東京には少ない関西風の鰻を出す店

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有楽町駅中央口で東山さんと待ち合わせ
世の中にはうらやましい人がいる。この散歩によくつきあってくださる東山さんもそのひとりであろう。大手企業のサラリーマンを辞め、IT関係で独立。あくせく働かなくても収入はけっこうあるそうで、いつも暇にしている。
そのため、僕のこの散歩にもよくつきあっていただけるというわけだ。
そんな東山さんから散歩の途中でよく聞く話が鰻の話である。
東山さんは東京生まれの埼玉育ちなのだが、関東の鰻は好きではないと言う。鰻は関西式のほうがおいしいのだそうだ。
では、関西と関東で鰻の調理法はどう違うのだろうか。よく、関西は腹開き、関東は背開きといわれる。
江戸には武士が多く、腹を切って開くのは嫌われたのだそうだが、真偽のほどはわからない。
僕は東山さんにそう言ってみる。すると
「それもあるんですが、関東の鰻は蒸してから焼くんですね、それに対して関西の鰻は蒸さずにそのまま焼くんです。だから関西のほうが堅いんですが、歯ごたえがあっておいしいんですよ」という。
へえ。そうだったのか。さて、そんな関西風の鰻だが、東京でも食べさせてくれるお店があるというので、東山さんに連れて行ってもらうことにした。待ち合わせをしたのは、有楽町駅である。

銀座一丁目をめざして歩く

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銀座一丁目の交差点から銀座柳通へ。鰻屋さんはもうすぐだ。
関西と関東の鰻がどの程度違うのかよくわからないが、僕自身は鰻が好きであり、関西にも住んでいた。関西でも鰻はよく食べたはずだが、なにせ遠い昔のことでよく覚えていない。
ただ関西ではおいしいお店とそうでないお店が極端だったことは記憶している。
そして、東京にやってきたら鰻はどこもそこそこおいしかったという記憶が残っている。
といっても大阪に5年住み、東京にやってきたのは今から約30年も前の話なので、なんとなく記憶があいまいである。
というわけで、きょうは東京では珍しい関西風の焼き方をするという鰻屋さんへ行く。場所は銀座一丁目なのだそうだ。
まずは、銀座一丁目の交差点をめざして歩き始めた。
住所をたよりに到着したのは「ひょうたん屋」というお店。わぁ、なんだかきれいなお店である。

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有楽町駅をスタートし、銀座一丁目にある「ひょうたん屋」さんで鰻重を食べ、浜離宮恩賜庭園、浜松町駅までの3.5kmのコース


銀座一丁目にある「ひょうたん屋」さん

たどり着いたのは、ビルの一階にあるこぎれいなお店。「うなぎ ひょうたん屋」という看板があり、海老茶色の暖簾が出ていた。
ひょうたん屋
すでに店内はお客さんでいっぱい。

時刻は11時半。すでに店内はいっぱい。奥に席が空いているようで、そこに通された。表にメニューが貼ってあり、それによれば
うな重(並) 1400円
うな重(中) 1700円
うな重(上) 2000円
うな重(特上)2500円
と書かれていた。
どうしますかと東山さん。道すがら、この店のおいしさをうかがっていたので、やはりここは特上にしてみよう。
楽しみだ。
店内は比較的年配の紳士が多いが、若い人もいる。
隣のテーブルには、年配の紳士と若い人のグループだった。年配の紳士がお店の人に「こっちに移ってきて、どう?」というようなことを聞いていた。どうやら、以前は別の場所で営業されていたようだ。店の人は変わりないというような返事をされている。

肉厚の鰻を噛みしめる。旨い!

東山さんによれば、ここの鰻は焼き方が地焼きという関西風のものなのだそうだ。
うな重特上2500円
うな重(特上)2500円。鰻がモチモチしている!

