パーシモンといえば、本間ゴルフ

一世を風靡した本間パーシモン「hiro honma」。写真はツアーモデルで、かなりのディープフェース
本間ゴルフといえば、国内のクラブメーカーの中でもかなり異質な存在。販売はほとんど直営店によって行われ、長らく業界団体にも所属していませんでした。内外の大多数のゴルフメーカーでは、中国や東南アジアでのゴルフクラブ生産が進む中、山形県酒田市にある、世界でも有数の規模を誇る自社工場による生産にこだわっています。

とりわけ高級品のイメージの強いメーカーであり、現在も100万円を超えるような高額なラインナップを揃えています。契約プロの活躍もあり、韓国や中国でのブランドイメージは大変高く、テーラーメイドやナイキといったグローバルブランドにも負けないゴルフクラブの代名詞的な存在となっています。

そんな本間ゴルフには、いまだにパーシモンによるクラブのイメージが強いのではないでしょうか? ご存知のない方のために、簡単に紹介すると、パーシモンとは柿の木材のこと。木材の中でも硬質で重量のある素材で、19世紀の昔から、金属製のクラブが登場するまでの長い間、ゴルフクラブの主流として活躍しました。現在も、ドライバーなどのことを“ウッド(木)”と呼ぶのは、その名残。

日本のゴルフクラブは輸入品からスタートしましたが、国内でのゴルフ普及に伴い、国産のゴルフクラブが少しずつ登場するようになりました。そんな中、登場したのが、本間ゴルフです。品質の高さと美しい成型や仕上げが評価され、パーシモンといえば、本間と多くのゴルファーに認知されるにいたりました。「extra90」「hiro honma」などの人気モデルを記憶されているベテランゴルファーも多いでしょう。

本間のパーシモンで育ったツアープロも大変多く、チタンヘッド全盛の現代においてもその形状などが多く踏襲されています。その技術は、酒田工場で引き継がれる一方で、ブリヂストン「ACCESS」ブランドなどで知られる沼沢雄二氏のようなクラブデザイナーや職人などを輩出しました。紛れもなく、日本のゴルフを一面から支えていたメーカーといえるでしょう。

しかし、ウッドクラブの金属製ヘッドへの転換は押しとどめようもなく、ステンレス素材が登場した頃はツアープロも半分くらいはパーシモンを使用していたものの、チタンヘッドが全盛となる90年代半ばにはパーシモンを使用するプロはほとんどいなくなりました。

アマチュアゴルファーにおいても同様で、多くのゴルファーに愛され続けたパーシモンも次第にバッグから抜かれることとなり、本間のパーシモンクラブも以前のような存在感を失うこととなりました。

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本間パーシモンの行方

山形県の本間ゴルフ酒田工場に、麻袋に詰められた大量のパーシモン材が今も残っていた…
他のゴルフメーカーが、早々にチタンやステンレス製のクラブへと移行する頃、本間はかなり長期間パーシモンクラブの製造を継続。その中で、ヘッドの大型化、低重心化など、世界的にも例をみないパーシモンウッドの進化があったのですが、残念ながら木材→金属という時代の大きな流れには逆らえず、遂に本間ゴルフでもパーシモンウッドの製品ラインナップがほとんど行われなくなりました。

さて、今回ガイドは、山形県にある本間ゴルフの酒田工場を見学する機会に恵まれました。

十分に乾燥し、大まかに削られたパーシモンブロック。ここで木目や染みの有無などを管理する。天然素材だけに、使用できる質の高い素材は数少ない
実は以前から、ウッドの生産が終了した後、パーシモンの大量の原木が本間ゴルフ酒田工場に眠っているという噂を聞いていたのですが、数年前に株主が変わり、創業者一族から経営が変わった際にすべての原木を焼却したという噂もこれまた聞いていて、どうしても事の真偽を確かめたいと思ってもいました。

パーシモンの原木は、アメリカ、ミシシッピ川の周辺に樹齢数十年から百年を超えるものをヘリコプターで上から狙いを定めて、伐採するといいます。品質の良さはもちろん、木目の良し悪しも見極めるため、大木からクラブに出来るのはほんの数パーセント。その選りすぐりのパーシモン材が、本間では大量に保管されていたといいます。

もし、焼却されていたとしたら、とても悲しいことです。結論から言うと、パーシモンの原木は、焼却されることなく、本間ゴルフに大切に保存されていました。何といっても12月の山形。凍えるような寒さの巨大な作業棟の中に、まさに壮観としか言いようのない、うずたかく積まれたパーシモン素材の山が静かに保管されていたのです。

工場の中にまで寒風が入り込むような寒さの中で、美しい木目を描き、引き締まったパーシモンブロックを手に取るとずっしりと重く、自然だけが生み出しえる確かな手ごたえを感じたような気がしました。

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パーシモンの現在

本間ゴルフのパーシモン加工技術がいきるパークゴルフ用クラブ
オーバーホールに出されたパーシモンウッド。新品同様に生まれ変わることも可能に
ガイドが、特別に譲ってもらったパーシモンブロック。自分用のパーシモンウッドを作りたくなります
以前は隆盛を誇った本間ゴルフのパーシモンウッドは現在はほぼ生産されず、パーシモン素材はパークゴルフ用クラブなどに使われています。

パークゴルフとは、6cmと大き目のボールを使ってロフト0度のクラブひとつを使ってプレーする競技で、既に100万人の愛好者がいるといいます。パークゴルフ用のクラブであっても、そこは本間ゴルフ。ヘッドは木目にこだわった美しい仕上がりで、シャフトには、ゴルフクラブ同様4軸カーボン繊維を使用した「ARMAQ(アーマック)」を採用しています。

パーシモンの良いところは、オーバーホールが可能である点かもしれません。工場見学に行った際も、修理の必要なパーシモンクラブが多く集まっていました。数年使い続けボロボロになったクラブを塗りなおし、糸を巻きなおし、新品同様に生まれ変わります。あまり知られていませんが、見た目の“顔つき”に削りを入れるなど、金属製ヘッドには難しい、さまざまな調整がパーシモンであれば可能になります。

ガイドは、無理にお願いして、パーシモンブロックを譲っていただきました。もちろん、ここからクラブになるのには、まだまだ多くの職人さんの手を介しての無数の工程が必要になります。

道具としての性能の面からも、工芸品としての側面からも、パーシモンウッドにはやはり独特の魅力があると感じます。現在では、なかなか入手は難しいのですが、未体験のゴルファーにも是非パーシモンの良さを体験してもらいたいものです。



<関連リンク>
本間ゴルフ(公式サイト)
レア度高し!歴史を刻むプレミアムクラブ1(All Aboutゴルフ)
喜多和生のグリーンサイド(日経ゴルフガイド)
国際パークゴルフ協会
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