ゴルフは道具を使用するスポーツ。初心者からプロまで、どんなゴルファーにも道具には好みやこだわりがあります。そんな中でもクラブを収集したり、実際に使用することを喜びとするゴルフクラブマニアの間で取引される希少価値の高いプレミアムクラブが存在します。前回に続き、そんなコレクションアイテムをズバリ紹介します。

名手を支えた名器
Wilson 8802

「Wilson 8802」。ベン・クレンショーの愛器として有名だが、そのほかにも多くの名手が使用(画像をクリックすると拡大します)
ゴルフの歴史のなかで、パターの名手と呼ばれる選手が多く存在します。彼らは一部の例外を除くと、同じパターを長期間使用しているという特徴があります。 例えば、杉原輝男プロや青木功プロはその代名詞とも言えるカマボコ型パターやT字型パターを20年以上使用しました。最近ではタイガー・ウッズがスコッティーキャメロンのピン型パター(NEWPORT II)を数年間ずっと使用していますね。 そうした切っても切れないプロとパターの中でもとりわけ有名なのが、ベン・クレンショーの使用したパター「Wilson 8802」。体格的には恵まれていないクレンショーですが、誰もが認めるパッティング技術の高さでマスターズ2勝をあげたトッププレーヤーとなりました。クレンショーが少年時代から愛用した「Wilson 8802」は、「リトル・ベン」という愛称で呼ばれています。 「Wilson 8802」は復刻版が大変多く、実際にゴルフ場で使用しているゴルファーを見かけることも多いですが、たいていは復刻版です。1963年に発売された初期モデルが最も価値が高く、一時期は10万円近い値段で取引されていました。現在はコンディション(クラブの程度)の良いものが少ないことと、L字型パターの人気が落ちていることもあり、流通価格はずいぶん下がってしまっています。
「Wilson8802」初期モデルのグリップエンドにあるフラッグマーク
1963年初期モデルと復刻版の違いはなかなかわかりにくく、ガイドも習得するまで何本も見比べた経験があります。簡単な見分け方としては、グリップエンドについているマーク。復刻版は「W/S」というエンブレムが入っていますが、オリジナルの初期モデルにはピンフラッグのマークがあります。グリップを交換されたら終わりなので完璧な判別方法ではないですが、わかりやすい目安になるので、クラブに出会ったらまずグリップエンドをチェック。
「Wilson 8802」の形状は、まさにクラシックスと呼べるもので、その後のL字型パターに大きな影響を与えています。現代のパターデザイナーの製作するL字型パターには、フランジの形状やネックの曲がり具合など「8802」のエッセンスが生きています。
>>次は、DESIGNED BY Arnold Palmer について>>

L字型パターの最高峰
DESIGNED BY Arnold Palmer

「DESIGNED BY Arnold Palmer」。実際にアーノルドパーマー自身のアイディアが盛り込まれている(画像をクリックすると拡大します)
「Wilson 8802」や1965年に発売された「Wilson Staff 8813」などL字型の名器を生み出しているウィルソンの最高峰パターが、「DESIGNED BY Arnold Palmer」。1962年から1年間だけ製造された、L字型パターの中でも文字通り王様的な存在です。

アメリカのゴルフ界では圧倒的に人気あるスーパープレーヤー、アーノルド・パーマーのモデルということが、人気の秘密ですが、フランジの形状、ヘッドの大きさ、ネックの曲がり具合などのバランスが良く、パターとしても非常に完成されていることが現在も評価の高い理由です。軟鉄素材とシャフトの硬さ、皮製グリップと相まって、現代のパターでは得られない非常に良い打感を得ることが出来ます。

現在は10万円前後くらいで流通していますが、コンディションの良い物があれば、もっと高値がつく可能性があるでしょう。復刻版も何種類か出ていますが1963年に発売された古い復刻版は価値が高く、数万円で取引されています。

