それぞれの選手が果たした役割の集積が「勝利」

ダルビッシュ有
延長戦になった韓国戦、重責を振り払い結果を残したダルビッシュ有。メジャーが見えたか
日本がWBC連覇を果たした。星野ジャパンが原ジャパンに変わり、ネーミングが「侍ジャパン」と発表された時、違和感を覚えたのは私だけではなかったと思うが、試合を重ねるごとにそのネーミングがしっくりしてきた。原監督は「チームが進化してきた」と言ったが、まさにその通り。選手それぞれの進化がチームの進化を促し、連覇という偉業につながったといえるだろう。

勝因はいくつかある。スコアラー(スカウト)のデータ収集、分析力プラス選手の理解、実践力が他チームを圧倒するほど素晴らしかった。これがうまく機能するかどうかが国際大会での勝敗の分かれ道であり、北京五輪で機能しなかったのは、情報量が多いメジャーリーガーが敵にいなかったことも挙げられる。

ここ一番での選手力の差も大きい。MVPに輝いた松坂、MVP以上の活躍をした岩隈、野手では青木、中島、片岡、内川、小笠原、稲葉などが求められるシーンでそれぞれの役割を果たしたから勝利を引き寄せることができた。これら勝因の中にぜひとも付け加えなければいけないのが、原監督の柔軟性だ。

聞く耳を持った原監督の頭の柔らかさ、柔軟性

東京ラウンドでの韓国との1位決定戦、0対1で迎えた8回一死一塁。走者がイチローで、韓国のマウンドがフォームの大きい右サイドスロー林昌勇(ヤクルト)なのに、原監督は中島に送りバントのサインを出した。結局、得点に結びつかずに敗戦したが、この采配がキューバのカストロ前議長を始め、各方面から大ブーイングを受けた。すると、アリゾナでのメジャーとのオープン戦でダブルスチールを敢行させるなど、機動力をメインにする戦い方に軌道修正。

2ラウンド、決勝ラウンドとも「足」は日本最大の武器になり、優勝に結びつけた。ふつうの頑固な監督ならこれほど修正できたかどうか。聞く耳を持った原監督の頭の柔らかさ、柔軟性といえるだろう。

藤川に固執せず、ダルビッシュをスパッと起用

柔軟性の例をもうひとつ。宮崎での強化合宿で、原監督は侍ジャパンの守護神に藤川を指名した。ところが、アメリカでの第2ラウンド以降、藤川はボールが合わないこともあり、ストレートの走りが悪い。そこで原監督は準決勝のアメリカ戦、決勝の韓国戦ともダルビッシュを最後のマウンドへ送り、成功した。

某監督ならば藤川に固執して、連覇を逃していたかもしれない。原監督はダルビッシュ起用を「ブルペンで最も調子、状態がいい者を投げさせた」と言ったが、ここに勝利を導く柔軟性の秘密が隠されている。

スターにこそわかる、スターの気持ち

現ドジャースのジョー・トーリ監督は、メッツ、ブレーブス、カージナルス時代は勝率5割そこそこの監督だったが、1996年ヤンキースの監督に就任するとその才能が開花、チームを12年連続でプレーオフへ導き、4度の世界一に輝いている。

成功要因のひとつに、自らスーパースターだったトーリ監督はヤンキースのスーパースターたちの気持ちをよく把握したことが挙げられる。この際の選手起用の指針が「その時(今)の調子、状態を優先」だった。経験豊富で実績のあるスーパースターたちも、この言葉の前には従わざるを得ない。自らもスーパースターで巨人という人気チームを率いる原監督も、日本代表のつわものどもをまとめ、起用するのに「その時(今)の調子、状態を優先」は正解だった。だから勝てたともいえる。

対戦システムの改善が最優先課題

しかし、トーリ監督と原監督の違いは、その後のフォローだ。トーリ監督は外した選手と必ず1対1で話し合い、なぜ外したかの理由を説明し、納得させる。原監督が藤川とそこまで話し合ったかは疑問。もちろん、全日本は1シーズンを戦い抜くチームではないので、そこまでは必要ないかもしれないが、たとえそうでもトーリ監督ならそこまでしただろう。

第3回大会は2013年に予定されている。今回、日本が9試合中5度も韓国と当たるという不合理をなくすため、対戦システムを改善するのが最優先課題。

いずれにしても、日本が再び原ジャパンで出場する可能性が高まる優勝となった。



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