ダイナミックなゲーム

風来のシレンの図
例えば、風来のシレンシリーズは、お話やグラフィックは地味ですが、ゲームのプロセスはダイナミックに展開していきます。なんとなくイメージが伝わりますでしょうか?
ゲームを分類したり、評価したりする言葉はたくさんあります。簡単なゲームと難しいゲーム。1本道のゲームと、自由度の高いゲーム。ライトなゲームと、コアなゲーム。それぞれの言葉は、ゲームをやる人が感覚値として共通に持つ、なんらかのニュアンスを含んでいます。ガイドは常々、ゲームのプロセスがダイナミックに展開するものと、そうでないゲームがあるなあ、と思っていました。そしてこのダイナミックに展開するゲームと、そうでないゲームの持つニュアンスを表すのに適当な言葉がないなあ、とも思っていました。

ここでいうダイナミックな展開というのは、何もゲームの物語が盛り上がるとか、最後に大どんでんがえしがあるとか、そういう意味ではありません。ゲームプレイそのものが、ダイナミックに展開するのです。やっぱり上手に説明できません。そこで、ダイナミックという言葉の意味を調べてみました。力強いとか、躍動感とか、そういった言葉が並ぶ中、動的という意味が見つかります。

この言葉をちょっと借りてみましょう。ゲームの中には、動的なゲームと静的なゲームがある。口に出してみると、ガイドが感じていたゲームの分類、評価にピッタリとはまるような気がします。ちょっと言葉遊びみたいなところもありますが、今回はこの動的、静的という視点からゲームについて考えてみたいと思います。

トランプとゲームブック

ゲームブックの図
宝箱を開けるべきか、開けないべきか、その選択肢によって次に読むページが変わります。こんなゲームブック、昔はよくありましたよね
動的という言葉はどうやらインターネットなどの世界でよく使われているようです。例えばあるWebサイトのページを閲覧するとして、いつも必ず最初から用意されている画像やテキストが決まったレイアウトで表示される場合、これを静的ページといいます。逆に、見るたびに、条件によって画像やテキストやレイアウトが変わる、その時その時で生成されていくもの、これを動的ページと呼ぶそうです。

ここでは正確な定義については追求せず、概念的なイメージを掴んでゲームに置き換えて考えてみたいと思います。ゲームをプレイしていくと、最初から用意されている、プレイによって変化しないプロセスをたどるものは静的ゲーム。そして逆に、最初からプロセスが用意されているのではなく、ゲームプレイによって生成されていくゲームを動的ゲームとしてお話を進めていきます。

例えば、ゲームブックは静的ゲームだと言えるでしょう。一応ゲームブックを知らない人の為に説明しておくと、本に描かれる物語を読み進めると、途中で選択肢があり、選んだ答えによって次に読むページが決定されるアドベンチャーゲーム風味の本のことですね。選択肢によって読者は違う文章を読むことになりますが、それはあくまで元々本に書いてあるものです。どの選択肢を選んでもあらかじめ用意されている以上の何か新しい物語が生まれるということはありえません。

逆に、動的ゲームの例としては、トランプが適当かもしれません。ポーカーをする時、どんなカードをひいて、そこからどんな駆け引きが生まれ、そしてどんな結果が待っているのか。それは常にその場でシャッフルされた52枚のカードによって生まれていきます。だからこそ、想像もつかない逆転劇も生まれ、まさにダイナミックに展開していきます。

なんとなく動的、静的という感覚を感じ取っていただけたでしょうか? 次は、いよいよコンピューターゲームについて、静的ゲームとは、そして動的ゲームとはどんなゲームかお話していきたいと思います。

ドラクエやFFは静的ゲーム

ドラクエ2の図
ドラゴンクエストシリーズのようなRPGでも、戦闘の部分などは比較的動的な要素で作られています。基本的には混在しているんですね
誤解のないように先にお断りしておくと、大概のゲームには動的な部分も、静的な部分もあると考えられます。それを踏まえた上で便宜上、より動的な部分が多いゲームと、より静的な部分が多いゲームにわけてお話をしていきます。

まず先に静的ゲームをご紹介したいと思うのですが、そもそも日本で人気のあるゲームには静的なものが多いです。例えばドラゴンクエスト(以下ドラクエ)シリーズやファイナルファンタジーシリーズに代表されるようなRPGで考えてみましょう。これらのものは、そのほとんどがあらかじめ用意されています。ドラクエシリーズでは広大なマップに、いくつもの城や町、村があり、たくさんの人々が登場します。そのほぼ全てが、当たり前ですがプレイヤーの行動によって新しく生成されたりはしません。

ですから、誰がプレイしても町の人々は、同じ人が、同じようなところを歩いて、同じことをしゃべります。もちろん前述の通り動的な部分がないわけではありませんが、基本的にプレイヤーは皆同じ出来事を体験することができます。それは時に、ゲームプレイの幅の狭さを感じさせることもありますが、一方で誰でも安心して同じストーリーを余さず楽しめる作りになっているという言い方もできます。

