売れているのはゲームの中身ではない?

どうぶつの森の図
女の子へのクリスマスプレゼントというと、家族で安心して遊べる街へいこうよどうぶつの森あたりがオススメです
クリスマスのちょっと前ですが、ガイドの仕事仲間で40歳過ぎの男性がWiiを買おうかと迷っていました。11歳の愛娘のクリスマスプレゼントにしようというわけです。その男性が言うには、ゲームを買い与えて1人でこもりっきりになっちゃったら親としては不安だけど、Wiiでみんなで遊ぶならいいかな、とのこと。

ちょっと面白いのは、彼が肝心のゲームソフトについてはほとんど何も知らないこと。どんな内容で、何が面白いのか、そういうことはよく分かっていないんです。しかし、みんなで遊ぶことそのものに価値を感じています。別の言い方をするならば、ゲームによって子供が家族内コミュニティから切り離されて1人になるのは不安だけど、子供と一緒になって親も関われるものであればゲームであっても歓迎できるということです。そしてその時、ゲームの詳細はそれ程吟味されていないのです。

昨今のゲーム業界を観察していると、ゲームの遊ばれ方、購入のされ方に変化を感じます。1人で遊ぶRPGが売れなくなり、家族で、あるいは友達と一緒に遊ぶゲームが売上げを伸ばしています。

ドラクエもマルチプレイ

ドラクエをプレイするももんじゃの図
最新作はDSで発売されるドラクエ9。マルチプレイを使えば友達とパーティーを組んで遊べます
1人で始めて、1人で攻略し、1人でエンディングを迎える。ちょっと前はそういうゲームが主流でした。特にファイナルファンタジーシリーズやドラゴンクエスト(以下ドラクエ)シリーズに代表されるRPGが分かりやすいかもしれません。しかし、いま市場を見渡すと、複数人でプレイするもの、一緒にプレイはしなくても結果を誰かと共有して楽しむもの、ゲームを通して家族であったり友人であったり、もしくは不特定多数のユーザーによるコミュニケーションが行われるものがたくさんのヒットを飛ばしています。

WiiにおけるWiiスポーツやWiiFitのヒットや、DSそしてWiiでも発売されたどうぶつの森シリーズなど、例はたくさんありますが、象徴的なのはPSPのモンスターハンターポータブルシリーズかもしれません。最大4人で一緒に遊べ、協力して巨大モンスターを狩ることのできるゲームですが、みんなでPSPを持ち寄って遊ぶというプレイスタイルが中高生に人気です。持ち運べる、ポータブルなPlaystation(以下PS)として作られたPSPにおいて、初代PSやPS2の傾向とは全く違うゲームが市場を大きく動かす様子は、新たな時代の流れを感じさせるものです。

そして先ほど、1人で遊ぶゲームの例としてRPG、そしてドラクエを挙げましたが、そのドラクエもDS用として発売される最新作のドラクエ9では、オンラインによるマルチプレイが搭載されています。

既にゲームは1人でやるものではなく、誰かと共有するのが当たり前になりつつあるのかもしれません。そしてその時、ゲームという商品の価値に変化が見られます。

Wiiスポーツは面白いから売れたのか?

マリオカートWiiの図
Wiiハンドルで初心者でも遊びやすくなったマリオカートWiiも、みんなで遊ぶ為に買うファミリー層がたくさんいるのではないでしょうか
ゲームが1人で遊ぶものではなくなり、あるコミュニティで共有するものになった時、ゲームの価値が少し変容する傾向が見られます。Wiiスポーツというゲームが何故売れたのかを考えると、そのことが少し分かります。

Wiiスポーツは皆さんご存知の通り、Wiiリモコンをラケットに見立ててテニスをしたり、ゴルフクラブに見立ててゴルフをする、Wiiの看板タイトルです。今までにない斬新且つ直感的操作で大人から子供まで広い層のユーザーに売れました。しかし、一方でにコアなゲームユーザーには、不満を持つ人もいました。それはゲームとしてはあまりにシンプルすぎるということです。確かにWiiスポーツは1人で10時間、20時間とやり込むにはちょっとシンプルすぎるかもしれません。

