東京タワーを見ながら歩く

今回の散歩のハイライトは東京タワー。東京に住んでいると意外と行かないのだ……
以前、高田馬場から神楽坂までを一緒に歩いてくれた放送作家の遠藤さんより、電話があった。麻布十番においしい定食屋さんがあると言う。おおおっ、それはいい。麻布十番を歩こう。遠藤さんは、

「だったら、東京タワーを目指して歩き、それから増上寺に抜けていくというコースはどうでしょう」

と言う。あ、いいねぇ。考えてみれば、東京に住みながらも東京タワーに行く機会というのがなかなかない。

今回の散歩は、地下鉄の駅でいえば、「麻布十番」から「御成門」までである。距離でいえば、たいしたことはないのだが、本当は東京タワーを歩いて昇る予定だったのだが、この日は平日。階段で昇れるのは土日だけだったのだ。この記事を読んで散歩に出かける方はぜひ土日を選んでみてはどうだろう。

麻布十番~増上寺まで


麻布十番の駅構内を歩いて地上に出る

ちょうど首都高が走っている下が昔の古川と重なる
麻布はもともとは「阿佐布」もしくは「安座部」と呼ばれていた集落であったそうだ。それが江戸時代に麻布となる。時代が東京になり、15区の行政区分がされた。そのひとつが麻布区である。麻布狸穴町とか麻布永坂町いうように麻布を冠した町名があるのも麻布というのが広域をさす地名であったことがわかるだろう。麻布十番もそのひとつである。

ならば、なぜ十番なのか。古川という川の改修工事の10番目の工区であったためにこの名前がつけられたそうだ。麻布には一の橋という地名がある。ここを流れていたのは古川という川で、ちょうどこの一の橋あたりで川が大きく曲がっていた。改修工事の結果、このあたりは舟からの荷物が集積する場所になり、この地が賑わうこととなったようである。

地下鉄の麻布十番駅は広い。しかもその通路は、まるで近未来の都市に続くタイムトンネルのようだ。ここから散歩が始まっているような気がする。一の橋ではなく、新一の橋方面出口(6番出口)から地上に出る。当たり前だが今、古川はない。暗渠になっているのだ。ちょうど首都高が走っているが、それが昔の古川と重なる。ちょうどこのあたりに舟が着き、荷物の積み下ろしをする人たちでごった返していたのだろうか。

そんなことを考えている時に放送作家の遠藤氏が現れた。待つこと10分。Nくんが現れる。

「ここの地下鉄はデザイン的におもしろいねぇ。駅から散歩が始まるようだ」

と言うと、

「会社からタクシーできたんですよ……」

とのこと。仕事が忙しそうだ。

麻布十番の「縄」でボリュームの昼食

ナポリタン&煮かつのせライス。炭水化物+炭水化物の若者向けのセット
オリエンタルスパゲティ&カルビ焼きのせライス。こちらも炭水化物+炭水化物の強力ランチだ!
「ここはね、昔よく来ていたんですよ」

そう言いながら遠藤氏が「縄」へ案内してくれた。今風の定食屋さんという感じ。看板には「Cafe Restaurant NAWA」とある。お客には例のごとく若い男性が多い。遠藤氏によれば、このあたりにはテレビの編集スタジオが多く、そこでは「縄」からよく出前を取るそうだ。

「だから最初は出前しか知らなかったんですけど、あるとき、ここがお店なんだと偶然知って……」

と言う。お勧めは、「豚マヨネーズ焼き定食」だとメニューを指さす遠藤氏。彼はそれを注文。ほっほー、それもおいしそうだが、他の若いお客さんの多くは、ペアセットというのを頼んでいるようだ。このペアセットというのは、ひとつのお皿の中にパスタとご飯モノがいっしょに入っている。いろいろな組み合わせがあるのだが、迷った末に僕は「オリエンタルスパゲティ&カルビ焼きのせライス」。Nくんはもちろん「ナポリタン&煮かつのせライス」。

それぞれ少しずつもらって食べたが、どれも美味い! ちなみにオリエンタルスパゲティというのは、しょうゆ味の和風パスタだ。煮かつのせライスはカツ丼である。

ご飯を食べながら、今日の散歩のナビゲーターである遠藤氏に予定を聞いてみた。

「まずは、東京タワーまで行きます」

ほっほー。

「これがね、歩きながらだんだん東京タワーが見えてきて、大きくなってくるのが散歩ならではですよ。さらに、この東京タワーを歩いてあがるんです」

おっ、いいねぇ。

「そこから、増上寺まで行って、わらび餅を食べるんですよ」

ほっほー。素晴らしい散歩コースだ。

「ところが、問題があって……」

ん? なんだ、なんだ?

