遠い世界の次世代DVD戦争

 
Blu-rayDiscとHD DVD。多くの人にとって実感が持てないのは何故…?
今年の頭くらいから、次世代DVD規格において、Blu-rayDiscがほぼ勝利を手中にしつつある、というニュースをよく見かけるようになった。
PS3でも視聴できるBlu-rayDiscなんだからやっぱりこっちが有利なんじゃ? と思ったがそれだけではなく、去年末の状態でPS3を含まず、シェアがほぼ9割だというのである。

ブルーレイがシェア9割超 次世代DVD年末年始商戦|IT|経済|Sankei WEB

なるほどなー、そうなのかー。
と思いつつも、なんだか別世界の話のような気がする。
家電販売店に行けばBlu-rayDiscプレイヤーもHD DVDプレイヤーも買える。
ちょっと大きいDVDショップに行けばBlu-rayDiscもHD DVDも見かける。
なのに、である。
世間一般では体感的に「別にどっちが勝ってもいいや」というような雰囲気である、気がする。
この違和感は何なのだろうか?

今回アンケートも用意したので、是非皆様のご意見もお聞かせ願いたい。

PS3にBlu-rayドライブって必要だと思いますか?

なぜPS3にBlu-rayが搭載されているのか?

 
高密度、大容量と言うイメージのBlu-ray。Xbox360と違いHDDが全モデルに搭載され、しかもメディアが大容量と言うアドバンテージを生かせれば!
もともとPS3は「Blu-rayDiscが再生できる!」という非常にリッチな環境を持って誕生した。
そんなに大容量じゃなくてもいいような気もするが、何せBlu-rayは非常にセキュアな規格であり、不正コピー許すまじ! の立場から言ってもDVDより望ましいというわけである。
正直に言って、DVDはすでにセキュリティーに弱い「過去のメディア」と言って良い状態にある。多くの良識ある人は実行には移さないものの、あらゆるDVDソフトはクラックされ、データを抜き取ることが(それも、いとも容易く)可能である。立場をわきまえつつ言ってしまえばPS2のソフトを不正コピーして遊ぶことも可能なのだ。コンテンツホルダーの立場ではDVDに代わるセキュアなメディアは急務なのである。

だが、コピーコントロールCDの時にも「メーカーの事情でわけのわからないCDを買わされ、挙句iPodで再生できないし音も悪い」というようなユーザー側の嫌悪感みたいなものがあった。
本来DVDでいけるなら、なんとなく割高感のあるBlu-rayDiscじゃなくても、というような気がする。
だが今のところPS3のソフトの高さがメディアのせいだという話も聞かないし、むしろたまに投売りされていたりするのも見かける。量産効果が出ればDVDと同程度の価格でプレスできるというのも期待が持てそうだ。そう考えると、Blu-rayの「問題点」は絞られる。

そう。Blu-rayであるただひとつの問題は、PS3自体が高いことである。

Blu-rayDisc不要論

とりあえずBlu-rayDiscが再生できなくても問題がない人々にとって、「そんなもんいらないから価格を下げろ」という意見は根強い。メリルリンチの分析でもBlu-rayDiscドライブは$350と計算されている。これはPS3のほとんどを占めると言ってもいいくらいである。
しかし、まぁ正直言ってBlu-rayDiscがないPS3はあんまりXbox360とかわらない。
内部的にはいろいろ違うだろうが、できることにそんなに差が出なくなってしまう。
それになにより、PS3はBlu-ray陣営のソニーにとっても普及の大きな鍵だったはずである。
おそらくはそんなわけで、「ゲーム機にBlu-rayDiscドライブを搭載!」という大博打にでたわけだ。
しかしそんなメーカーの思惑ばっかりに付き合わされて「たぶんいらないと思う機能」付の高級ゲーム機を買わされるほうはたまったもんじゃない。

同様のことはPS2の時にもあったはずだが、今回はなぜこんなことになってしまったのだろう?

DVDは「カッコいい」Blu-rayは「カッコ悪い」

 
あまりにハイレベルな家電は逆にマニアで「カッコ悪い」?
もともとDVD普及前のVHS時代、なんとなく「次はディスクメディアに切り替わるのかな」という予感はあった。
カセットテープもCDになっちゃったし、録画はしばらくVHSだろうけど映画とかはディスクになる気がする。
でもレーザーディスクは相当マニアックな代物で、まぁそんなに急激に切り替わるものでもないだろう、と思っていた。

そこに現れたPS2。足りないグラフィック能力で背伸びし続けていたPSに比べると雲泥のグラフィック性能で、なんとなくゲームの新世代を感じさせたし、当時はゲームがなんかオシャレなイメージだった。これってカッコいいじゃん、と思わせるクールさがあった。

実際初期のPS2ソフトはほとんどCDメディアでの供給になったわけだが、DVDってのはすごい大容量らしい。当時CD何枚組み、みたいな大作ゲームも出ていたし、CDはそろそろ限界っぽい。これからはこれなのかな、という予感めいたものもあって、PS2は飛ぶように売れた。

しかし今回はなんだか空気が違う。

ゲームがオシャレ、クール。そんなイメージはちょっとナリを潜め、女子や子供やおじさんがカジュアルゲームを楽しむ、というのがなんだかゲームのトレンドになってきている。昔なら女子に「PS2あるんだ。うちに遊びに来ない?」って誘えた気がするけど、「PS3あるんだ。うちに遊びに来ない?」はちょっと違う気がする。どっちかというとWiiやDSのほうが喜ばれる気がしないか?

