波乱の高校選手権。40年ぶりの東北勢優勝

野洲が敗退したのもレベルが均一化された証拠でもある
2006年度第85回全国高校選手権は、岩手県の盛岡商が2-1で岡山県の作陽を逆転で倒して幕を閉じた。盛岡商は15回目の出場にして初めて国立(ベスト4)まで進み、そのまま勢いに乗って初優勝を勝ち取った。近年、青森山田(青森)をはじめ、徐々に力をつけてきたが東北勢の優勝は40年ぶりであり、それだけに嬉しいことだっただろう。

今大会はとても波乱の多い大会だった。名門、長崎県の国見高校はこれまで20年間初戦敗退が1度もなかったが、今回は千葉県の八千代に破れ早々と姿を消した。そこから始まり、フランス2部リーグのグルノーブルへ移籍が決まった伊藤翔率いる愛知県の中京大付属中京も、初戦で広島県の広島皆実にPK戦の末、敗れた。秋の全日本ユース選手権を制した兵庫県の滝川第二も、2回戦で埼玉県の武南に敗退。そして昨年度の大会以降、話題を集めてきた滋賀県の野洲も八千代に4-1という大敗を喫して2連覇の夢を打ち砕かれた。

伏兵の勝ちあがりはフロックではない

こういった強豪校が敗れる中で、盛岡商や作陽、神村学園、八千代といった言わば伏兵がしぶとく勝ちあがってきたのだが、これらのチームも実力は兼ね備えており、決してフロックではなかった。例えば優勝した盛岡商にしてみれば、春のプリンスリーグでは東北で2位(1位は青森山田)で、夏のインターハイでは全国ベスト8に入っている。また、作陽も今年はインターハイで2回戦敗退というのが最高の成績だが、関係者の間では組織的なスタイルは評判が高かった。

神村学園や八千代は鹿児島と千葉というサッカー強豪県であり、鹿児島であれば鹿児島実業、鹿児島城西、千葉であれば市立船橋、市立習志野、渋谷幕張といった強豪校がいる中を勝ち上がってきただけに、それだけで地力を備えている。

最低得点数の原因は戦力の分散

ただ今大会、本命といわれた高校が勝てなかった理由の1つとして得点力不足があげられる。今大会の総得点数は104点と、48校が参加するようになって以来最低だった。広島皆実のように3試合連続無得点PK勝ちというチームもあったように、接戦やPK戦が多かったために、本命が勝てなかったと言えよう。

もう1つの理由として選手の分散化が挙げられる。サッカー王国の静岡をはじめ、東京や神奈川、千葉、大阪など高校の数が多い都道府県はどうしても選手が分散してしまう傾向がある。そのため、県内で突出した実力を持つ高校が出難くなり、その結果高校選手権に出場できない危険性をはらんでしまう。そのため、確実に出場できる地方の強豪校へ進学する子供も出てきているのだ。

止まらないクラブユースへの流れ

高校だけでなくクラブユースへ流れるのも最近の傾向である。Jリーグを目指す高校生にとってユースは最短距離でもあり、最近では小学生からクラブの下部組織に入る子供も多数いる。そのため、有望な子供はクラブに流れる、いやクラブから流出しないという現象が起きている。

実際、来年度からJ1クラブに新加入する現高校3年生のうち、高校のサッカー部に所属する選手は16名なのに対し、クラブユースに所属する選手は26人と1.6倍となっている。それだけに、今後もクラブユースに流れる傾向は強まるだろう。

地方の高校が優勝した事で話題になった今大会だが、このままでは高校選手権よりもクラブユースの方が見ていて面白いと言われる可能性もあるだろう。そうならないために高校が高校生に実力をつけることが今まで以上に必要となってくる。昨年度優勝した野洲は山本佳司監督が地元にクラブチームを作り、そこで育った子供たちを高校に引き連れて全国制覇を果たした。また神村学園のように中学校から一貫して子供を育てるようなやり方も一つである。

TV局が無理矢理ドラマ性を持たせるだけでは、観客の目はついにごまかせなくなってきた。



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