Cellってなあに?

PLAYSTATION3(以下PS3)のニュースでたびたびでてくるCellという言葉、読み方をセルといいますが、これってなんのことだかみなさんお分かりになりますか? 最新技術の話っぽいけれど……あまり良く分からないという方、多いのではないでしょうか。そこで! 今回はこのCellについて、ご説明しようと思います。もちろん、いつも通り簡単優しく分かりやすく、解説していきましょう。

CellはPS3の頭脳

PS3の頭脳の図
PS3はCellの命令に従って、画面に映像を出したり、スピーカーから音を出したりしているわけです。
Cellと言うのは、正式名称をCell Broadband Engineといいます。さて、これは一体何なのだ? という質問に端的に答えますと、CellとはCPUであると言えます。じゃあ今度はCPUってなんなのさ、となりますね。まずはそこからお話していきたいと思います。

CPUはCentral Processing Unitの略で、日本語に訳すと中央演算処理装置となります。中央演算処理装置ではまだ難しくてなんのことか良く分かりませんね。簡単に言うと、コンピューターの中で考える役割をしている所、いわば頭脳とも言うべき部分です。例えばゲームでプレイヤーがキャラクターを操作する時、あなたがコントローラーのスティックを動かしたりボタンを押したりしますね。CPUというのはそういった情報からキャラクターがどういう風に動くかを計算して、画面上にどう反映させるか命令を下したりする所なのです。

このCPUの性能が良いコンピューターは素早く、複雑なことができますし、逆にCPUの性能が悪ければ考えるのに時間がかかったり、あまり難しいことはできなかったりするわけです。ゲームでたくさんのキャラクターがまるで自分の意思を持ってるかのように動く、だとか、実際の世界と同じように物の動きがシミュレートされている、なんてことをするにはこのCPUの性能が高くないと難しかったりします。ですからとても大切な部分なんですね。

次ページではいよいよCellが他のCPUとどう違うのかについてご説明しますね。

Cellは他のCPUとどう違うの?

妖精さん達の図
管理職の妖精さんはOSなども動かせます。専門職の妖精さん達は非常にシンプルで性能をあげつつもコストだけでなく消費電力や発熱を抑える構造になっています。
性能が高いのはもちろんなのですが、Cellは今までのCPUとは根本的な構造が違います。このお話は普通にしてしまうと、専門用語がたくさん出てくる難しい話になってしまうので、ちょっと別のものに例えてみたいと思います。

CPUの中に、妖精さんがいると思ってください。この妖精さんはお金を払って雇ってきてCPUの中でお仕事をしています。この妖精さんが優秀であればあるほどCPUは複雑な命令を素早く処理してくだせます。ですからいかに優秀な妖精さんを雇うかが、性能の高いCPUを作る鍵でした。

ですが、最近では、優秀な妖精さんを雇うには非常にお金がかかって困っています。今までより少し仕事ができる妖精さんでも、すごくたくさんのお金がかかってしまうのです。この時、優秀な妖精さんを1人雇うのではなく、たくさんの妖精さんを雇った方がいいのではないかと考えた人がいました。

この方法を使うと、妖精さん達の仕事はすごくはかどりましたが、まだ問題はありました。たくさん妖精さんを雇うとやはりお金がかかりすぎてしまうのです。そこで今度は妖精さんのお仕事を管理職と専門職に分けることを考えました、それがCellの構造なんです。PS3に搭載されているCellには管理職として汎用的なお仕事をこなせる妖精さんが1人、そしてさらに専門に特化して効率を追及した妖精さんがなんと8人も雇われています。これによって、1人1人の妖精さんたちを雇うお金を抑えながら、とても仕事ができるチームを作ったのがCellというCPUなんです。