ですから、多くの人は1人でやり込もうと思って購入していないんですね。冒頭でご紹介した例のように、誰かと遊ぶことを前提に買うわけです。そうすると、ユーザーが想像するのはゲームの面白さではなく、このゲームをどんなコミュニティと共有できるか、ということになります。つまり、家族なのか、同性の友人なのか、異性とのコミュニケートに使えるのか。そこで始めて、ユーザーにとってのゲームの価値が決定することになります。ゲームはあくまでもツールであり、主役はコミュニティであるわけです。

オンラインゲームに課金し続ける人たち

オンラインコミュニティの図
オンラインゲームをやるプレイヤーには数千円から数万円をアイテム課金に使う人もいます。新しいパッケージのゲームが買えてしまいますが、またそれとは価値が違うのです
コミュニティがゲームの価値を決定付けるという話は、オンラインゲームの世界だとより顕著になります。オンラインゲームのビジネスモデルに、プレイヤーがゲーム内のアイテムをお金で買うアイテム課金という方法があります。パソコン用オンラインゲームには、ゲームそのものは無料でアイテムでのみ課金するというものが珍しくありません。

オンラインゲームをやらない人は、例えゲーマーであってもゲームのキャラクターに着せる衣装などに現金を払うのは抵抗があるという人もたくさんいます。アイテム課金は物質的なものは何も残らず、定額課金制や従量課金制のようにサービス運営にお金を払っているわけでもありません。無料で遊べるのに、どうしてわざわざお金を払ってアイテムを買うのか、という意見はある意味でもっともなのかもしれません。

しかし、オンラインゲームには、プレイしない人にはなかなか分からない価値があります。それこそが、コミュニティです。オンラインゲームの世界で冒険をしているうちに、そこで友達と出会い、ゲームの中でコミュニティが形成され、コミュニティが価値の本質になっていきます。オンラインゲームにはまるユーザーには、ゲームの中に友達がいるからやめられないという人がたくさんいるのです。新しい衣装や、強い武器は、このコミュニティをより活発に、楽しくするコミュニケーションツールの役割を果たします。そういう意味では、アイテムに課金をするのは実は理にかなっていると言えます。

ゲームを遊ぶのは無料なのに、アイテムにお金を払うのは、やはり、ゲームの中身よりもコミュニティが価値として認識されている部分があるように感じます。それは逆に価値の高いゲームを作るということは、価値の高いコミュニティを作ることだとも言えるかもしれません。

どんなゲームを作るかは、どんなコミュニティを作るか

お正月に集まってゲームをするの図
お正月に親戚や友達が集まるから、その為のゲームを買うことってありますよね。これも、コミュニティの為にゲームが買われている例かもしれません
パソコンのオンラインゲームのように、ゲームそのものは無料で、コミュニケーションの軸になるものに課金をしていくというようなビジネスモデルがコンシューマーでも成立するかどうかは別にしても、コミュニティの形成が価値を生むということは間違いないように思います。

これはゲーム以外の商品やサービスで考えれば、別段珍しいことではありません。百貨店やホームセンターなどで展開する主婦を対象にしたカルチャーセンターは、絵手紙やスクラップブッキングなどを教える場ですが、同時に主婦のコミュニティを形成することで価値を高めます。

中高生、大学生が携帯電話にたくさんのお金をかけるのは、必ずしも必要な連絡をする為だけではありません。メールやモバイルサイトを駆使してコミュニティを作っているという点が理由にあげられます。携帯電話が無くなったら、コミュニティにアクセスする手段が無くなると感じているユーザーにとっては、ただの電話以上の価値を持ちます。

これからのゲーム開発はゲームの中身だけではなく、誰が遊ぶのか、誰と遊ぶか、どこで遊ぶか、そしてそれによってどんなコミュニティが形成され、どんなコミュニケーション生まれるのか。そういったことを強く意識する必要があるのではないでしょうか。広がりのあるコミュニティを形成することができるゲームは、その広がりの分だけ大きなマーケットを形成していくかもしれません。

【関連記事】
勇者の時代から群像の時代へ(AllAboutゲーム業界ニュース)
オンラインの醍醐味は皆で食事をする楽しさ(AllAboutゲーム業界ニュース)
レベルをお金で買うと何かが壊れる気がする(AllAboutゲーム業界ニュース)
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。