽しいし、1人でじっくり真剣に攻略しても、それにはあまり応えてくれません。このことは、DSでヒットした、おいでよ どうぶつの森や、わがままファッションガールズモードなどの特徴にとても似ています。

【関連記事】
ガールズモードを真剣にプレイしてみた(AllAboutゲーム業界ニュース)

こうったゲームの流れについて、AllAboutゲーム業界ニュースでは、群像の時代だとか、女の子向けの横方向の進化だとか、パーソナルなゲーム、といったように角度を変えて何度かお話しています。おそらくこれは、ドラクエシリーズというよりも、ゲーム業界全体の流れであろうと、ガイドは考えています。

【関連記事】
勇者の時代から群像の時代へ(AllAboutゲーム業界ニュース)
急いで女の子向け大作ソフトを作らなくちゃ(AllAboutゲーム業界ニュース)
ゲームは個人的になって、みんなと繋がる。(AllAboutゲーム業界ニュース)

ドラクエ9に起きた批判は、今までのゲームを楽しんできたユーザーの叫びのようにも思います。あるいは、新しい時代の到来を知らせる声なのかも知れません。いずれにしろ、このような新しい形のドラクエが発売されて、それが既に300万本を突破する勢いで売れています。時代と時代の衝突音が鳴り響くなか、本当にゲームの世界は大きく変わりつつあるようです。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。