「実は僕、これから打ち合わせがあるんで、途中までしか一緒に歩けないんです」

がーん……。というわけで、僕たちは散歩をスタートした。

東麻布商店街を抜けて、東京タワーへ

東麻布商店街を抜けて、遠藤さんと東京タワー。都心で電柱がまだあるのは珍しい
赤羽橋方向に歩く。このあたりに橋の名前が多いのは、古川という川がここを流れていたからだ。赤羽橋の交差点の手前で左に曲がると、東麻布商店街である。落ち着いた昔ながらの商店街だ。そう思わせるのは電信柱や電線がまだ残されているのもひとつの要因である。

その電線の間から、どーんと東京タワーが見えてくる。近づくにつれて、巨大な東京タワーの下の部分、鮮やかなオレンジ色の鉄骨が見えてくる。あー、これこそは百聞は一見にしかず。さっき遠藤氏から聞いていた以上の迫力だ。しかし、遠藤氏は東京タワーの目前で打ち合わせがあるからと、別れることとなった。

東京タワーは、平日の昼間ということもあって、やたらと中学生が多い。修学旅行だろう。お土産コーナーで悩みながら買い物をしている。楽しそうだ。小学生のグループもいる。さて、どうやって階段を昇るのだろう。右往左往。やっと、インフォメーションのカウンターを発見。Nくんが聞いている。な、なんと、階段で展望台まであがれるのは土日だけだそうだ。ショック。仕方なくエレベーターで展望台まで。

それにしても、東京タワーに来た覚えがなかったのだが、展望台まできたら何度かきたことがあるぞと思い出してきた。ただ、具体的な記憶がない。

左は昭和51年の新聞。右は昭和33年。細かい広告などを見ていくと、時代の違いが鮮明にわかる
Nくんが足を止めたのは、「あなたの生まれた日の新聞をコピーいたします」という自動販売機の前。こういうのがNくんは好きだ。僕が生まれたのは、なんと東京タワーのできた昭和33年である。さすがに文字も小さく古い新聞だ。Nくんは昭和51年である。僕が高校を出て浪人をしているときに生まれたことになる。さすがにNくんの新聞は今に近い。

とにかく東京タワーの中をいろいろ歩く。しかし、いい天気だ。室内にいるのはもったいない。僕たちは東京タワーをあとにした。

増上寺でわらび餅を食べる

増上寺と東京タワー。この日は平日とあって、境内は静かだった
芝縁のわらび餅。甘すぎず、お茶とばっちり合う
東京タワーで結構時間をとってしまった。隣接するところが芝公園であり、そこに増上寺がある。大きなお寺である。もともとは芝公園全体がこの寺の敷地だったらしい。さすがに徳川家の菩提寺である。

しかし、遠藤氏が言っていたわらび餅が食べられるところはどこだろうか。Nくんが、

「こっちですよ」

と言う。さすがに食べ物のことには、鼻が利くなぁ。「芝縁(しえん)」という茶店風なお店である。最近はオープンカフェなんていうのが結構あるが、考えてみれば、茶店ってもともとオープンカフェだ。縁台に赤の毛氈。お茶にわらび餅をいただく。実にゆったりとした時間である。

Nくんと散歩についてあれこれ話していたら、お隣でビールを飲んでいらっしゃるご婦人が話しかけてきた。高輪から自転車でぶらりと来られたそうだ。

なんともまったりとした散歩。距離はさほど歩いていないかなぁ。僕とNくんは地下鉄の御成門駅まで歩いた。前を歩くNくんの影が長い。秋になり、急に日が短くなった。



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浄土宗大本山 増上寺
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