本当に観たい、女子“プロフェッショナルレスリング”

女子プロレスにかつての人気&輝きは戻ってくるのか?
人気低迷、復興の兆しすら見えない女子プロレス界。その現状を一言で表せば、閉鎖感という言葉になるのだろう。固定ファンのみに向けられた情報やマニアックな興行に、将来性を期待できるものはなく、行き交う選手の貸し借りは興行の独自性を奪い、往生場を無くしたベテラン勢は人材の循環を阻害する。

もちろん、この限りではない。不況の最中も団体としての基盤を失わずに必死に興行を続けているところもあるし、各団体で、新人選手が皆無かと言えば、そうでもない。にも関わらず、この状況が一向に改善しないのは何故か?

その原因の最たるものは、未だに消えない「プロ意識を失った、馴れ合い腐敗」なのだろう。一部の選手、専門誌、関係者、時として勘違いしたファンにも宿る、諸悪の根源。これこそが、女子プロレスをよりディープでマニアックな世界へと追いやった。

最近では、語られる場や機会すら減っている女子プロレス界。その問題提起へ、関係者を集めた不定期開催の座談会を実施する。

しかしながら、ハッキリと書いてしまえば、本座談会の趣旨には「女子プロレス界の人気復興」といった、いかにも建前的で無責任な謳い文句は一切ない。どちらかと言えば、直向な努力を続けている一部の選手や団体が、足を引っ張られることのないよう、悪しきしがらみを切り離してしまいたい、そんな気持ちの方が強い。なぜなら、我々が本当に観たいのは、女子“プロフェッショナルレスリング”だからだ。

【座談会参加者】
G:ガイド
J氏:女子プロレスの興行やメディアに携わる関係者
W氏:幼少より女子プロレスを観続け、現在では女子プロレスの取材も行うライター

欠けたプロ意識、崩壊する選手の価値観

G:今日はお忙しい中、お集まり頂きありがとうございます。今回より、不定期シリーズながら女子プロレス座談会を実施して参ります。低迷が続き、回復の動きや兆しすら見えない女子プロ界ですが、業界の現状を考えながらも、テーマに縛られず、ざっくばらんに語っていきたいと思います。

W:分かりました。現状にいちいち突っ込みを入れるというよりは、前向きに語っていきたいですね。

G:おっしゃる通りで、暴露的なことなら誰でもできます。そうではなくて、最近の女子プロを観ていると“語られる場”すらない気もします。「女子プロの火を灯すな」とか大それたことを言うつもりはありませんが、こういった場を設けるだけでも意義ある機会にはなるのかな、と。ゆくゆくは、OB選手や違った関係者にもご参加頂きたいですね

J:趣旨は分かりました。

G:ただ、いくらポジティブとは言え、もうどうにもならない程に女子プロレスの現状は荒廃している気がしてなりませんが、話しの取っ掛かりとして、今回は“選手”をテーマにしてみたいと思います。

W:それは滞る循環を指しているのですか?もしくは、選手の意識レベルの問題なのか、癒着や馴れ合いを指しているのか・・・?

G:もちろん、全てです。が、決して全選手を指している訳ではありませんので誤解しないで下さい。まず、一つ挙げれば、私は選手のブランディングがあまりに酷いと思っています。

W:要はこの団体では勝つのに、この団体では負ける。この団体ではメイン級なのに、この団体では第1試合をやらされているってことですよね。選手の価値観が崩壊しているという、ね。

G:それは所属する団体がなかったり、マネージメントする人間もいないので仕方がないのかもしれませんが、フリーならフリーで自分の価値を守ったり、考えたり、向上していかなければならない・・・。どの業界もそうですが、フリーで飯を食っていくってメチャクチャ厳しいものじゃないですか?

J:まず、その仕事に対するプロ意識は欠けますよね。

G:ええ。その根源を探っていけば、ベテラン選手が循環せず、いつまでも狭い世界で威圧感を出していたり、選手間の馴れ合いから、試合のオファーがあれば(不本意な条件であっても)断われない現状もあるでしょう。この積み重ねによって、狭い女子プロレス界なのに歪が出たり、辻褄が合わなくなる。

W:よく言われていることですが、女子プロに蔓延るベテラン選手の問題は深刻ですよね。なんか、選手によってはリングで試合をすることが、どっか副業的になっていません?普段は飲み屋とかで働いて、試合があれば、やっぱりプロレスが好きだし仲間や後輩も全員レスラーだから喜んで出てくる。

G:ただ、ここで言うベテラン選手はどの程度のキャリア以上を指すのか?私から言わせて貰えば、まだ引退して貰っちゃ困る選手なのに、既にプロレスが副業的な選手もいる。かと言って、大ベテランですけど、いつまでもプロレスに対して、真摯に取り組んでいる選手もいます。この話しをするなら、「ベテラン選手」というよりは、「プロ意識」的な問題になる気がしますよね。

注目すべき“日本人レスラーの晩節とそのハンドリング”

見事な散り際で、その価値を高めた広田さくら。後楽園ホールに舞った桜は感動の一言
J:ちなみに、全然関係ないのですが、プロレスリング・ノアの小橋建太選手の復帰に合わせて、6枚組のDVDが出ますよね。この資料価値はもの凄いと思いませんか?