>>次は、Tommy Armor IMG5 について>>

日本のゴルフ史を飾る
Tommy Armor IMG5

ジャンボ尾崎選手の全盛期を支えた「Tommy Armor IMG5」(画像をクリックすると拡大します)
アメリカでは、ウィルソンのL字型パターがその歴史的価値をリスペクトされマニアの間でも大変人気ですが、日本ではマグレガーのL字型パターが人気。これは何といっても不世出のプロゴルファー、ジャンボ尾崎選手が長年愛用したマグレガーパター「Tommy Armor IMG5」によるところが大きいようです。 日本では、「DESIGNED BY Arnold Palmer」と同様の人気があり、50万円以上のお金を出して購入したプロゴルファーがいたほどです。現在は価値が暴落してしまいましたが、7~10万円くらいで流通しているようです。 「Tommy Armor IMG5」は、ウィルソンに比べると面長でより角張った形状をが特徴的。さらに特徴的なのはネックで、ウィルソンよりもグースネック(シャフトの中心線よりパターのフェースが後ろにくる)になっています。「IMG」とは、「Iron Master Goose-neck」の略。アイアンでもグースネックの強いものを好むジャンボさんらしいチョイスです。 ジャンボ尾崎選手は「Tommy Armor IMG5」で劇的な勝利を何度も遂げていますが、最も印象に残る勝利といえば、1988年東京ゴルフクラブで行われた日本オープンでしょう。入れば14年ぶりの日本オープン優勝というわずか1メートルのパッティングの際、ジャンボ選手は腕のしびれを感じ、なんと2回仕切りなおし、3度目でようやくカップインさせ優勝を決めたのでした。決してかっこいい場面ではないかもしれませんが、一人の選手が全身に感じる一打の重みがどれほどのものなのかということを思い知らされるようなプレーで、日本プロゴルフ史に残る名場面の一つです。 クラブに造詣の深いジャンボ選手は、その後「WOSS MO-01」や「THE MAJOR JO-33A」など、「Tommy Armor IMG5」のノウハウを残しながらよりやさしいパターへとチェンジしています。
>>次は、ブリストル・スポーツマンについて>>

帝王が愛した名器
George Low Sportsman

クラシックパターの中でもっとも価値が高く、長年ゴルファーの憧れになっているのは、「George Low Wizard600 Sportsman(ジョージ・ロー ウィザード600 スポーツマン)」。ゴルフ史上最強のゴルファーであるジャック・ニクラウスが愛用していることで知られ、非常に希少である事から大変な価値がついているパターです。あの人気ゴルフ漫画『プロゴルファー猿』にも至高のパターとして登場しています。

ほぼ同形状の兄弟モデル「George Low Wizard600 Bristol(ジョージ・ロー ウィザード600 ブリストル)」も同様にクラシッククラブとして高い価値があります。以前、ガイドがブリストルを2度ほど扱ったことがありますが、そのときは数十万円ですぐ買い手がつきました。某テレビ番組では、250万円という鑑定額がついたこともあり、この金額も当然といえば当然。希少なため取引自体が少なく、相場の目安も出しにくいのが現状です。

そんな「ブリストル」もスポーツマンには到底かないません。世界にも数本しかないといわれるスポーツマンがもしあれば、どのくらいの値段がつくのか、正直予測するのは難しいです。

残念ながら手持ちの画像がなく、記事でお伝えできないのが残念。スポーツマンは、ガイド自身も見たことがないのですが、ブリストルを取り扱いしたときに写真が取れなかったことが悔やまれます。


L字型パターのフェース面。軟らかな素材を使用し独特の心地よいフィードバックがある
ここまで紹介した、ゴルフ史を彩るL字型パターは非常に軟らかく、ボールを打つと優しい振動が手に伝わります。かつての主流だった糸巻きバラタボールと軟鉄素材で製作されたこれらL字型パターとの組み合わせは、名手たちが愛してやまなかった極上の打感を持っています。


レベルを問わず、L字型パターを使用するゴルファーは少数となってきました。ですが、現在の3ピース、4ピースボールと異素材をインサートした最新パターでは得られない優れた部分がこれらのクラシックパターには確かに備わっているので、現代のクラブマニアの興味が薄れることはありません。

>>次は、PING ANSERについて>>

ゴルフ史におけるNo.1パター
PING ANSER

ヴィンテージパターの最高峰である「SCOTTSDALE ANSER」。40年間支持されつづけている稀有なモデル(画像をクリックすると拡大します)
PINGは、1959年にトゥとヒールに重量を強調した画期的なコンセプトを持つパター「1-A」を発表して以来、常にゴルフクラブの常識を変えてきたメーカーです。PINGの創始者カーステン・ソルハイムは、1966年にトゥヒールバランスコンセプトをさらに発展させたデザインのパター「ANSER」を製作。名前に迷い、「答えが見つからないんだ」と言ったところ、奥さんに「じゃ、アンサー(答え)にすれば」と言われ、名前が決まったというのは有名なエピソードです。アンサーのスペルは“ANSWER”ですが、刻印がパターに入りきらないため「ANSER」となり現在に至っています。

