(承前)


【ROUND3】越境時代の末に訪れた「人材切り捨て」


井田「まあ、さっき話がでたDEEPのフェザーのトーナメントでも、パンクラスで同じ企画が成立しちゃう部分は大いにありますからね」

矢作「そうなんだよ。選手は生活も掛ってくるから、誘われればどこのリングでも上がるさ。かつて格闘技のプロデューサーと言えば、顔が広くて、お金が調達できる人の仕事だったわけで、佐伯氏みたいな人が新規参入してきて人材流動化を進めてね。各団体の鉄壁の鎖国状態をグズグズにしちゃって、“あり得ない越境対決”を幾つも実現させたんだけど。あの時期それは非常に良い事だったと思うんだ。業界も活性化されたし、DEEP初期の功績は間違えなくあったよな」

井田「でも、その件では結構軋轢もあるんですよね。3年ぐらい前にDEEPが出て来て、選手に破格のギャラを払って、面白いカードを実現して、って流れの頃は、確かにみんなハッピーだったんですがね。“金になる”という現実を見て選手にタカるややこしい人種が増えた事。競技一筋できた選手の気持ちにブレが出て、ファイトスタイルにまで狂いが見え始めた事。そして、結局戦績が出ない、人気が出ないという、二重苦に陥って、選手がメジャーで闘い続ける事が出来なくなるし、元居た団体にも戻れないというケースもでてくる。例えば、DEEPへのシューター流出第一号だった三島☆ド根性の助が居るでしょ。彼なんかも今、そのストーリーの典型みたいな末路をたどってるんですよ」

矢作「ああ、三島は武士道では割食ったよなあ。武士道じゃ、五味があれだけフィーチャーされてるけど、イーブンの状態でもう一回やったら結果はわかんないんじゃないの?」

井田「ですよね。三島は五味とのタイトルマッチのゴタゴタが響いて、修斗を捨てるハメになってますしね。元々、照れ隠しにやってる入場パフォーマンスでのお笑いの要素ばかりが印象に残るんですかね。あれだけの実力者なのになんか軽視されやすい」

矢作「でも、取りこぼしも多すぎるよ。今回の武士道トーナメント前にイーブス・エドワースとやって負けちゃってるし。あれが致命傷だろ?」

井田「ストライカーに腕十字で負けて、みんな唖然としたあの試合ね(笑)でも、彼を庇う訳じゃないですけど、あのカード自体なんで組まれたかよくわかんないカードでしょ。トーナメント本戦でやりゃいいもんを、なんでここで組むんだ? みたいな。あの段階で、首を故障してて、かなり固辞したらしいのに、なかば強引に組まれちゃったらしいですしね。彼はメンタル的にはナイーブな選手なんで、状況おかしくなると戦績にすぐ出ちゃうんですよ」

矢作「でも、団体から給料貰ってる訳でもないし、フリーの選手は、そうした政治面もクリアして、トータルに強さを証明するしかないんだよね。ブルペンエースではダメで、リングの上での結果は絶対だし、裏での交渉でもタフでないと生き残れない。メンタルが繊細なのが“悪い”とは言わないが、事情はどうあれ、結果が出せなきゃ“弱い”と言われても仕方がないぜ」

井田「まあ、それはそうですね。裏ではずっとあるコブラ会の関係者が実はお金を横領していたのが判って、その人間とずっと揉めてたりして、普通に試合できる状態じゃなかったってものあるんですが…。さらに言うなら、DEEP~PRIDE武士道と組んできた佐伯プロデューサーとも不協和音が生じてたらしくて。待遇面では結構キツかったみたいですよ」

矢作「とことん不幸な人間には色々起こるからね…。まあ、全く同じケースとは言わないが、グッドリッジも、ヒーリングも、大山峻護もそうやって戦場を移すことになったしな…。実は、その噂は色々業界雀からも聞いてるんだ。三島は近いうちPRIDE離脱って事になるんじゃないかって、さ」

井田「各方面から誘われてるのは事実みたいですね。所属ジムを越えた越境ユニットを売りにして最近注目を浴びた某チームからも引きがあるらしいです。ただ今は首の故障があって当面休業したいようですから、即移籍ってことはないようです。とりあえず2月のDEEPで帯谷の挑戦ってのは受けないと思いますね。ベルトも多分返上で終わるんじゃないですかね」