クラブフェースの溝規制が2010年からスタート

各メーカーがスピン性能を高めるために様々な工夫をしているクラブフェースの溝。2010年から新ルールにより規制される
昨年2008年8月に世界のゴルフルールをつかさどるR&Aは、2010年1月1日から施行されるクラブフェースの溝の新しい規則を発表しました。
(※注 このガイド記事の後、2009年3月26日にルール施行が、1年間延期になることがR&Aから発表。ルール変更は、2011年1月1日から施行。)

R&Aから発表された規則変更の理由は次のようなものです。

現在のクラブでは、ラフからのプレーと、フェアウェイからのプレーとを比較してその難易度に明確な差が必ずしも生まれていないということが議論されていました。そこで、溝の規則を変更することにより、ラフからのプレーに高い技術を要求することによって、ゲームの中でのショットの正確性の重要さを高めることにしました。

つまり、この規則は2001年あたりから急速に進化したウェッジのスピン性能を抑制することが目的だと考えられます。クラブフェースに鋭い溝を設けたウェッジは、当時、同じように普及したウレタンカバーボールとあわせて使うことで、これまでにない強烈なバックスピンをかけることが可能になりました。

一般的にラフからのショットでは、クラブに芝がからみつき操作が困難になります。
また、フェース面に芝が挟まるため、フェアウェイからのショットに比べスピンがかかりにくいという特徴があります。そのため、フライヤーと呼ばれる飛びすぎのミスが出たり、グリーンにオンしてからのランが多くなり、距離のコントロールは難しくなるのです。
それはラフに入れてしまったためのペナルティと考えられています。

もし、クラブの性能によってラフからのプレーが容易になれば、ラフに入れることがミスにならなくなり、フェアなゲーム性が失われるというのが、R&Aの考え方です。以前も溝の規制を巡って、PING社とUSGAとの間で長い訴訟がありましたが、その際も根底にあったのはこうしたフェアネスへの姿勢です。

今回は、2010年から施行されるフェース面の溝規制を紹介します。

>>次は、フェース面の溝規制の中身>>

クラブフェース面の溝規制の中身とは?

フェース溝の断面図。今回のルール変更で最も重要と考えられるフェース溝の鋭さの規制は、図の"r"の丸みに基準を定めたもの
今回のフェース面の溝規制は要約すると、溝の鋭さを制限することと、溝の容積を制限することの2点です。

スコアラインと呼ばれるフェース面の溝が鋭いとスピンがかかりやすいというのは、ゴルファーであればよくイメージできるのではないでしょうか? 触ると手が切れそうなくらいに鋭い溝が入っていると、いかにもボールに喰いついてスピンがかかりそうな感じがします。

クラブフェースの溝は鋭さのほかにも、溝の幅、溝の深さ、溝の間隔などが全てスピンに影響を与えると言われています。そのため今回の規制ではそのすべてに数値が設けられています。

少し複雑ですが紹介しましょう。はっきりいって肉眼で判別することは不可能なので、参考程度に読み飛ばしてください。

溝の幅は、測定された溝の幅の50%以上が0.035 インチ(0.889mm)未満。またひとつでも0.037 インチ(0.940mm)を超えてはいけません。溝の幅は、30度測定法によって測定されます。溝の深さは、測定された溝の深さの50%以上が0.020 インチ(0.508mm)未満。またひとつでも0.022 インチ(0. 559mm) を超えてはいけません。

溝の間隔は、測定された溝の間隔の50%以上が測定された隣接する溝の最大幅の3 倍よりも小さい場合、そのクラブは不適合。溝の間隔がひとつでも測定された隣接する溝の最大幅の3 倍から0.008 インチ(0.203mm)を引いた値よりも小さい場合、そのクラブは不適合。測定された溝の間隔の50%以上が0.075 インチ(1.905mm)未満。またひとつでも0.073 インチ(1.854mm)よりも小さい場合は違反クラブとなります。

また、もっとも重要な規制と考えられる溝の鋭さの規制は、2サークル法によって説明されています。以下に引用しましょう。

(フェース溝のふちの丸みは、)2 サークル法によって決定される少なくとも0.010 インチ(0.254mm)の有効半径を有する円形状でなければなりませんし、0.020 インチ(0.508mm)より大きくてもなりません。下記の2つの基準が適合性を決めるために用いられます。

3.6.1. 上側の溝の縁の50%以上、あるいは下側の縁の50%以上が2 サークル法の要件を満たさなかった場合(10 度の角度についての許容あり)、そのクラブは不適合です。

3.6.2. 溝の縁がひとつでも外側のサークルの外(付録B 参照)に0.0003 インチ(0.0076mm)を越えて突き出ている場合、そのクラブは不適合です。


文章だとややわかりにくいですね。2サークル法による溝規制の詳細を知りたい方は、(財)日本ゴルフ協会(※PDFファイル)のサイトで詳細に解説されています。この規制により、これまで「角溝」と呼ばれたふちの切り立ったフェース溝を入れることは出来なくなりました。

>>次は、施行時期について>>

ルールの施行時期は?

抜けを良くするためソール形状が工夫されたウェッジ。スピン量は溝以外の要素でも左右される。※写真はキャロウェイ「X FORGED」
今回発表されたフェース溝の規制は、2010 年1月1日から施行されることが既に決まっています。それらはクラブ製造業者にむけて告知されたもので、一般ゴルファーを対象にしたものではありません。各ゴルフメーカーは、2010年からいわゆる角溝ウェッジの製造が禁止されます。

既存のクラブで仮に新ルールに違反するものがあったとしても、一般ゴルファーは2024 年まで使用できることになっています。15年の施行期間を定められたということ。さすがに10年以上同じウェッジを使用することは稀だと考えられるので、実はほとんどのゴルファーがこのルール規制を考慮する必要はありません。その点は、ドライバーのSLEルールの際とは大きく異なる点です。

ゴルフメーカーは2010年から新ルールに適合したクラブを製作するでしょうから、2010 年以後のモデルに買い換えると自動的に新ルール適合となると思われます。プロのツアー競技やJGA 競技では、早ければ2010年から新しい規則に適合したクラブに制限する競技が開催されるでしょう。ウェッジのスピン性能は、溝だけでなく、フェース面の平面精度、ソールの抜けの良さなど多くの要素によって決まります。しかし、やはり溝はその中でも特に重要な要素。ルール規制後のウェッジのスピン性能が既存のものより落ちてしまうことは十分考えられます。

ちなみにゴルフメーカーは、2009年中に製造した角溝ウェッジを2010年以降に販売することは許されています。そのため、2009年に新ルールでは不適合になるクラブを大量に製造するゴルフメーカーが現れるかもしれません。

今回の溝規制は、主にメーカーに発信されたもので、まだそれほどゴルファーの認知は進んでいないようですが、雑誌などを通じ、今後さらに関心が高まるでしょう。

ゴルファーは、改正されるルールをよく理解し、それを遵守する姿勢が求められます。クラブへの理解を深めるためにも、一度アイアンの溝を研究してみるのもいいかもしれません。



<関連リンク>
2010年の溝の規則(日本ゴルフ協会)
ゴルフ規則(日本ゴルフ協会)
2008年ゴルフルール改正をチェック!(All Aboutゴルフ)
ついに施行!SLEルールを最終確認1(All Aboutゴルフ)
ついに施行!SLEルールを最終確認2(All Aboutゴルフ)
施行間近!SLEルールを知ってますか?(All Aboutゴルフ)
ゴルフ規則裁定集(日本ゴルフ協会)
ゴルフ規則 付属規則II クラブのデザイン
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。