そこで、何人かの選手に話を聞いた。まずはキャプテン増嶋。彼とは2年前から面識がある。向こうの方から「こんにちは」と軽く声をかけてくれた。カタールに勝つには、やはり無失点で抑えることが一番の近道。守備の要である増嶋にかかる期待は大きい。「1次リーグは無失点だったけど、相手のレベルもそれほど高くなかったし、自信がついたということはないですね。カタールに対しては3バックでスピードを殺して前を向かせないようにしたい。今大会はまだ失点してないから、カタールに点を取られた後、どうリカバーするかも問題。自分から声を出して行きます」とキャプテンとしての自覚を口にした。

チームとしてのゲームプランは、序盤は長いボールを多くして中盤でボールを失うリスクを回避。リズムがつかめてきたら、速いパス回しからの攻撃をしかけるという形だという。「一誠(高柳)や洋次郎(高萩)とも話したけど、最初から中盤でコントロールするのは、相手がガツガツ来るから怖い部分がある。だったら、ゲームが落ち着くまでは長いボールを前線に当てようと確認しました」と増嶋は話していた。

続いて、16歳の切り札・森本に話を聞こうと走って行った。東京ヴェルディでは取材禁止令が出ており、Jリーグの試合後しか彼と話すことができない。今回もつねに大勢のメディアに囲まれていたため、なかなか接触できなかった。今日はいいチャンスだ。

「カタールは今まで予選リーグで戦ってきたチームとは格が違う。今まで以上に力を出さないとやれない。平山君の落としたボールが後ろにこぼれて来るから、それをうまく狙いたい」と、この春中学校を卒業したとは思えない堂々とした話しぶりだ。しかも勝負どころをしっかりと心得ている。さすがは3試合で2ゴールという結果を残すだけのことはある。森本にはどうしても国際舞台で羽ばたいてもらいたい。そのためにも、ワールドユース出場権は絶対に必要だ。

そして、最後に大熊監督の話を聞いた。すでに指揮官は大勢の人たちに取り囲まれていた。彼はいつどんな時も腰が低く、丁寧に応対してくれる。今は有名監督になったのに謙虚な姿勢は東京ガス時代と全く変わらない。「明日は120分になるかもしれない。いろんなことを想定して戦わないといけない。相手にとって何がイヤかを考えながら、戦術を変えていきたい。チームとしてはつなぐ意識を持ちつつも、苦しい時は平山を使うとか、メリハリを大事にしたい」と彼は言う。

日本の持ち味は速いパス回しだが、カタールのようにマンマーク気味に守ってくる相手だと、どうしてもうまくボールが回らない時間帯もある。そういう時に平山相太という長身のポスト役がいることは大きい。彼には前回のワールドユース(UAE)とアテネ五輪アジア最終予選、少ないながらも五輪本番の経験がある。国際経験という意味では、このチームの中で一番である。大熊監督の言うように、今回のユース代表は豊富なタレントが揃っているが、U-17世界選手権を経験した選手はいない。早生まれでJリーグでもバリバリ試合に出ている選手もいない。「実戦経験」という部分ではまだまだ不足しているのだ。それを考えても、平山にかかる期待は大きいのだ。

カタールのアル・メスナド監督は「2年前のU-17のアジア予選で、我々は日本に3-1で勝っている。その時と同じメンバーが来ているから、今回も勝てる」と自信満々らしい。が、そうはさせない。アジアカップ(中国)の時のように、日本人の賢さを中東勢に見せつけてやってもらいたい。

結局、2日はスコールがなく、猛暑のまま1日が終わった。天気予報だと明日3日も快晴のようだ。18時からのゲームは日本にとって辛いだろうが、ここまで来たら精神力のある方が勝つ。大熊監督のことだから、そういう闘争心を植えつけてくれているはずだ。

大熊清監督

「明日は120分になることもありえる。後手を踏まないようにとか、いろんなことを想定して戦いたい。練習の最後に3-4-3の形を試した?状況によっては1人でも2人でも入って攻めることも考えられる。リスクを負ってやらなきゃいけない時もある。バランスを崩さずにパワープレーに行く可能性もある。相手にとって何がイヤかを考えながら、変えていきたい。このチームはつなぐ意識を欠かさず、ワンタッチでDFからのロングボールも使えるように指導してきた。苦しい時は平山に合わせる意識を持つことも必要だ。

ここ3試合ではディフェンスラインのつなぎのミスも出たが、そういうことを勘案したメンバー構成にはしてある。大事なのはいかにミスからチームを立て直すか。サッカーというのはミスがつきもの。その後のリカバーをどうするかという問題だ。最低限のリスクを考え、それをケアすることも大事だ」

取材・文・写真/元川悦子

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