お店で配る販促品の話

ゲーム売り場の図
お客さんに配るものだけでなく、お店に飾られてるポップやポスターなども販促品です。そう思ってお店にいくとたくさんの販促品で溢れているのが分かります
企業がユーザーとコミュニケーションを取る方法には大きく3つあります。広報、宣伝、販促です。よくごっちゃにされますが、それぞれ違うものです。広報は必ずしもユーザーに限らず、広く公に自社の様々な事柄について説明していくこと。宣伝は、商品やサービスをユーザーに認知してもらう為に訴えかけること。何も知らなかったユーザーをお店など販売現場へ引っ張ってくる為にやることなので、プル戦略などと言います。最後に、引っ張ってきたお客さんにこれ買ってくださいと、商品を押して実際の販売へ繋げるプッシュ戦略、これが販売促進つまり販促です。

今回は、販促の為に家電量販店やゲーム販売店などに配っている販促品のお話です。ゲームメーカーはお店に来たお客さんがゲームを買う時の参考になるような冊子を販促品としてよく配っています。特に任天堂やソニー・コンピュータエンタテインメント、マイクロソフトなどのハードメーカーはそれぞれのハードの特性や遊べるソフトをまとめて紹介した冊子を置いています。

その中でも、任天堂が配っているWiiやニンテンドーDS(以下DS)の販促冊子、これがちょっとスゴイんです。

はじめての人の為の販促冊子

ニンテンドーDS はじめてのひとに。の図
DSだけでなく、Wiiのユーザー向けの、Wii はじめての人に。や、ニンテンドーDSiユーザー向けの、ニンテンドーDSi はじめての人に。という販促冊子もあります。
任天堂が配布している販促品の中に、ニンテンドーDSはじめての人に。と題された冊子があります。これの何がスゴイかといいますと、まず、このはじめての人に。というタイトル。このように商品を買う人全てに向けたものではなく、対象となる顧客層を明確にした販促品は意外と少ないものです。どうせお金をかけて作るならみんなに読んで欲しいと思ってしまいますからね。

ゲームハードの販促冊子となれば、どうしてもハードの魅力を全て伝えようとしがちです。魅力あるソフトにたくさんの機能、新しいサービス。でもそれはハードを作っている側の目線です。全ての機能とサービスを使いこなすユーザーはごくごく僅かでしょうし、ユーザーごとに知りたい情報は違うはずです。とすれば、販促冊子もターゲットを明確にする必要がでてくるのは当然です。しかし、その当然のことがなかなかできなかったりするものなんですね。

しかも、DSは今発売されているゲームハードの中で1番売れている機種です。なのにわざわざ、はじめての人を対象とした冊子を配っているんです。つまり、まだまだはじめての人を増やすぞ、新規ユーザーを開拓するぞということを強く意識していると言えます。

明らかにライトユーザー、あるいは非ゲーム層を狙ったタイトルをつけたこの販促冊子。その中身は、どんなことが書いてあるのでしょうか。

DSはソフトを差し込んで遊ぶゲーム機

DSの持ち方が分からないの図
確かに、ゲームを遊んだことの無い人には、まずどうやって持つのかというところから教える必要があるかもしれません
ガイドはこの、ニンテンドーDSはじめての人に。という冊子を開き、そこに書いてある文章を読んだ時、衝撃を感じました。そこにはなんと、DSはソフトを差し込んで遊ぶゲーム機であるということが見開き2ページをたっぷり贅沢に使って大きく書かれていたんです。しかも、ソフトを変えることによって、違うゲームが遊べるという内容の説明もついています。な、なんて当たり前のことが書いてあるんでしょう。

ページをめくると、次はボタンを押して遊ぶという説明とタッチペンでタッチして遊ぶという説明、これも見開き2ページです。DSの持ち方について、手をどこに添えてボタンを押すのかという写真までついています。次の見開きはDSを買うと本体にタッチペンとACアダプタがついてくるという内容で、その次はDSで遊ぶためにはソフトが必要だという説明。さらにめくると、今度はDSは充電式だから乾電池はいらないということが、これまた見開きで書いてあります。ここまでで10ページつかっちゃってます。全14ページなので残り4ページ。まだゲームタイトル紹介もWi-Fiコネクションの話も何にもありません。

そしてようやく、残り4ページを使って、ゲームソフトの紹介がありました。でも脳を鍛える大人のDSトレーニング、DS美文字トレーニング、DS眼力トレーニングの3つだけ。3つだけです! 他のゲームについても、ピクトチャットについても、Wi-Fiコネクションについても、清々しいまでになんにもなしです。

当たり前だと思っちゃいけない

ゲームを買いに来たおじさんの図
特にDSやWiiはゲームのマーケットを拡大していますから、新しいユーザーに対するケアの意識も高いのかもしれません
いわゆるゲーマーからすれば、ゲームはソフトを挿して遊ぶものだというのは、当たり前すぎる事実です。ゲーム業界に関わる人間に聞いたら、みんながみんな当たり前だと言うでしょう。でもそれが当たり前なのはゲームに関わる人だけなんですよね。ゲームの市場を広げようと思ったら、新しいお客さんに遊んでもらおうと思ったら、当たり前のことを知らせる必要があります。

この冊子の表紙には、無料である、自由に持ち帰ってよいという表示も限りなく大きく書かれています。販促品ですから、無料で持って帰っていいに決まっているんですが、それも流通の人間の常識であってお客さんには通じないかもしれません。はじっこに無料と書いてあっても、売り物と勘違いして手に取らないお客さんもいるかもしれません。そういう想像力がこの冊子には詰まっています。

極めてシンプルに、本当に当たり前のことしか書いていないこの冊子。しかしむしろ、この当たり前のことを伝えるという施策こそ、ゲーム業界に必要なことだったのかもしれません。

新しいお客さんには、教えてあげなきゃ分からない

ドラクエの図
ドラゴンクエスト9がDSで発売されることで、新しいユーザーを獲得して売上げを伸ばすチャンスがあると考えるなら、新しいユーザーに向けてどんなゲームか教えてあげる必要があるかもしれません(イラスト 橋本モチチ
企業のコミュニケーション戦略を考える時、どうしてもテレビCMといった派手な広告宣伝に目が行きがちです。特に任天堂の大々的な広告展開は色んなところで話題にあがります。しかし、そういったプル戦略で、広くお客さんを集めたその後、ここが問題になるはずなんです。現場に引っ張ってきたお客さんが、お店をウロウロしたものの結局分からなかったではものは売れません。大々的な広告展開も威力半減です。

DSは、高齢層などのゲームをしなかった人達も取り込んだハードですから、特にそういった点には気を使っているのだと思います。しかし、これはどのハードでも、あるいはゲームソフトについても、新しいお客さんを増やしていこうと思ったら、同じことが言えるはずです。

ドラゴンクエスト9はRPGというジャンルで、RPGというのはこういうゲームだよと、説明する必要はないのでしょうか? ここ数年で一気に人気の出たモンスターハンターシリーズ、何が面白くて人気なのか、教えてあげなくていいのでしょうか? CMや雑誌で見かけるし、ちょっと興味もあるんだけど、よく分からないという理由で買っていない人がもしかしたらたくさんいるかもしれません。

ゲームに興味を持った人が、安心してゲームを選べる、買える、遊べる、そんな当たり前のことが当たり前にできるようになれば、ゲームはさらに多くの人たちに愛される存在になれるように思います。

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