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勇者のくせになまいきだor2という、動的ゲーム

勇者のくせになまいきだor2の図
動的ゲームの宿命として、画面写真などではなかなか良さが伝わらないことが往々にしてあります。ゲームの醍醐味がゲーム中に生成されるプロセスにあるからですね
では動的ゲームはどういうものか。その場でプロセスを生成していくという性質は、リアルタイムシミュレーションなどがあてはまることになりますが、こちらは逆に日本ではあまり人気がありません。しかしそんな中、PSP用タイトルの勇者のくせになまいきだor2(以下勇なま2)という、極めて動的でダイナミックなゲームが約15万本のスマッシュヒットになりました。このソフトを例にとって、動的ゲームの説明を試みてみたいと思います。

まず、あなたは魔王に呼び出された破壊神としてゲームをはじめます。破壊神であるプレイヤーが行うことの基本は、マス目状にびっしりと配置された岩をつるはしで削ってダンジョンを作ることです。岩には養分が貯まっているものがあり、養分のある岩を削るとそこから魔物が生まれます。魔物には、岩から養分を吸って、他の岩に養分を吐くニジリゴケや、そのニジリゴケを食べて増えるガジガジムシ、さらにガジガジムシを食べて卵を産むトカゲおとこなどがいて、それぞれが捕食関係を持ち、食物連鎖が出来上がっています。あなたはツルハシで岩を掘り、魔物を生み、ダンジョンの中でより良い生態系を築きあげることで、一定時間後にやってくる勇者を迎え撃ちます。

このゲームの素晴らしいところは、プレイヤーがすることの大部分が、ツルハシで岩を掘るだけであるというシンプルさ。しかし、魔物達はそれとは直接関係のないところでどんどんどんどん食べたり、食べられたり、増えたり、減ったりして、極めて複雑にダンジョンの生態系を生成していきます。

ものの30分程のプレイで、下手をすれば1万匹を超える魔物が生まれ、死んでいくことすらあります。当然プレイヤーは1匹1匹の魔物たちについて、いつ生まれ、何をして、どう死んだのか、完全に把握することはできません。しかし、実際には1匹1匹に誕生の瞬間があり、短い人生があり、最期の時があります。それが、1万匹。ロマンがあります、凄まじくダイナミックです。

静的ゲームには静的ゲームの、動的ゲームには動的ゲームの良さがあります。今後ゲーム業界が発展していく為には、それぞれの役割を見極めていく必要がありそうです。

ゲームブックの限界

FF7の図
ムービーは、静的進化の最たるものかもしれません。初めて登場した時には、大きな衝撃がありました
静的ゲームは、スーパーファミコンまでのROMカセット時代から、PlaystationやセガサターンにおけるCDなどのディスクメディアへ変化した時、大きな進化をむかえています。というのも、静的ゲームは、基本的にあらかじめ用意するものを作りこむことで進化させていくことができるからです。ゲームブックを豪華にするには、物語や挿絵を豪華にしていくしかないのと同じことですね。ですから、メディアの要領が爆発的に増え、ムービーや、生演奏の音楽が使えるようになると、格段の変貌を遂げます。

そういった静的ゲームの進化は今でも続いてはいます。Blu-rayディスクの登場などにより、さらに大容量のメディアに高画質で精密なグラフィック、膨大な物語を詰め込んだゲームが登場しています。しかし、流石にスーパーファミコンからPlaystationへの変わった時の様なあっと驚く劇的な変化は難しく、また開発費の高騰の原因にもなっています。今はまだ良くても、このまま静的な要素を膨張させていけば、遅かれ早かれ限界がくるのではないでしょうか。

静的な要素を動的な要素が爆発させる

PS3とcellの図
静的ゲームから動的ゲームへのパラダイムシフトが起これば、高性能のCPUが今よりももっと生かされる、なんてこともあるかもしれませんね
30分で1万匹を超える魔物が生まれて死んでいく、これはまさに動的ゲームならではのコンテンツであると言えます。もし同じことを静的ゲームの考え方で作ろうとすると、とんでもないことになります。何しろその1万匹全てが生まれてから死ぬまでを用意しなければいけません。逆に言えば静的ゲームではとんでもないと思うようなことでも、動的ゲームは可能にしてしまうということでもあります。

静的ゲームの進化に行き詰まりが見えたからといって、すぐに勇なま2のような、リアルタイムシミュレーションなどの動的ゲームが増えるとは限りません。特に日本では、動的ゲームの文化は一部のコアユーザーに留まっていて、あまり広がっていません。しかし、開発費高騰、ゲーム進化の停滞、これらの問題はいずれ必ず解決するべき事柄です。その方法の1つとして、今まで静的に処理していた部分に動的な要素をうまく組み合わせて、全体としてゲームにダイナミズムを与えていくということは、考えていく必要があるのではないでしょうか。

動的ゲームは、その処理をするゲームハードの性能向上の恩恵を大きく受けます。PSPのような小さなハードウェアで勇なま2のようなゲームを動かすなんて、昔なら考えられなかったことでしょう。高性能化するハードを使い、動的な要素をどう取り込んでゲームを進化させていくかは、これからのポイントの1つになるかもしれません。

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