■サルマタトリオの王子(間違い)

『ドラゴンクエスト(以下ドラクエ)』。
言うまでもなく、ゲームファンならおよそ誰もが知っているであろうモンスタータイトルです。
発売のたびに社会現象になり、昔は『ドラクエ』を買った子供を高校生が恐喝したり、『ドラクエ』と一緒にあまり人気のないソフトを売る、いわゆる「抱合せ販売」が問題になったりしましたね。

そんな大人気タイトルである『ドラクエ』。『ドラクエ7』はプレイステーションで発売されて400万本を売上げています。
が、僕は『ドラクエ』シリーズのほとんどを遊んだことがないのです!

初代『ドラクエ』はかろうじて遊びましたが、『ドラクエ2』はラーの鏡が見つけられなくて投げてしまった超ヘタレなのです。ムーンブルクの王女はずっといぬっころだったのです。サマルトリアの王子に至ってはずっとサルマタトリオの王子だと思っていたのです!

そもそも2大RPGとして『ドラクエ』『ファイナルファンタジー(以下FF)』の二つが挙げられると思うのですが、僕はどちらかといえば『FF』派。ケレン味溢れる演出や毎回ある革新的なゲームシステムの変化、全体から漂う大仰な感じを愛していました。

対する『ドラクエ』は、遊んでいない立場のイメージとしては「堅い」「単調」「グラフィックが古臭い」という感じがして、今までなんとなく手を出していませんでした。

後は「どうせみんな遊んでるし」という、天邪鬼な性格も影響したと思います。

そんな僕が『ドラクエ5』を遊んでみました。もちろんスーパーファミコン版ではなくて、まだ発売されて間がないPS2版です。ハードウェアの進化がソフトウェアの進化にどう影響するのか! とかはよくわかりません。何せ元を知らないですからね。

オリジナルは1992年9月27日に発売されたスーパーファミコン版ソフトで、280万本の売上だそうです。対してPS2版は2週間で150万本を販売と、シリーズのリメイク作としては最多の販売本数を記録しました。

「やはり『ドラクエ』には“何か”があるのかッ!」

と言うわけで、今回は『ドラクエ』シリーズをほとんど遊んでいない僕の視点で、『ドラクエ5』の序盤をプレイしてみたいと思います。
■すごくなった(らしい)

まず最初に思うのは、『ドラクエ』らしからぬ3D画像。確か『ドラクエ7』でも3Dを採用していたとは思うのですが、一見して『ドラクエ』っぽさを感じさせつつ、箱庭的小世界を構築していて好感が持てました。

当然僕は『ドラクエ5』のストーリーについてもほとんど知らないのですが、確か少年時代はちょっと稲川淳二似のお父さんが一緒で、その後色々あって青年になってからのストーリーが展開する…という内容じゃなかったですか? ねぇ?

と言うわけでマップをぐるぐる回しながら箱庭をうろついてみます。不思議と豪華な画面になっても『ドラクエ』らしさがにじみ出ている気がします。

恐らくスーパーファミコン版を遊んだ人は「あの場所がこんな画面に!」的な楽しみ方もあることでしょう。しかし僕は「綺麗なった(んだろうなぁ)」とか「平面だったのが立体的になった(んだろうなぁ)」とかいう感じ。

しかし何と言うか酔いますよ。ぐるぐる回しているとなんとなく酔いますよ。酔う上に、ぐるぐる回さないと見つからない通路とかアイテムがあったりするわけです。つまり酔うにもかかわらずやむを得ずぐるぐる回さないといけないわけで仕方なく無意味にぐるぐるぐるぐるウゲェェ…失敬。

ハードの進化で画面が美しくなるのはもはや当然の成り行きですが、それでも一見してそれとわかる『ドラクエ』らしさ、それを大事にしているように思いました。城一つとっても「城! まごうことなき城!」という感じです。こうなってくると逆にオリジナルではどうだったのかが知りたくなってきますね。

そうだ! あえてオリジナル版の攻略本を見ながら遊べばこれはかなり面白いんじゃないでしょうか!? 攻略情報が目当てではなくて、当時のグラフィックを知るための攻略本というのもちょっと乙かも知れません。

さて、ハードの進化と言うと気になるのは戦闘画面。これがまた素晴らしい出来栄えでして…。
■敵キャラクターが生き生き動くようになった(ようだ)

初代『ドラクエ』の時代、鳥山明先生の描くモンスターが敵として登場したのはかなり衝撃的でした。

それが今回より立体的に動き回るんだからこりゃもう凄いことです。

序盤に登場するモンスターは可愛らしく、攻撃のモーション一つとっても微笑ましい感じがします。スライムが横に並んだ図などはなんとなく癒されますね。『ドラクエ5』ではモンスターを仲間に出来るという噂。スライムを仲間に入れるとより癒される気がします。楽しみです。

