トレイルランナーは「機能性タイツ」を知っていた

タイツの選び方で記録も、つらさも違ってくる
タイツの選び方で記録も、つらさも違ってくる
マラソン大会でロングタイツを着用するランナー、たくさん見かけます。でも中には自分の能力に合ったタイツを着用していない人もいるようです。「みんな着ているから、それがいいんだろう」といった意識で選んではいませんか? 

タイツにもさまざまな製品がありますが、筆者が注目しているのは機能性タイツです。機能性タイツを普及させた功労者は、ワコールのCW-Xではないかと思いますが、日本山岳耐久レースなどでは早くから着用が普及していました。夜間の山岳レースなので保温という目的もありましたが、下りが楽になるという特性が評価されたためだと思われます。登山者は仕様アイテムに機能を求めます。その登山者の間ではCW-Xの膝のサポート機能が認められており、ヤマヤも多いトレイルランニングに早く広まったと考えられます。

雨の東京マラソン完走率を上げた功労者

完走ジョガーを助けたのはタイツの保温機能だった!?
完走ジョガーを助けたのはタイツの保温機能だった!?
フルマラソンでの着用の普及はやや遅れていたと思いますが、氷雨の中で行われた第1回東京マラソンでは、遅いランナーはタイツ着用者が大半でした。ロングパンツをはいていなければスローランナーには耐え難い気候だったので、タイツが完走率を上げた大きな要因になっていたかもしれません。

こうしたタイツ着用者が増加するのに併せて、ランニングタイツが大いに出回り始めましたが、次第に機能をウリにする製品が増えてきました。今回は、機能に焦点を当てて、ランニングタイツを見ていこうと思います。

ランニングタイツに求められる機能

「ワコール CW-X スタビライクスモデル ロング」15,750円 股関節サポートを基本に、膝関節の安定を追求。さらにふくらはぎの筋肉を下から支え上げるようにして循環機能をサポートしている。爽やかな着用感も印象的。膝下までのセミロングタイプもある
「ワコール CW-X スタビライクスモデル ロング」15,750円 股関節サポートを基本に、膝関節の安定を追求。さらにふくらはぎの筋肉を下から支え上げるようにして循環機能をサポート。爽やかな着用感も印象的。膝下までのセミロングタイプもある
マラソンのパフォーマンスを上げるタイツの機能には以下のようなものがあります。

・保温
・関節部位(足首・膝関節・股関節)、筋肉部位(アキレス腱・ふくらはぎ・大腿部)など故障部位のサポート
・姿勢の保持
・ブレの軽減
・血液循環促進
・反発力の増加

それぞれどのような機能が求められるか説明しましょう。わかっていると自分に必要な機能なのか否か、また商品を選択するときのチェックポイントになります。

保温性:冬温かく夏涼しい

1枚余計に肌につけるので、それだけ寒さを防ぎます。その能力は素材次第。夏場は暑すぎるのではないかと懸念される人もいるかもしれませんが、表面積を広げるタイプの素材であれば、吸湿放散作用によってかえって皮膚温を下げる作用が働きます。それでいて寒いときは汗も少なくさらりとしているので、寒さを感じさせません(メッシュ素材だとさすがに寒いですが)。

故障部位のサポート:レベルによって選ぶ

「アルケア リガード CG タイツ-EX 33」18,900円 足首部のサポート機能を持つタイツ。膝、腰の安定感は随一と思える。フルマラソンを走るには強力すぎるきらいがあるが、故障再発の心配が高い人にはこのくらいのサポート力が必要かもしれない。足首から太ももにかけて徐々に圧迫力を弱める段階的圧迫は、疲労時の血液循環を促進して疲労を軽減する
「アルケア リガード CG タイツ-EX 33」18,900円 足首部のサポート機能を持つタイツ。膝、腰の安定感は随一。フルマラソンを走るには強力すぎるきらいもあるが、故障再発の心配が高い人にはこのくらいのサポート力が必要。足首から太ももにかけて徐々に圧迫力を弱める段階的圧迫は、疲労時の血液循環を促進して疲労を軽減。同シリーズで、段階的圧迫システムとアーチサポート機能を持ったハイソックスも販売。こちらはフルマラソン向き
故障部位は大きく関節部と筋肉部に分けられます。タイツによるサポート機能は関節部位ではテーピングの代用となります。筋肉部位ではサポーターの代用として働きます。テーピングに比べれば布地の伸縮性がある分だけ能力は落ちることになるのはやむを得ません。痛みを感じているようならば、本来運動すべきではないですが、それでもというときはテーピングと併用すべきでしょう。

再発の予防効果を期待するときは、程度に応じて選ぶことになります。

姿勢の保持:脚筋力の弱い初心者ランナーに

「アディダス テクフィット」 パンツは腰を締め、シャツは肩を引かせて理想型を生み出す。着用時には、腰の通過に一苦労。かなり締め付け感があるので、メタボ体型の人には着用が難しいかも
「アディダス テクフィット」 パンツは腰を締め、シャツは肩を引かせて理想型を生み出す。かなり締め付け感があるので、メタボ体型の人には着用が難しいかも
よい姿勢を保つことができれば、疲労発生の遅延効果や呼吸を楽にする効果が期待できます。最近増えているタイツは、骨盤を安定させたり角度を矯正するというもの。猫背になるのを防ぎます。足首や膝関節、股関節部のコンパウンドも姿勢の保持をサポートし、フルマラソン後半の疲労によるふらつきから救ってくれます。