「ANSER」は現在も購入可能なモデルですが、最初期の1966年から67年の間につくられた初代「ANSER」、通称「SCOTTSDALE ANSER」はまさにマニア垂涎の的。ゴルファーなら誰もがあこがれるヴィンテージパターの最高峰です。

「SCOTTSDALE ANSER」は全部で4000本近く製作されたといわれていますが、長い年月の間に人から人の手に渡り、その間パターに様々な手を加えられることも多く、コンディションの良いものはなかなか残っていません。マニアやプロゴルファーはコンディションの良いものを探していて、それらが売りに出れば、高額であっても瞬く間に売れてしまいます。

程度があまりよくないものであれば、20万円以下で購入可能。使用感が少なく、ヘッドを削ったり、ネックやシャフトを曲げたりしていない本当にコンディションの良いものであれば、40~50万円くらいで取引されても不思議ではありません。

「SCOTTSDALE ANSER」以降、多くのクラブメーカーやパターデザイナーが「ANSER」と同形状のパターを製作しており、一般的にPING(ピン)型というと「ANSER」の形状を指す代名詞的存在となっています。これだけゴルフクラブのテクノロジーが進化する中で、発表40年を経て、未だに第一線で活躍するパターとして評価されていることは大変驚異的です。原初にして既に完成形であった唯一無二のパターと言えるでしょう。

1966年の段階で、このようなパターを産み出したカーステン・ソルハイムの偉大な業績は現在においても風化することなく、ゴルフの歴史に聳え立っています。

>>次は、プレミアムクラブ購入の注意点について>>

プレミアムクラブ購入の注意点

ヴィンテージパターの一つ「K-CUSHIN SCOTTSDALE JACK NICKLAUS」。ソールに刻印の入った超レアモデル。紹介した以外にも価値の高いプレミアムクラブは多い(画像はクリックすると拡大します)
2回にわたって紹介したプレミアムクラブですが、これらを収集・使用することは、ゴルフプレーの先にあるゴルフのさらに贅沢な楽しみ方といえるのではないでしょうか? もしこれらのレアアイテムに触れることができたら、脈々とつながるゴルフの歴史を感じさせてくれるはずです。

前ページで紹介した「SCOTTSDALE ANSER」以降も「ANSER」は、当初のコンセプトを踏襲し製作され続けました。70年代に入ってからの「ANSER」はオールドモデルと呼ばれていますが、価格は年代にもよりますが1万円から7万円位で購入でき、プレミアムクラブの入門編といえるクラブです。ヴィンテージクラブに興味のあるゴルファーはこの辺から手に入れるのが、比較的手軽でオススメ。

ウィルソンのL字型パターもずいぶん相場価格が下がっているので、コンディションにこだわらなければ、以前よりもはるかに格安で入手可能だと思います。場合によっては2万円前後で購入できる事があるかもしれません。オリジナルの初期モデルで間違いないならば、検討する価値あり。

これらのレアアイテムを購入するときは、通常のゴルフクラブ購入の何倍も注意深く行うことが必要です。オリジナルに見えるように細工された復刻版だったり、見栄えを良くするために表面を削ったり薬品を使用したりする場合がありますが、ヴィンテージパターの風合いを台無しにします。ショップ店員さんに相談することも必要ですが、場合によってはクラブに詳しい第三者に相談するなどしてなるべく情報を入手したほうがよいでしょう。

これらのプレミアムクラブには、最新モデルにはない年月の風雪に耐えた確かな魅力があります。もし手に入れることができれば、ゴルフライフがもっと豊かになるのことでしょう。

<参考文献>
上野喜久男『クラシッククラブ大観 名器の系譜』 日本文化出版 1991年
 


<関連リンク>
中古クラブの買い方・選び方 その1(All Aboutゴルフ)
中古クラブの買い方・選び方 その2(All Aboutゴルフ)
PING GOLF(海外サイト)
「George Low Sportsman」画像(コロネーション)
SCOTTYCAMERON.COM(海外サイト)
フェスティバルゴルフ
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