ハテナブロックとクリボーにデザインの優劣なんてあるの?

ハテナブロックとクリボーの図
ファミコンの時代に作られたデザインですから、どちらも非常にシンプルです
スーパーマリオブラザーズに出てくる敵キャラのクリボー。それから、下から叩くとコインやキノコが出てくるハテナブロック。ゲームをする人なら知らない人はいませんね。この2つ、あえて優劣をつけるとしたら、どっちの方がいいデザインでしょうか?

ハテナブロックとクリボーのデザインに優劣なんてあるのか? と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。あるいは、そんなの人それぞれで好みの問題じゃないの? と思う方もいるかもしれません。しかし、ガイドの意見としては、ゲームにおけるデザインという意味で、ハテナブロックの方が遥かに優秀だと考えています。今回はその理由についてご説明しながら、ゲームのデザインについて考えてみたいと思います。

ハテナブロックには絶対何かがある

ハテナブロックの図
ハテナブロックは、ひと目でなんだか仕掛けがありそうな、なんだか楽しいことがありそうな、でも何かは分からないというその性質がしっかりと表現されています
ハテナブロックがなぜ素晴らしいデザインであると思うのか、その理由はあのビカビカ光った色と、大きなハテナのマークにあります。ゲームをはじめていきなり登場するハテナブロック。画面の他の部分に比べて、明らかに異常な程光っています、そしてさも怪しげに大きくハテナが描かれています。ここには何かありそうだよ、仕掛けがあるよという明快なサインがデザインによってなされているわけです。

そういう誘うデザインのブロック、何かあるぞとマリオが叩くとコインがでてきます。コインが出てくると光らなくなって、ハテナも消えて、もう何もありませんというデザイン変わります。このハテナブロックのデザインがあって、その逆に地味な色のレンガブロックが意味づけされます。ユーザーは先入観としてハテナブロックとは逆に、ここには何もなさそうだと思うわけです。

そうすると今度はこのレンガブロックにこっそりアイテムがあるという、隠しアイテムという概念が成立して、普通のレンガなのに叩いたらアイテムが出てきたということで驚きがあるんですね。ハテナブロックが派手な色をしていなかったら、アイテムが出てくるかどうか分かりにくいですし、そこに注目がいくからこそ隠しアイテムが上手に隠されるという構造があります。

スーパーマリオブラザーズのブロックは非常にシンプルなデザインではありますが、ゲーム全体の仕様とかみ合って、きちんと考えられたデザインであるわけです。では、今度はクリボーについて考えてみましょう。

クリボーは上から踏むべきか?

クリボーの図
説明書をきちんと読む人や、ゲームに慣れてる人ならいいけれど、そうでない人にはなんだかよく分からない物体です
クリボーはゲームをはじめて最初にでてくる、最もシンプルな敵キャラクターです。ここでクリボーがユーザーに表現しておかなければいけないことは、上から踏むと倒せること。それから、横からあたるとマリオがやられてしまうことです。この2つが表現できていると、ルールがとても分かりやすく、すんなりゲームに入ることができます。

もう気がついた方もいるのではないでしょうか? そう、クリボーって上から踏んでいいのか、横から体当たりしていいのか、そもそもあたったらやられてしまうのかどうか、よく分からない形をしてますよね? 目つきが悪そうではありますが……危険な存在なのかどうかもぱっと見では微妙な感じなのです。

クリボーのデザインというのは、実はゲーム全体でとても重要だったりします。クリボーが上から踏むことで倒せるということをしっかりと表現していると、そこを基本として、上から踏んだら甲羅だけになるノコノコ、逆にトゲがあるせいで上から踏んではいけないトゲゾー、上から踏もうとしても高くジャンプしたり斧を投げたりしてなかなか踏ませてくれないハンマーブロスと、敵キャラを踏んづけるというスーパーマリオブラザーズの遊びがとても明快になるのです。

また、ゲームプレイの流れとしても、最初クリボーが、はいどうぞ上から踏んでください、という具合のデザインで出てきてこそ、その後、例えば上からクリボーがおちてきてマリオがやられた時も、踏めなかったからミスになったんだと、ユーザーが納得できます。それらの意味で、クリボーのデザインは、最初に出てくる敵としては伝えるべき要素が足りていないと言えるのではないでしょうか。

あれもこれも条件ばかりで大変、でもそれがデザイン

ファミコンの頃のゲームの図
土管というのも、実にうまいデザインですよね。ただの背景のようにも思えるけど、ちょっと異質で、なんだか入ってみたくなる衝動にかられます
では、クリボーはどんなデザインにしたらよいのか? ひと目で敵と分かり、横からあたってはいけないと感じさせる要素をもたせて、上には逆に弱点に見えるものを。でも最初に出る敵だから大仰なものはよくないし、できるだけシンプルなものがいい。ゲーム全体の世界観や背景の色との兼ね合いなんかも考えて、しかもそれをファミコンのドットで表現しなくてはいけない。

なんだかもう、ものすごくたくさん条件がついて、難しそうですよね。しかし、だからこそこれは、自由に描くことのできるイラストでもなければ絵画でもなくて、ゲームのキャラクターデザインなのです。それらの条件を綺麗にクリアして、ゲームをシステムの面でも、世界観の面でも、見栄えとしても支えていくのが良いデザインというわけです。