着地時にふらつくと重心の乱れを補正するため、余分な筋肉の運動が必要になります。推進力も弱まります。脚筋力の弱い初心者ランナーを救ってくれる機能です。

これとセットで上半身の姿勢を保持するタイプが見られます。たすき型にバンドがついたシャツにより、胸郭を開き呼吸を楽にします。初心者ランナーは、つい背が丸まって胸郭が狭くなりがちです。こうした機能性シャツの併用もオススメします。本当は、腹筋、背筋をサポートするコルセット状のバンデージがほしいところですが、呼吸を苦しくしてしまうので、それは実現不可能のよう。腹筋背筋は自分の力に頼るしかありません。

ブレの軽減:筋肉や脂肪のブルブルが止まる

「アシックス TI ロングタイツCF」11,550円 骨盤の直立安定、脚の側方安定性、大腿部の振動抑制、膝のへの着地衝撃緩和効果を実現。ソックス、シューズとのコンビネーションで、膝にかかる衝撃度を60%軽減(同社従来タイプのタイツ比較)している
「アシックス TI ロングタイツCF」11,550円 骨盤の直立安定、脚の側方安定性、大腿部の振動抑制、膝のへの着地衝撃緩和効果を実現。ソックス、シューズとのコンビネーションで、膝にかかる衝撃度を60%軽減(同社従来タイプのタイツ比較)している
大相撲の取り組みスローモーションビデオで、お相撲さんのお尻がブルブルと波を打っているのを見たことがありませんか。あのような筋肉や脂肪の振動は痩せたランナーにもあります。「30kmの壁を突破する下り坂トレーニング」で説明しましたが、ランナーの筋肉は緩んだり、緊張したりという行為を繰り返しています。腿に手をあてて走ってみればすぐにわかります。坂道を下ると、その震えがより強まることがわかります。

特に筋肉の多い大腿筋はよく震えます。大腿筋部が鍛えられていないと、より震えることになります。鉄筋が細い建造物が地震に弱いのと同じことで、早く痛んでしまいます。早々に走りがつらくなるわけです。この筋肉部を締めて強度を増す機能をうたった製品が何点か登場しました。初心者フルマラソンランナーにはとてもオススメの機能です。

血液循環促進:どうにも動けなくなったなど、疲労回復に

「アルケア リガード CG-2」3,360円 段階的圧迫システムとアーチサポート機能を持ったハイソックス。フルマラソンやレース後の疲労回復向き。同様製品にスキンズ製もある
「アルケア リガード CG-2」3,360円 段階的圧迫システムとアーチサポート機能を持ったハイソックス。フルマラソンやレース後の疲労回復向き。同様製品にスキンズ製もある
「体内の血液循環は心臓が担っている」これでは正答率は50%。心臓だけでなく筋肉の伸び縮みによって血管が拡張圧迫を繰り返すポンプ作用を行い、血液の循環を促進しているのです。つまり、疲労して筋肉の伸縮作用が弱まったら血液の循環量が減り、より疲労が進むという負の連鎖に陥ります。

力がなくなるとは、筋肉が縮みづらくなるということです。そこで、筋肉全体に圧力をかけて筋肉の収縮をサポートしようという機能。この機能は、相当に後半動けなくなってしまう人に対して、レース後の疲労回復に役に立つ機能といっていいでしょう。

反発力の増加:大リーガー養成ギプスの反対

「アディダス テクフィット」 銀色部分「TPUパワーバンド」は筋肉の位置と合わせてあり筋出力を増加する。特にジャンプ力とパワーは4~5%の出力アップ。ファブリック部分は圧迫力をもって血液循環の促進と振動抑制に働く。スクワットのような動きがとても楽になる。体型に自信のない方はインナーとしての着用をオススメ
「アディダス テクフィット」 銀色部分「TPUパワーバンド」は筋肉の位置と併せてあり筋出力を増加。特にジャンプ力とパワーは4~5%の出力アップ。ファブリック部分は圧迫力をもって血液循環の促進と振動抑制に働く。スクワットのような動きがとても楽。体型に自信のない方はインナーとしての着用を
筋肉は収縮するときに力を発揮するので、大きな収縮を必要とする部位に収縮力の強いバネのような弾性素材を使った製品が出てきています。ただし、伸ばすときには反作用として働くので、あまり強くはできないでしょう。マラソンのような瞬発力を必要としない運動にはあまり向いていませんが、10kmぐらいの距離であれば動きがよくなることを実感できると思います。短距離走や跳躍、投てき、バスケット、バレーボール、サッカーなどジャンプ要素の強いスポーツには大いに有効と思われます。

各社ランニング機能性タイツ徹底解説」では、有力商品のそれぞれの特徴を、着用インプレッションを加えて子細に検討してみます。



<関連リンク>
30kmの壁を突破する下り坂トレーニング
アシックス ランニングとはカケルことだ。
アルケア リガード
ワコール CW-X
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