今年もFA(フリーエージェント)での移籍が活発に行われたプロ野球界。現在の移籍確定選手は5人(加藤 伸一投手、小宮山 悟投手、前田 幸長投手、谷繁 元信捕手、片岡篤史内野手)となり、オリックスの田口荘外野手も秒読みとされています。その中で、今年のFA戦線でクローズアップされたのが、「人的補償」という言葉でした。

選手がFA移籍した場合に、移籍元球団から移籍先球団に対して補償を求める事ができます。簡単に説明すると、人的補償が無い場合は移籍選手の年俸の1.5倍の金銭人的補償がある場合は移籍先球団のプロテクト指定選手(支配下選手から30人および外国人登録選手)以外の選手1人と、移籍選手の年俸と同額の金銭です。

これまで人的補償はレアなケースで、95年の日本ハムが読売から川辺忠義投手を獲得した1例のみとなっておりました。それが今オフはオリックスが大阪近鉄からユウキ投手(田中祐貴)中日が読売から平松一宏投手を人的補償として獲得し、ファンの間ではどちらが得したのかと話題になってもいます。また今後も片岡選手や田口選手の移籍に伴う人的補償も生じるかもしれません。
しかしこういった「補償」の手段はFAという権利を狭め、また行使を難しくしていることは否めません

FA選手の獲得に関して、その補償金などにかかる金額が大きすぎるために、広島やヤクルト、オリックスといった比較的金銭的余裕の無い球団は「基本的にFA選手を獲得しない」ことを明言しています。つまり仮にそういった球団に移籍願望を選手が持ったとしても、事実上FAでの移籍は不可能になっており、また権利を得た選手も多額の補償金のために買い手がつかないことを恐れ、結局はFA権を行使せずといった例が多いとプロ野球選手会のホームページで述べられています。そして今オフは「人的補償」が積極的に行われるようになったために、これから先は「自分が移籍することによって、他の選手に迷惑が掛かる」と考える選手も出てくるでしょう。そうなってしまえばFA権という選手のための権利が、かえって選手の自由を奪ってしまう制度ともなりかねません。
ではこういった補償の問題をどう解決すればいいのかですが、アメリカでは日本で言う補償金や現在のプロ選手を譲渡するといったものではなく、FA選手を獲得した球団が移籍元にドラフトの指名権を譲渡するといった形がとられています。FA選手が権利を行使しても直接的に他球団の現役選手に影響を与える事もなく、間接的にも選手を獲得した球団から、元に在籍していた球団への補償ということも満たします。先の見えてきた実力ある選手から、将来を感じさせる若い選手へ移行するチームの新陳代謝の手助けにもなるでしょう。ドラフトとFAを関連付け戦力均衡化を合理的に図ろうとしています。

けれどもこのシステムは現在の日本では実現しそうにはありません。自由競争枠という事実上の逆指名権があるためです。しかし私は自由競争枠のシステムを廃止しても良いのではと考えます。なぜならばFA資格取得の条件においても逆指名選手は10シーズン、それ以外の選手は9シーズン出場選手登録の期間の違いなど、もし逆指名が無くなれば1選手としての入団時やFA権での不公平感も無くなり、獲得補償についても上記したドラフト・ウェーバー権の譲渡といったことも可能になるからです。

「痛みの伴う改革」ではないですが、球界では3例目の人的補償が行われ、球団側もFA選手を獲得する事以上に、手塩にかけて育ててきた選手を他球団に譲渡する厳しい選択を迫られ、現状のFA制度の問題点を身を持って感じたことと思います。もともとが選手の権利として発展してきたFA制度ですから、球団側も痛みを感じてくれている間に、より自由に行使できる権利へと改善していくべきではないでしょうか。
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