すっかり「オシャレなゲーム機」がマニアックなものになってしまった。

Blu-rayDisc搭載、といわれても、今はとりあえずいらない。
だってテレビもそんなに大きくないし。アレって大画面じゃないと意味ないんでしょ?

PS2がDVD普及の立役者だったのは反論の余地がないと思うけれども、今のところPS3はそんなに頼もしい存在とも言えそうにない。
それどころかBlu-rayDiscそのものがそんなに必要とされてない感じすら、ある。
要はBlu-rayDiscが勝利しようがHD DVDが勝利しようが今のところどうだっていいわけである。

そんな中、ユーザーとメーカーの利害関係はちょっとズレて来ている。

メーカーは「ハイビジョン」を売りたい!

 
ハイビジョンの需要はこれから伸びるハズ!
家電メーカー各社は、2011年の地上アナログ放送停波をチャンスに大型テレビをたくさん売りたい。
その際にハイビジョンを売り言葉に、あらゆるハイビジョン対応製品を売りたい。
「ほら、お手持ちのアナログテレビ映らなくなっちゃうでしょ。いい機会だからハイビジョンレコーダー買いましょうよ。地デジがそのままの画質で観れますよ。いい機会だからBlu-rayDiscプレイヤー買いましょうよ。超イイ画質で映画が観れますよ。いい機会だからHDのビデオカメラ買いましょうよ。お子さんの運動会だってハイビジョンで撮れますよ…」

確かに後数年でテレビは切り替わる。

正確に言えば放送を受信するチューナーが切り替わる。
自宅で受信している電波がハイビジョンなので、やはりハイビジョンテレビが欲しくなる。
しかし、こう、手ぐすね引いてハイビジョンハイビジョン言われるとなんだかなぁ、と思うのが心情である。
PS3はそんなタイミングで発売された。いらん事にBlu-rayDisc付きだった。
微妙に空気が読めていない感じである。

とにかく今以上の値下げを!

ただし、戦略的には同情できる点が多々ある。
世の中が総出でハイビジョンに切り替わるのは本当のことだし、次世代機を謳うからには次世代DVD、というのもわかる。
となれば後お願いしたいことは「Blu-rayDiscの大容量を生かしたタイトル」で、「あぁ、やっぱりBlu-rayDiscって必要だよね☆」と思わせていただきたい。
あとはPS3をとにかく大量に売りさばいて、一刻も早く本体価格を下げて欲しい。
すでに赤字とも言われているPS3だが、これが大赤字になってもいいじゃないか。
Blu-rayDiscをつけよう! というのはメーカー側の思惑も大きいわけだから、とにかく「高いから買えない」と言われないためにも安くするべきだ。

そういえば欧州でのセールスは好調のようだし、20GBモデル生産終了後にはひょっとして…?

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あと、PS3の現状と値下げ、という二つで筆者がどうしても思い出してしまうことがある。本稿の内容とは少々ずれるのだが、「湯川専務」「せがた三四郎」と聞いて目頭が熱くなる読者には次のページをぜひご一読願いたい。

余談ですが

 
もともとワタクシは「メガドライバー」。えぇ、昔セガマニアをそう呼んだ時期があったのです。
もともと初代PSは39,800円で販売された。ちなみにセガサターンは44,800円である。
それからおよそ8ヵ月後に29,800円。さらに7ヵ月後に24,800円。その3ヵ月後には19,800円になっている。

PS2も発売時は39,800円。ちなみにドリームキャストは29,800円である。
それからおよそ15ヵ月後に35,000円。さらに5ヵ月後に29,800円。さらに12ヵ月後に24,800円(ただしオープン価格)。その12ヵ月後に19,800円。

これを見ると、PSでは8ヶ月で1万円の値下げに成功したのに対し、内部的に複雑なPS2は1万円価格を下げるのに2年近くもかかっているのがわかる。PSの場合は同時期に発売されたセガサターンとの価格競争が値下げに大きく起因していたが、PS2では目立ったライバルが不在だったため、ゆっくりと量産効果を出すゆとりがあったとも見受けられる。

ちなみにPSが絶好調の中、PS2発売の16ヶ月前に発売されたドリームキャストは立ち上げに失敗し、発売7ヵ月後には19,800円へと1万円の値引きを決行している。当時の立ち上げ失敗の背景は「生産の遅れ」「開発の遅れ」「ソフトウェアの供給不足」「サードパーティーの離脱」などなど…。

思い出してしまうわけである。

ドリームキャストの歴史的負け戦と、PS3がなんとなく重なってしまうわけである。

もちろん細かな事情も状況も違うし、セガのように(日本市場で)一度もデファクトスタンダードになったことのないメーカーと、12年も家庭用ゲーム機の王者として君臨してきたソニー・コンピュータエンタテインメントと同じ状況になるとは思っていない。

だが、いくらなんでもここまでの惨状は予想していなかった、という事態にまで堕ちているのも事実。

とにかく値下げだ!
と言った直後にアレだが、偉大な先人の失敗例というのも忘れないで欲しいと切に願いたい。
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