やってきたうな重。見た目にはまったくわからなかったが、一口食べて、ああ、これは懐かしいという気分になった。そうか、関西風の焼き方は鰻がモチモチしているのだ。東京の一般的な鰻はホコホコというかんじなのだが、こっちは歯にくっつくかんじといえばいいだろうか。タレはそのモチモチに負けないくらい醤油が強い。これは旨い! 
「本当の鰻好きならこっちだと思うんですよ」
と東山さん。ああ、そうかぁ。そうかぁ、たしかにこっちのほうが鰻の味が濃い。あ、それで関西で鰻を食べたときは、素材の味そのものがストレートに伝わってくるので、おいしい時とそうでない時があったのだろうか。
店を出たあとで、東山さん曰く、
「たぶん別物なんですよ、蒸して焼くものとそのまま焼くのでは」
たしかにそう思う。東京の柔らかい鰻もいいが、歯ごたえのある鰻もおいしい。たしかに別物のような気がする。
しかし、ここの特上2500円というのは、かなりリーズナブルなかんじがする。

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浜離宮恩賜庭園

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かつては徳川将軍家の鷹狩場だった浜離宮恩賜庭園
銀座から歩いて2~30分の場所にあり、一歩中にはいると都心とは思えない自然豊かな庭園がある。それが「浜離宮恩賜庭園」だ。入園料は大人は300円ほどかかる。あいにくの空模様で、今にも雨が降り出しそうだ。こんな日の庭園もまた一興。
まずは潮入の池をめざす。もともとこの庭園は徳川将軍家の鷹狩場であった。その後、将軍の別邸となり、「浜御殿」と呼ばれるようになった。この庭園のおもしろさは東京湾より海水を引き入れている池にある。
潮の干満により風景を変えるという設計の池なのだそうだ。
今と景色は変わっているのかもしれないが、NHK大河ドラマ「篤姫」にも登場した将軍、徳川家定が、この庭園から薩摩藩主、島津斉彬がつくった軍艦「昇平丸」が江戸湾に浮かぶのを眺めたそうだ。

中島の御茶屋で抹茶をいただく

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緋毛氈の敷かれた落ち着いた室内(上)で抹茶と和菓子をいただく。
潮入の池から中島橋を渡ると中島の御茶屋にたどりつく。500円で抹茶と和菓子のセットがいただける。池に浮かぶ小島に建てられたこの御茶屋からの景色はなかなかのものだ。正座してお茶をいただく僕。東山さんも正座をしている。
「足をくずしてもいいんですよ。僕はこのほうが楽だから」
と言うと、東山さんもこのほうが楽だとのこと。なんだか変な共通点である。
他のお客さんがおらず、我々の貸し切りのようなかんじだったが、途中から若い男の子たちのグループがやってきて、僕たちを見習ってか、正座をしようとしていたので、今度はこちらへ、
「足をくずしてもいいんですよ」
と言うと、皆が胡座をかいてすわった。
僕はどうも昔から胡座が苦手なのだ。

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先ほどの中島の御茶屋が池に浮かんで見える

この庭園は歩けばどんどんと景色が変わっていく。その変化は実に大胆。先ほど我々が抹茶をいただいた御茶屋が池の上に見え、その向こう側にはビルがあった。
中島の御茶屋
池にはいくつかの橋があり、進めばどんどん景色が変わる。

なんとも風情のある庭園をゆっくり歩く。今にも雨が降りそうだ。

かつては本当に鴨を捕っていた鴨場

東山さんによれば、川越にも鴨場があって、子供の頃はそこでよく遊んだそうだ。アヒルをおとりにして鴨を捕るという独特な漁ががここで行われていた。
鴨場
今も残る鴨場。つくられたのは江戸時代だ。

緑の多い、庭園に不思議な建造物がある。鴨場なのだそうだ。と、このあたりで雨がポツポツ降り始めた。僕たちは急ぎ足でJR浜松町駅まで向かった。

【関連サイト】
ひょうたん屋 [食べログ]
浜離宮恩賜庭園|東京都公園協会
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