▼【猪木祭三分裂を徹底検証/関連インデックス】
・「大晦日3大興行激突!」 (上)(下)
・(4) PRIDE男祭り編「“正統派”男祭りに勝算は?」
・(5) イノキボンバイエ2003編「IB派の野望と業界地図の変化」



" K-1 PREMIUM 2003 Dynamite!! "
2003年12月31日(水) 愛知・ナゴヤドーム

【Dynamite!!:注目の3カードはズバリこれだ】

第9試合 K-1ルール 3分3R
ボブ・サップ(米国/チーム・ビースト)
曙(日本/チーム・ヨコヅナ)

第8試合 K-1 MMAルール 5分3R
アレクセイ・イグナショフ(ベラルーシ/チヌックジム)
中邑真輔(日本/新日本プロレスリング)

第1試合 K-1 MMAルール 5分2R
須藤元気(日本/ビバリーヒルズ柔術クラブ)
バタービーン(米国/チーム・バタービーン)


→試合結果はこちら


■Dynamite!!:マッチメイクの意図はこう読め■

回の大晦日三大イベントは地上波放送で中継され、どれだけ視聴率を稼ぐかがメインテーマとなっている。去年一昨年の猪木祭りは紅白の裏にあえて格闘技オールスター戦をぶつけた、いわば「違和感」で数字を稼いだ形だが、三派に分裂した今年のテーマはむしろ「格闘技中継の中で一番は何か」に移行したといえるだろう。

「対紅白」の時代は終わりを告げ、昨年猪木祭がマークした視聴率をベースに確立された「格闘技枠」の客層の上に、どれだけの一般のユーザーを取り込めるかを争う時代がやってきたと考えるべきなのである。

最初にその課題に模範回答を出したのが、K-1陣営の打ちだした曙起用だった。

技として親しまれる大相撲の頂点に立った元横綱曙を担ぎ出し、人気絶頂のボブ・サップと対戦させるというドリームカードを実現し、一般社会の感心を完全に攫った形となった。この手法はオリンピックメダリストの柔道家吉田秀彦を、総合格闘技の象徴的存在であるグレイシー一族のトップファイター・ホイスにぶつけた2002年夏の「Dynamite!」の敷延拡大版と言えるだろう。

ただ、K-1ルール初挑戦の曙と、キックの技能はお世辞にも高いといえないサップの試合は、技術的「内容」を期待する事は出来ず、コアなファンの離反を招いたのも事実。

視聴率競争ではこの話題のカードを持った「Dynamite!!」が圧勝という下馬評が専らだが、すでにこのカード自体、発表が早く、話題になり過ぎたきらいもあり、「賞味期限」のピークは過ぎたという見方もある。結果には当然興味が集まるだろうし「瞬間視聴率」は間違えなく稼ぐだろう。ただし、チャンネルを切り替えて三つのイベントをハシゴする「ザッピング族」の手を止めさせることが出来るかどうかは疑問符がつく。

くまで「お祭り気分」を強調し、K-1 MAXで魔裟斗に次ぐ全国区の人気者にのし上がった須藤元気を110キロもの体重差がある、色物ボクサー・バタービーンの対戦相手に起用したのも、「知名度&意外性」を勘案した“一般社会対策”に他ならないといえるだろう。また、セミの大役に最年少IWGP王者として今を時めく中邑真輔を起用、プロレス人気の取り込みにも余念が無い。あえてその対戦相手にMMA初戦のアレクセイ・イグナショフを起用したのも、かつてオーストラリアGPで“格下”のマイケル・マクドナルド相手にKOされたミルコが、対猪木軍の一番手の藤田戦に起用され、剣が峰のMMA挑戦をバネに“大化け”した故事に倣っていると見ていいだろう。

さらに言えば、ミルコという総合&スタンドの二毛作をこなすコマを引き抜きで失った今、MMAイベント開催を目論むK-1にとって“水陸両用”の新エース登場が急務であることも意味している。

こうしてみていくと「Dynamite !!」は、谷川体勢となったK-1陣営の一年を象徴する「格闘技大衆化路線」の集大成でもあり、この大会をファンがどこまで支持するかによって、2004年のK-1自体の行方をも左右することになるかも知れない。