ちなみに、妖精さん達の本当の名前をCPUコアと言います。CPUの中で核となる中心的な計算をする回路のことです。そしてCPUコアを複数搭載する仕組みをマルチコア、さらに管理職と専門職の妖精さんといった風に、種類の違うCPUのコアを搭載することをヘテロジニアスマルチコアと呼びます。ヘテロジニアスというのは、異種、あるいは異質のという意味です。異質のCPUコアを複数組み合わせているということですね。そして、CellはこのヘテロジニアスマルチコアのCPUというわけです。

さてここまで聞くと、全てを解決した夢のCPUに思えますが、やはり問題はあります。今までと違い、管理職の他に8人もの妖精さんがいるとそれをまとめるのが大変なんです。全員が上手く動くようなお仕事であれば、すごい力を発揮するのですが、それが難しい。つまり、Cellはその能力を最大限に生かせるようなプログラムを作るのが、現時点では非常に難しいと言われています。ここの所がPS3が初期になかなかその性能を生かしたソフトが揃わないだろうと言われる理由のひとつであり、同時に後半に魅力的なソフトが出てきて販売数を伸ばすのではないかと予想されるところでもあります。

さて、この高性能なCPUであるCellはPS3の為だけに開発されたのでしょうか? いいえ、違います。最後にソニーの壮大な計画についてお話したいと思います。

Cellコンピューティングという壮大な夢

地球全体で繋がるPS3の図
世界中で繋がってCellコンピューティングを駆使したゲーム、なんてものがいつか登場したりするのでしょうか。 夢は膨らみます
Cellはソニー、そしてSCE、さらに東芝とIBMが共同開発したCPUであり、ソニーはCellを中心とした半導体開発に2003年度から今まで5000億円もの投資をしています。そこには、ただ高性能のCPUを作るというだけではない壮大な計画がありました。

それはCellコンピューティングといいまして、ネットワークで繋がっている複数のCellを使って、1台ではできないようなより複雑で高度な処理をこなしてしまおう、というものです。PS3は世界で始めてCellが搭載されたハードウェアですが、CellはPS3専用に開発されたものではありません。むしろそれは逆で、このCellコンピューティングの為に、Cell普及の突破口を作るべく、全世界で1億台以上の出荷数を誇るPS2の後継機であるPS3に搭載されたと言う方が正しいかもしれません。

ですから、Cellは今後、写真や映像、音楽などを自由に保存したり加工したりすることができるホームサーバー、あるいはハイビジョン対応テレビ、Blu-rayディスク(以下BD)レコーダーなど、多くの家電製品に搭載していくことを考えていると言われています。そうして、まずは家庭内で様々な家電がネットワークで繋がり、Cellコンピューティングを実現していくことをPS3の次の段階として掲げられているのです。最終的には、世界中のCellが同時に繋がって、例えば地球を丸ごとシミュレートしてしまう地球シミュレーターのようなことがスーパーコンピューターを使わなくても家庭にあるPS3でできてしまう、なんていう夢のビジョンが描かれています。ここまでくるとまるでSFのようでワクワクしてきますね。

Cellというものが、ただのCPUではなく、ソニーの映像エンターテイメント戦略から果てはコンピューターの未来までも描こうとしているということが、お分かりいただけましたでしょうか? その為にも、PS3はSCEだけではなく、ソニー全体の中で非常に重要な位置を占めているんすね。

Cellや、あるいは次世代DVD規格であるBDはまさしく最先端の技術であり、PS3の強力な武器となっています。そしてこれらの技術を使って、ただのゲーム機ではないマルチメディアホームサーバーとしての可能性を秘めたマシンに仕上がっています。しかし一方で、PS3をゲームユーザーからみれば、やはりゲーム機です。いかにCellやBDが未来のビジョンをもっていようとも、ゲームをやる人がゲームハードを買うのは面白いゲームが出た時です。そうやって普及していかなければ、壮大なビジョンも最初の段階でつまづいてしまいます。

CellやBDを生かした新しいゲームコンテンツをいかに生み出していくか、それが今後のPS3と、ひいてはCellを使ったソニーの壮大な計画を成功させる鍵になるような気がします。

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