また、戦闘画面の背景が非常にリアルで臨場感アップに貢献しています。よく観ると雲の流れとかが本当に綺麗なんですよ。

そして敵が多いときはやや引いた画面なんですが、頑張って倒して敵の数が減ると、カメラが寄って敵キャラクターが大きく映し出されるという点も上手な演出ですね。

これが

こうなる

戦闘シーンは全体的に打撃音、ダメージを与えたときや倒したときのモンスターのモーションが小気味良くて非常に好感触でした。演出に懲りすぎてスピード感を失ってしまう、と言うこともなく、特徴的でありながらあっさりとしたモーションでテンポを損ないません。

思えばファミコン時代のソフトはテンポが良かったですね。CDやDVDから読み込むのとは違い、ROMの読み込みスピードは快適で、アニメーションパターンの貧弱さが逆にスピーディーな展開を生み出していました。

最近はメディアがCD、DVDなどのディスクになって読み込みに時間がかってLOADINGと書かれた愛想のない画面をずっと眺めたり、凝った演出で操作できない時間が多かったり。それに対し『ドラクエ5』は、ファミコン時代のテンポを思い出させてくれてストレスが溜まりませんでした。
■操作性が大幅アップ(だとおもう)

2本のアナログスティックでの散策、対象物に向かって△ボタンを押すと相手が人のときは「はなす」、調べられる物の時は「しらべる」を実行してくれる点など、操作性は非常に良いと思います。

しかしそういったコマンドがすべてひらがなだったり、戦闘中のメッセージがひらがなばかりだったりと、なかば儀式的にオリジナルを踏襲しているような感じも見受けられました(会話などのメッセージはちゃんと漢字交じりです)。

また、○ボタンを押すとシリーズおなじみの「はなす」「どうぐ」などのコマンドが出てくるんですが、これも儀式的に残っているだけ、という印象があります。△ボタンで「はなす」「しらべる」は省略できるはずですしね。

そもそもゲームをスタートする段階から「冒険の書」なるものを作ってプレイを開始するのですが、この手順も「ファミコンらしさ」を感じました。

オリジナルのファンにとっては大切なオマージュでしょう。僕のようにオリジナル未経験、シリーズ未経験の人にとってはただ遊びにくいだけになってしまいます。ただ、『ドラクエ』だけでなくファミコン全体に対するオマージュと受け取ると許容できるように思います。

おそらくシステムの根底を今風にデザインしなおすことも容易だったことでしょう。しかしあえてオリジナル作品の、またファミコン、スーパーファミコンというゲーム機の良い部分、悪い部分を内包することを選んだのだと思います。

こういった懐かしさと映像的な新しさが入り混じった感覚が、逆に斬新にも感じました。初体験であるはずなのに、なんだかとても懐かしい感じがしたんです。
■未経験って素晴らしい

フィールドの風景、モンスターの愛くるしい(又は凶暴な)動き、派手な魔法のエフェクトなど。それらはPS2の機能を生かして作られたものにもかかわらず、昔のゲームっぽい感覚が強く残ります。

それは技術を多用してケレン味を感じることが多い昨今のゲームの中ではむしろ逆の、「技術を誇示」するのではなくて程よいバランス感覚で「当時思い描いたものの完全版」を作ろうとしたからなのではないかと感じました。

映像的な進化ばかり言及してしまいましたが、音楽についてはなんとNHK交響楽団によるフルオーケストラサウンドと言うことで、非常に豪華なものになっています。素晴らしい楽曲ばかりでなんとも贅沢! 「おそらく当時のすぎやまこういち氏の頭の中ではこういう音楽が鳴っていたんだろうな」と思うと感慨ものですね。これもできれば当時のサウンドと聴き比べてみたいと思いました。

演出に凝ると犠牲になりがちなテンポ、遊びやすさがとても重要視されていて、とても遊びやすいゲームになっています。ほとんど『ドラクエ』を遊んだことがない僕にもその魅力は十分に伝わりました。

そして、多くの人が遊んだであろう『ドラクエ5』の豪華版を、先入観のほとんどない状態で遊べるというのはひょっとしたら素晴らしいことなんじゃないだろうかと思いました。

考えたら会話シーンに音声が入ることもなく、演出は控えめ、余分なムービーもないゲームと考えると、むしろ昨今のゲームの中では地味なほうなのかもしれません。しかしプレイを始めるとなかなかやめられない麻薬的な魅力があるんです。

相手がいないときの「はなす」コマンドは仲間との会話バリエーションがたくさんあって感心しました

それは、映画的大作RPGにおける「遊べー、クリアしろー、感動しろー」という大作ゆえのプレッシャーとは異なり、単純なことの繰り返しでも楽しめるという、シンプルで純粋な楽しさなのではないでしょうか。

できれば、オリジナルを知らない僕でも「これがこうなったんだ」という事がわかるようにオリジナルがおまけでついていてくれたら、と思いましたが、ひょっとしたら未経験者はターゲットに含まれていないのかもしれませんね。

と言うわけで、遅まきながら僕も『ドラクエ』ファンの仲間入りをさせていただいてよろしいでしょうか?

『ドラゴンクエスト5 天空の花嫁』
スクウェアエニックス
8,190円(税込)
3月25日発売

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