レスラーとして凶器に注ぐ愛情を垣間見る

アジャが放つ凶器上での垂直落下式ブレンバスター。相手が実力者・里村だからできる技でもある。
今回は“プロレスラーと凶器”の後編です。前回は、同じ凶器でも選手によって違う使い方をすることを紹介しましたが、今回は選手のオリジナル凶器の紹介をしようと思います。

ヒールレスラーも個性が大事です。だから、ヒールの必須アイテムである凶器にも、独自性を求める選手がたくさんいます。まず、オリジナル凶器といったら、女子ではアジャ・コング選手の一斗缶を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?一斗缶(通称・アジャ缶)は、場所こそ取りますが、軽量のため持ち運びは簡単で、試合道具も収納出来て便利です。

しかし、以前私がアジャ選手と同じヒールユニットの下っ端をやらされていた……、ではなくて、やらせていただいた時、試合前の準備でアジャ選手の一斗缶にタオルなどを入れて置いておいたことがありました。するとアジャ選手は「これは物入れじゃないんだから!入れるんじゃねぇ!」と怒り、危うく裏拳をブチ込まれそうになりました。

これは平謝りして許してもらったのですが、ヒールレスラーの凶器にかける愛情を感じた一件でもありました。本来、一斗缶は物を入れるためのものですが、アジャ選手が持った瞬間、それはしょうゆを入れるためのものではなく、立派な凶器として新たな命を授かるのです。

一斗缶の使い方は、普通に殴るベーシックな攻撃の他、一斗缶を置き、その上に垂直落下ブレーンバスターで相手(主に里村選手)の脳天を突き刺す攻撃や、相手が缶を踏み台にしようと乗ったところで缶を蹴飛ばし自爆させるなど、多種多様です。ちなみに運よく缶を奪ったとしても、アジャ選手は頭が固いので殴っても効きません。

残忍な凶器攻撃で放送禁止!?

また、尾崎魔弓選手は「鎖」と「長い棒」(一部ではゲバ棒とも呼ばれている)の使い手で、鎖は相手に巻きつけたり、自分の足や手に巻き付けて殴ったり、丸めて投げつけたりして使っています。長い棒は尾崎選手の身長ほどもあり、イメージカラーの赤と黒のテープが巻いてあります。

使用方法は、突く・殴るに加え、倒れた相手の背中を棒でグリグリやる地味な摩擦攻撃があったり、コンビプレーとしてアジャ選手が一斗缶をかぶせ尾崎選手が棒で缶を叩くといった、聴覚を破壊する攻撃も編み出したのでした。ちなみに私は、尾崎選手の足元に長い棒を置いて、滑って転ばせたことがあります。

シャーク土屋選手のオリジナル凶器は「火と鎖鎌」です。鎖鎌って……言葉自体めったに目にすることもありません。文字で見ただけでも物騒です。土屋選手が他のヒールレスラーと違うところは、客が引くほどの凄みがある凶器攻撃をするところだと思います。以前、試合中に土屋選手が鎖鎌を相手の口に入れたことがあったのですが、その瞬間の映像はCSで放送NGになったそうです。

笑いを求めがちな今のご時勢に放送禁止になるような凶器攻撃や、観客が怒り・悲鳴を通り越し引いてしまう凶器攻撃が出来るのは、女子では土屋選手ぐらいではないでしょうか。

遂に明かされる毒霧の謎、お通じにも影響!?

他にも、一風変わった凶器として、視覚に働きかける「毒霧」があります。これは目に入ると、とても染みます。コンタクトレンズの場合、コンタクトも毒霧色に染まってしまいます。また、使う人も歯が毒霧色に染まることや、マイクアピールの時、口に毒霧が残って喋りにくいことなどに注意が必要です。そして毒霧を使った人と浴びた人は、次の日のお通じまで毒霧色になります。

このように、凶器は多種多様なものがあり、相手にダメージを与えつつ、観客に対してのパフォーマンスの役割も担っています。そして、ヒールレスラーと凶器の関係は、その凶器にどれだけ愛着を持つかで決まります。ただ頻繁に使うのではなく、「ここぞ!」というときに使用して凶器の価値を上げ、今まで見たこのない使い方を編み出すことで、その凶器を自分の物にしていくことが出来るのです。

ちなみに、私が一番度肝を抜かれた凶器は、サソリ選手の使用する「ハンガー」でした。サソリ選手は、どの家庭にもあるハンガーをヌンチャクのように振り回して凶器にしていたのです。確かにあのクリッてなってるところで引っかかれたら痛そうです。残念ながら、私はあのハンガーで攻撃される機会はあまりなかったのですが、一度ハンガーを奪い、自分のリングガウンを掛けてロープに吊るしてみたことがありました。すると、サソリ選手は激怒しました。どうやらあのハンガーも、本来のハンガーの役割としては使っていないようです。

ヒールレスラーの手に掛かれば、日常で使うあんな物やこんな物もたちまち凶器に変わってしまいます。この際、耳かきで聴覚を、練りわさびで味覚を攻める攻撃があってもいいかもしれません。

皆さんも「私だったら、これを凶器としてこう使う」という目線で家庭用品を見てみるのも面白いかもしれませんね。プロレスのイマジネーションって、意外とこういう着眼点から膨らんだりするのです。

それではまた次回。



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