G:そうですが、突然どうしたんですか?

J:WWEのトップスターなんかは、必ず個人のヒストリーDVDがありますけど、女子プロレスでデビューから引退までの足跡を納めたヒストリーDVDを出しているのって、広田さくらだけだと思うんですよね。ジャガー(横田)も長与(千種)も北斗(晶)もない。これってもったいないですよね。

W:確かにそうですね。まあ、男子プロレス以上に、引退というラインが曖昧だったというのもありますけど・・・。

G:広田さくらさんは、本サイトでもコラムを執筆して貰っていますが、私個人としては、彼女の引退という散り際は実に見事でした。ガイア最後の日、後楽園に舞った桜の花びらは、私がこれまで観てきたプロレスの感動名場面でベスト5に入ると思っています。

W:その広田さんのDVDって、かなり売れたみたいですね。ガイドさんが言うように、散り際の見事さが、彼女の価値を高めた感じですよね。

J:現役選手で言えば、アジャなんて全女編2本+アルシオン&ガイア・ジャパン編1本の3本組DVDがあってしかるべきだと思うんです。でも、それは商業ベースで考えると厳しかったり、権利の問題なんかもある。

W:権利元を調べるだけでも、骨が折れそうですが・・・。

J:それでも、プレイヤーへのリスペクトとして、また、資料価値としても偉大な選手のヒストリーはなんらかの形で残すべきものであると僕は思うんですよね。

G:その実績や功績を考えれば当然でしょうけど、残念ながら現役選手では誰であれ商業ベースに乗る気がしませんね。これは、既存のベテラン選手が、然るべきタイミングで引退し、後進に道を譲る・・・。これが出来なかったが故に、知らず知らずのうちに自分の商品価値を下げるところまで下げていた、その負債でもあります。

J:まったくその通りですね。同じ晩節を汚すのなら、ジャンルのためにとことん汚して欲しいというか。誰が見ても汚れているのに、本人だけキレイであろうとするのはあまり美しくないですね。

W:まあ、今更どうにもなりませんが、ここを前向きに捉えると、どうなりますかね?

J:女子はある程度のスパンをかけて“滅びの美学”を見せた人がいないので、そこにレスラー人生としての晩節を懸けてほしいですよね。日本人のメンタリティとして、絶対支持されると思うんですけど。

G:それは、ボロボロになって、燃え尽きるまで自分を曝け出して闘えということですか?

J:基本的にはそうですね。昨今では、「引退します」→「カウントダウンやります」→「引退興行です」って、無難に自分を飾って、そのキャリアを終わろうとしている選手も多いじゃないですか?

W:今の女子プロ界では大した意味を持たないかもしれませんが、商業的でもありますよね。Jさんがおっしゃった様に、未だに、自分だけキレイであろうとする選手は多いですよ。

J:そうなんです。何が言いたいのかと言えば、生き様は間違いなくシュートじゃないですか?やっぱり我々からすれば、そこを見せてほしいというのがありますよね。「そこまでプロレスに懸けていたんだ!」、「そこまでしてプロレスを続けたかったんだ!」って。

W:「そろそろ潮時だから、引退しよう」ではなくて、「プロレスを続けたいけど、ここまでボロボロにされたら引退せざるを得ない」。逆に、そこまで意地や生き様を見せ付けられたら、応援せずにはいられませんよね。

G:その場合、介錯をする選手も非常に大事ですね。残された選手はかつてない重責を背負うことになり、まさに本当の世代交代となる。だって、“世代交代マッチ”で本当に世代が変わったことなんてないですから。

J:男子で言えば、90年初頭のG1で長州力が全敗した時とか、橋本(真也)に蹴り潰される姿にみんな感情移入をした。今にして思うと、引退に向けたいい流れだったと思うんです。

W:その後、ロングカムバックを果たしましたが、あの姿を見て何も感じなかった人はいなかったでしょうしね。

J:最初の話に戻りますと、ベテラン選手については最近、男子にも同じような兆候を感じるようになっていますが、“日本人レスラーの晩節とそのハンドリング”。今後も、ここには注目していきたいですね。

G:その視点は一つの見所でもあります。順番に引退を発表しては、仲の良いレスラーだけ集めて引退興行をやる。そうではなくて、長くリングで闘い続けたのだから、少なくとも惰性や副業、馴れ合いで現役を続けた訳じゃないというところを見せて欲しいですよね。

次回へ続く―
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