秋葉原から豊洲まで行き当たりばったり

「これから1号店を取材しようと思うんですよ」

前回の散歩でオールアバウトのプロデューサーであるNくんが言った。コンビニやファーストフードの1号店を探すというものだ。いったいそれと散歩とどう関係があるんだろうかと思っていると、
「そこまで歩くんですよ」
と言う。なるほどねぇ。というわけで、1号店巡りの最初は、セブン-イレブンである。豊洲にあるのだそうだ。僕はよくわからないまま、

「それじゃ、秋葉原から歩こうか」

と言ってしまった。なぜ秋葉原かといえば、ゴーゴーカレーにNくんを連れて行きたかったからだ。そんなわけで、今回の散歩は秋葉原→豊洲というコースとなった。スタート地点の秋葉原というのは僕の提案で、そのコースはNくんが考えるということとなった。たぶんWEBで探してもこういう散歩コースは出てこないだろう。前代未聞である。とにかくかなりの距離なのだ。しかも、その途中には興味深い路地や通りが多数あるのだが、そういう場所も素通りに近い形で歩き続けた。

まあ、次回の散歩の予習といったところかもしれない。なんといってもゴールが日本で最初にできたセブン-イレブンということで、これもまたこれまでの散歩とは少し趣の変わったものとなったのである。
セブン-イレブン1号店のオープン当時。今回の散歩はこの1号店を探しにいくのだ(画像提供:セブン&アイ・ホールディングス)

ゴーゴーカレーでお昼を食べて、いざ散歩

ゴーゴーカレーは金沢カレーだけれど、1号店 は新宿にある。秋葉原もかなり早くからあったと思う。こちらで有名なのはトッピング全部載せなのだ。値段は1000円。載っているのは、ロースカツ、チキンカツ、ウインナー(2本)、エビフライ、ゆで玉子である。フライはカリッとあがっていてなかなかおいしい。ルーはドロリとしたもので、コクがある。それに千切りのキャベツがたっぷり。
ご飯も多めでボリューミー!

メジャーカレー 1000円 オールスターのトッピング!


秋晴れの日、午後1時を少しまわったところで、Nくんが現れた。
「なかなか会社を出られなくて」
 
 
 
と言う。さっそく、店内へ。
もう1時をまわっているというのにまだお客さんはたくさんいる。30代の男性の率が高い。
というか全員男子だ。
僕はロースカツ、Nくんはもちろんメジャーカレー。
ゴーゴーカレーの人気メニューだ

ロースカツカレー からっと揚がったカツがおいしい

店を出て、Ñくん、開口一番に
「これまで増田さんが紹介してくれたお店で一番おいしかったですよ」
という感想。ご飯の量は大盛りはもちろん、少ない量も選べる。ちなみに石川県発祥のカレーチェーンで名前が「ゴーゴー」ということで、察しのいい方はおわかりだと思うが、ニューヨークヤンキースの松井秀喜選手の背番号55からきている。
松井選手がホームランを打った日にはトッピング無料券がもらえるというサービスもある。

さて、お腹もいっぱいになったことで、豊洲をめざして歩き始める。結論から言うと、かなりの距離であり、少し無謀なルートであった。なんせ、スタートが午後1時半。秋の日はつるべ落としというが、日の暮れが早い。僕たちはずんずん歩くことにした。

馬喰町から浜町へ江戸をしのぶ

繊維問屋街横山町の風景。法被や作務衣など、ちょっと通好みな衣服も並ぶ
秋葉原駅前より、高速道路が上を走る昭和通を南へ歩き始める。岩本町に出る。看板があった。「既製服問屋街発祥の地」とある。中身を読んでみると、江戸時代、神田川沿いの土手であったこの一帯には、古着を売る簡素な露店がたくさんあったのだという。明治になり、「岩本町古着市場」が開設され、東京の衣類産業の中心になっていったそう。もちろんまだその頃は和服が中心だったが、それが徐々に洋服へと変わり、昭和30年代、この場所は洋服の一大生産地となったのだ。