その意味で、あのビカビカと光るハテナブロックは、ブロックの仕掛けに意味づけをしつつ、画面にアクセントを与え、何があるんだろうとユーザーをわくわくされる非常にレベルの高いデザインであると言えるでしょう。

このことをふまえると、最近のゲームのデザインにおける問題が浮かびあがります。

デコレートばかりでデザインじゃない

最近のゲームの図
映像はすごく豪華にはなったけど、デザインとしての役割を果たすのはその分難しくなってもいて、結果としてゲームそのものが分かりにくくなることもしばしばあります
スーパーマリオブラザーズを例にゲームのデザインについてお話をしてきたわけですが、今度はこのような観点で現在のゲームについて考えてみます。ドットの時代と違って色々できるんだから、デザインしやすくなったかというと、そうでもないんです。

ビカビカと光るハテナブロックが、すごく目立って、仕掛けがありそうなデザインであるということは、ハテナブロックのデザインだけに依存するわけではありません。ハテナブロックというのは、スーパーマリオブラザーズの背景の中にあって、あの色やハテナのマークがとても目立つデザインになっています。従って、ハテナブロックのデザインが持つゲーム全体に対する役割も、あのシンプルな全体のデザインの中にあってはじめて発揮されます。画面のあちこちがビカビカとしていたら、当然ハテナブロックも目立たないということです。

スーパーマリオブラザーズから20年以上たった現代では、ゲームのグラフィックは果てしなく緻密に、複雑になってきました。そして、CMやゲーム雑誌で紹介された時に見栄えがするように豪華な映像になっていきました。しかしこれは、デザインというよりはデコレート、つまり装飾なんですね。装飾すればするほど、デザインの意味がその中に埋没していきやすくなります。

リアルな背景の中で、これはアイテムなのか、背景なのか、そんなことすら分からなくなるようなゲームも珍しくなかったりします。いくらすさまじい描き込みがされていたとしても、これではデザインされているとは言えません。そしてこのデザインの問題は、ゲームそのものが分かりにくくなっているという問題と大きく関係します。

棒という形の凄さ

コントローラーの図
他のコントローラーは、両手で握りやすいように、ボタンを押しやすいように、スティックを倒しやすいようにできています。Wiiのリモコンだけがはっきりと別の動作を目的としてデザインされていますね
ちょっとゲームグラフィックのデザインの話から、ゲームコントローラーの話に脱線しますが、Wiiのコントローラーというのは非常に素晴らしいデザインをしています。というのもあの棒のような形。子供の頃、ほうきとか、木の枝とか、棒状のものを持つと振り回したりしませんでしたか? 棒という形は、振るとか、指し示すとか、そういう動作と強く結びつけられている形です。棒を握ると思わず振ってしまう、という意味で動作を内包した形といってもいいと思います。

Wiiでもっとも売れているタイトルであるWiiスポーツでは、テニスのゲームでWiiリモコンを振ってボールを打ち返しますが、あれは実はPLAYSTATION3(以下PS3)のコントローラーでも機能的には同じことができます。しかし、同じことをしても同じように分かりやすいゲームはできないでしょう。何故ならPS3のコントローラーは両手で握って、ボタンを押させる形をしているからです。PS3のコントローラーを握ったなら、どのボタンを押したらいいのかを考えるのが普通の感覚です。

その意味で、実にWiiリモコンとテニスという組み合わせは理にかなっています。自分のところにボールがきた、手には棒をもっているからそれを振って打ち返した、これを分かりやすいゲームであると多くの人が思ったわけです。今までのコントローラーの形を捨て、Wiiというハードに絶対必要な形にデザインしてきたことは本当に見事です。

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最後は、このWiiのリモコンのようなデザインの考え方が、これからは重要になってくるというお話です。

ひと目みれば何が面白いか分かるデザイン

Newスーパーマリオの図
Newスーパーマリオブラザーズがたくさんのライトユーザーに売れていった背景にも、分かりやすいデザインの力というものは少なからずあったように思います
グラフィックのデザインではありませんが、Wiiリモコンは大きな意味で、デコレートされて分かりにくくなってきたゲームを、デザインの力で分かりやすくしている例です。たくさんのボタンがついて、できることは増えたけど、どれを押したらいいかわからなくなるような人が増えてきたところに、思わず振ってしまうような形のコントローラーを提案してゲームを劇的に分かりやすくしました。

ゲームのグラフィックスも、コントローラーも実は同じことで、ゲームハードが高性能になり、やれることが複雑に、高度に、そして豪華になってきて、過剰なまでにデコレートされている今こそ、遊びを分かりやすくするデザインの発想が必要であるはずです。これから、ゲームを作る上でデザインということが、これまで以上に重要になってくるように思います。

ゲームが進化していく過程で、ゲームが高度に、複雑になり、豪華になりました。CMなどのメディアでの露出もいかに豪華なゲームであるかをアピールするものが非常に多くなっていました。しかし、あまりに複雑化したゲームが分かりにくくなってくると、逆転現象が起きて、豪華であることをアピールすればするほど、難しそうで、ライトユーザーから敬遠されるような状況が起きてはいないでしょうか。

WiiのリモコンでWiiスポーツを遊んでいる姿がそうであったように、画面をひと目見たっだけで、その面白さが分かるようなデザインがこれからは必要になってくるように思います。それができた時にはじめて、今度はゲームがリッチであることや、奥深くあること、そしてとても綺麗にデコレートされていることも売りになっていくように思います。

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