ドラクエはPlaystationからDSへ

ドラクエに逃げられるの図
携帯機でドラクエ本編が発売されるのは、シリーズ初めて。この決定にはとても驚かされました。
スクウェア・エニックスの2枚看板のうちの1つ、ドラゴンクエストシリーズ(以下ドラクエ)。本編最新作であるドラクエ9は、ドラクエ7やドラクエ8が発売されたPlaystation(以下PS)系統のハードではなく、任天堂系ハードである、ニンテンドーDSで発売されることが決定されています。

ゲームのビジネスにおいて、ハードを変えるということは、マーケットを変えるということに他なりません。これはつまり、初代PSやPS2のお客さんから、DSのお客さんに達にターゲットを変えるという選択なわけです。PSとDSでは、お客さんの層が大きく違います。DSは非常に幅広い層が持っているハードであると同時に、PSと比べた場合、子供層の人気が非常に強いハードでもあります。

スクウェア・エニックスはDSというマーケットで新たにドラクエを売る為に、どのような戦略をとっているのでしょうか。今回、DSにおけるドラクエのマーケティングについて、リリース戦略に注目して考察しようと思います。

ドラクエリメイク戦略

2007年8月1日、スクエニはファミコンで発売されたドラクエ4、そしてスーパーファミコンで発売されたドラクエ5とドラクエ6をDS向けにリメイクして発売することを発表しました。第1弾のドラクエ4は今冬発売予定です。

かつてスクエニがDSでリメイクによってマーケットを構築した例に、ファイナルファンタジー3(以下FF3)のリメイクがあります。それまでニンテンドーDSは、任天堂のソフトこそ売れているものの、サードパーティーのソフト、特にPS2などではメインジャンルであるRPGはなかなか売れないと言われていました。そこに認知度抜群で、尚且つフルリメイクして市場の注目を集めることに成功したのがFF3だったわけです。

FF3はそれまで他のハードでFFをやっていたユーザーをDSに集め、あるいはDSの既存のユーザーにFFの存在をアピールし、100万本近くを売上げ、DSにおけるFFマーケット構築の礎となりました。

ドラクエ4、5、6のリメイクは、これからのDSにおけるドラクエシリーズ展開を睨んだマーケット構築の礎となるべく投入される商品と言っていいでしょう。

さて次は、DSで前々から展開されているドラクエ派生タイトルや、ドラクエの低年齢層向け戦略についてです。

DSドラクエ派生タイトルゲーム戦略

リメイクは今冬ですが、既にDSにはいくつかの、本編ではないがドラクエの名前を冠している、いわゆる派生タイトルが発売されています。ドラゴンクエストモンスターズジョーカーや、スライムもりもりドラゴンクエスト2などです。ドラゴンクエストモンスターズはゲームボーイ、スライムもりもりドラゴンクエストはゲームボーイアドバンスから続くシリーズで、どちらも任天堂携帯ゲームハードにおける、低年齢層を中心としたドラクエのマーケット確立に成功しています。

しかし、派生タイトルの中で最も注目したいのは、2007年6月21日に発売されたいただきストリートDS(以下いたストDS)です。いただきストリート(以下いたスト)はもともとファミコンで発売されたボードゲームタイプのゲームシリーズで、厳密にはドラゴンクエストの派生タイトルではありません。ですが、いたスト、ドラクエともにゲームクリエイターの堀井雄二氏が手がけていることもあり、今ではドラゴンクエストのキャラクターが登場するようになっています。

DSで発売されたいたストDSにはドラゴンクエストのキャラクターだけではなく、任天堂のスーパーマリオに登場するキャラクターが共演する形で出演しています。いたストDSのDSは、実はDRAGON QUESTのDSUPER MARIOのSなんですね。DSのゲームユーザーにドラクエを知ってもらうには最も上手な手段であると言えるかもしれません。

DS以外の子供向けドラクエ戦略

ドラクエ3談義の図
ドラクエと言えば、もともとは子供達にこそ大人気のゲームで、発売されると小学校ではドラクエの話題でもちきりでした。
さて、もう1つ、ドラクエのマーケティング戦略で大きな方向性が見えている点があります。それは年齢層です。先ほどお話したとおり、ゲームボーイやゲームボーイアドバンスなど、携帯ゲーム機では低年齢層向け展開をしていましたが、ドラクエ9のDS進出と同時に、子供層の取り込みへの積極的な動きがますます見られるようになりました。

そのひとつが、アーケードで稼動しているドラゴンクエストモンスターバトルロードです。ムシキングやラブ&ベリーなどで子供向けに成功しているカードを使ったゲームで、アーケードと言っても、ゲームセンターだけではなく、スーパーやデパートなどにもよく設置されてあります。ゲーム中や公式ホームページの文字を1つとってもできる限りひらがなを使い、漢字には振り仮名をふるというように、低年齢層を強く意識したつくりになっています。

また、2007年7月12日に発売されたドラゴンクエストソードなども、ドラゴンクストモンスターバトルロードのような完全な低年齢層向けではないものの、リモコンを剣に見立てて振ることで敵を倒すという、幅広い層に分かりやすいゲームに仕立ててあります。

もともとドラクエシリーズは、子供達の圧倒的支持を得てスタートしたゲームでした。私も小学生の頃にはドラクエを買う為にゲームショップに並んだのを覚えています。ゲームが複雑に、そして高価になっていく中で、失いかけた子供層をDSのドラクエ9でもう一度取り戻す、そういった展開の布石が着実に打たれているように感じます。

この新しいマーケットを作ろうという強い意志が感じられるリリース戦略は、他のサードパーティのお手本になるかもしれません。

任天堂ハードにおけるマーケティングの見本に

DSをやるモンスター達の図
DSという新しいマーケットに、ドラクエは根付いていくのでしょうか、ここはスクエニにとっても正念場です
今、ゲーム業界は任天堂ハードが圧倒的なシェアを持っています。Wiiは発売約8ヶ月で300万台を突破、DSにいたってはPS2の倍のスピードで普及し、なんと既に1800万台以上をも売り上げています。

ですが、WiiやDSが今までゲームをしなかった層を取り込んでシェアを伸ばしていったこともあり、任天堂以外のゲームメーカーの多くは、なかなかそのマーケットで売上げを伸ばし切れない現状があります。PSやPS2のマーケティングが通用しないんですね。

結果的にハードだけでなく、ソフトにおいても任天堂が圧倒的シェアを握ることになっています。ゲーム文化の多様性や、ゲーム業界の今後の発展のことを考えると、これは必ずしもよいことだとは言えないかもしれません。それはもちろんDSやWiiそのものにっとても、長い目で見たときに同じことが言えます。

そんな中で、スクエニは自社ブランドを上手に活用し、丁寧なリリース戦略で確実なシェアをDSに築いてきている数少ない企業です。スクエニの持つリソースをきちんと使いながら、なおかつマーケットにあわせたゲームソフトを戦略的に展開する手法は、今後多くのゲームメーカーのお手本になるのではないでしょうか。またその意味で、ドラクエ9がうまくいくかどうか、今後の試金石として注目していきたい所です。

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