昭和通から靖国通りを左に曲がり、歩を進めて、馬喰町、横山町に出ると、なるほど今でも衣料問屋が多くある。店舗風にはなっているもののたいていは一般ユーザーではなく小売店相手に商売をしているのである。ただ、このあたりは江戸時代はまったく違った風景だった。特に馬喰町は、江戸の一大旅館街があったところである。地方からの商人が泊まる旅館が多く、ここへ商品を見せに行く問屋街が横山町に広がったのだそうだ。東京駅ができ、車や鉄道が移動の手段になってから、旅館は減り続け、今はその面影さえ残っていない。

靖国通りを右に折れると、昔はここに旅館が軒を連ねていただろう、問屋街が続いている。今度はこのあたりをじっくり歩いてみたいものだ。が、今日は先に進もう。

地下鉄浜町駅の看板が見えてきた。その先にはいくつもの女優さんの名前の幟が見える。明治座だ。明治座に隣接するのが浜町公園である。秋晴れで気持ちいいので、少し中に入ってみる。広くきれいな公園で、散歩コースにもいい。加藤清正を祭った神社やスポーツ施設、子供が遊べる芝の小山や遊具もある。

浜町公園にて。ラジオ体操が行われているのか、体操舞台がぽつんと佇む
公園内には足裏のツボを刺激する「健康こみち」というのがあった。靴を脱いで歩いてみる。Nくんは顔をしかめらながら、

「痛い、痛い」

と連呼している。さて、まだ半分も歩いていない。まだ先は長いぞ。

隅田川を渡り、「のらくろ~ド」を横目に見て進む

新大橋。隅田川上に架かり、今も昔も交通の要所
浜町公園の裏には隅田川が流れている。僕たちは新大橋を渡る。隅田川の水面は灰色である。橋梁には「新大橋の由来」というタイトルの鉄製のリーフレットが貼り付けてある。それによれば、新大橋が最初に架けられたのは元禄六年(1693)、今より下流に架けられたのが最初。大橋と呼ばれた両国橋の次に架けられたので、新大橋という名前になったそうだ。江戸時代には何度も流されたそうだが、明治になって鉄製の橋になった。「明治四十五年に架けられた」というつぶれかけて文字も橋梁にはあるが、その橋がいまここにあるわけではない。今の橋は昭和52年に架けられたのだ。

江東区森下にある「のらくろ~ド」。のらくろの作者、田河水泡氏にゆかりがある土地なので、できたらしい
おもしろいのは、リーフレットのひとつに絵が紹介されている。安藤広重の絵があった。あ、あの有名な夕立の絵だ。橋を渡る人たちが突然の雨に慌てている図。あの絵はこの橋だったのか橋を渡り、中央区から江東区へ歩を進める。ほどなく地下鉄森下駅が見えてくる。ここを右に曲がっていくと「のらくろ~ド」という商店街があった。商店街には漫画「のらくろ」のキャラクターがいっぱいである。Nくん会社へのお土産としてのらくろのラムネ菓子を買っている。親切な商店主が、この先に「田河水泡・のらくろ館」があると教えてくれた。寄ってみようかとNくんに言うと、

「やめましょう、まだ先は長いんで」

シーラカンスのオブジェ。なぜここにあるのかは判明せず……
と言う。あ、そうだ。このあたりが半分くらいか……。もっと来ているか。とにかくかなり疲れてきた。また橋がある。小名木川にかかる西深川橋である。ユーモラスな茶色い魚のオブジェがどーんとある。橋そのものは青く美しい。

すぐにもうひとつ川がある。仙台堀川である。しかし、この周辺には「芭蕉記念館」「深川江戸資料館」もあるのだが、寄れなくて残念。さらに先へ進む。

門前仲町から越中島へと抜ける

江東区塩浜地区は運河が走り、今でも船が行き来する生きた運河だ
陽が傾きかけている。ここまで休憩なしでノンストップで歩いているのだが、まだ目的地は先である。門前仲町に出た。ほんの少し前の散歩でここにきたのだが、思わずNくんが、

「懐かしい」

と言った。ちょっと不思議な気分。富岡八幡宮の境内では骨董市とフリーマーケットが行われていて、これがなかなかの盛況であった。ゆっくり見たかったが、今回は先を急ぐ。

「もうすぐですよ、ここの道の向こう側かな」

通りに出てNくんが明るい声で言う。そうか、もうそんなに歩いたのか。ゴールが近いと元気になる。が、実際はぬか喜びだった。

越中島を越え、いくつか橋を渡った。江東区というのは橋の多い場所である。とは言いつつも、必ずしも川があるというわけではない。琴平橋という橋の下には川はすでになく、今は公園になっていたりする。蛤橋を渡ったところに住居表示があった。

「あー、やっときました。塩浜にあるんですよ」

なるほど、住居表示には塩浜とある。しかし、豊洲ではなく、塩浜なのか。まあいい。と、Nくんは資料を見ながら、

「このあたりなんだけどなぁ」

と悩んでいる。セブン-イレブンがないのだ。セブン-イレブンの広報の人に聞いた住所はこのあたりなのだと悩むNくん(このあと、単にNくんの勘違いと判明!)。バス停にご婦人が2名いたので、

「このあたりにセブン-イレブンはありますか」

と聞いてみた。すると、

「このあたりにはないですね……。スーパーならそこにありますけど」

と指差す。うーむ、僕たちはセブン-イレブンに行きたいのである。

「あー、それだったら、この先を曲がってズーッと行ったところにありますけど、距離的にはかなりありますよ」

と言うではないか。

「あの、そこはセブン-イレブンの1号店なんでしょうか?」

と聞くと、

「あー、そうそう。1号店ですよ」

とのこと。このあたりでは有名なのだ。お礼を言って立ち去ろうとすると、

「歩きですか? 遠いですよ」

とおっしゃる。

「ええ、歩きなんですよ」

と力弱く、答えた。

これが日本で最初にオープンしたセブン-イレブンだ!

 
(上)現在のセブン-イレブン1号店。(下)オープン当時のセブン-イレブン1号店。姿は変われど、活気に満ち、営業していた(画像提供:セブン&アイ・ホールディングス)
セブン-イレブンが日本にもできたという話を聞いたのは高校の頃だったろうか。友人が自慢げにセブン-イレブンってなんでそういう名前か知っているかとクイズのように聞いてきた。

「知らんのう」

という僕に友人は

「朝の7時から夜の11時まで開いちょるからそう言うんじゃ」

山口県の高校生だった僕はえらく驚いた。当時はそういう時間に店を開店していることさえ、驚くべきことだったのだ。昭和49年5月15日に東京都江東区豊洲に「豊洲店」が開店したという記述がセブン-イレブン・ジャパンのWEBサイトを見ると出ている。僕自身が実際のセブン-イレブンを見たのは大学で大阪に行ってからのことだ。今では僕の実家がある山口県も多くのセブン-イレブンがある。そして、24時間営業のところも多い。東京の僕の家からすぐのところにもあり、毎日のように利用している。

やっと豊洲のセブン-イレブンに到着。さっき道を聞いてから15分くらい歩いただろうか。買い物をして、お店の人にここが1号店なんですってね、と確認してみると、笑顔で「そうです」と言ってくれた。ホッとする。陽は暮れていた。当たり前だが、どこにでもあるごく普通のセブン-イレブンである。ことさら1号店であることを主張しているわけではない。でも夕景に佇むセブン-イレブン豊洲店はまぶしかった。

Nくんと珈琲館という、これもチェーンの喫茶店に入る。ケーキにコーヒーを注文。

「そこのセブン-イレブンは1号店なんですよね」

としつこく確認。

「ええ、ええ、そうみたいですねぇ」

とマスターがおっしゃる。ところで、この珈琲館は何号店くらいなんだろうか。マスターは笑いながら、

「うちは200なん軒目かですよ。400いくつ……、500近くある店舗の真ん中くらいですか」

と教えてくれた。なんだかわからないがホッとした気持ちになった。



(おまけ)主要コンビニエンスストア1号店情報(各社広報に確認)
■セブン-イレブン・ジャパン 東京都江東区豊洲4-6-1 現在も営業中
■ローソン 大阪府豊中市南桜塚4-3-36 現在も営業中
■サークルKサンクス 
サークルK:愛知県名古屋市天白区大根町48番地 現在も営業中
サンクス:宮城県仙台市青葉区八幡1-1-1 現在は閉店
■am/pmジャパン 神奈川県横浜市港北区日吉本町1-17-25 現在も営業中
*ファミリーマートに関しては、未回答のため未掲載



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