当月と翌月発売のものからそれぞれいくつかピックアップして、小説世界に思わずのめりこんでしまう本をご紹介します。

まずは3月に発売になった新刊から。

【3月のイチオシ】累計500万部突破の大ベストセラーダン・ブラウン『ダ・ヴィンチ・コード』

ダ・ヴィンチ・コード
歴史ミステリーをブームにした立役者。レオナルド・ダ。ヴィンチの名画に隠された暗号とは?
単行本が発売されたときからベストセラーになっていた『ダ・ヴィンチ・コード』。文庫になって、ますます売れています。なんと単行本と文庫合わせて、500万部を突破したとか。5月の映画化を控えて、その勢いは止まらないことでしょう。元ネタになっている説は専門家からの反論も多く、鵜呑みにしていいものかどうか微妙ですが、とにかくエンターテインメントとしてはよくできています。

冒頭、謎の襲撃者によってルーヴル美術館の館長・ソニエールが殺害されます。事件後、警察が発見したのは、レオナルド・ダ・ヴィンチの最も有名な素描〈ウィトルウィウス的人体図〉を模した形で横たわる館長の死体と、奇妙なダイイングメッセージでした。

現場は世界的に有名な美術品が展示されているルーヴル美術館、被害者はその館長、容疑者は事件当夜館長と面会の約束をしていたハーヴァード大学教授・ラングトン。何もかもド派手。ツカミはOKという感じです。ラングトンとソニエール館長の孫娘で暗号解読官のソフィーは、警察の追っ手をかわしながら、事件の真相に迫るのですが……。

怪しい修道士、功名心あふれる刑事、銀行の名誉を重んじる支店長、聖杯伝説マニアのイギリス貴族などなど、脇を固めるのもクセ者揃い。逃亡劇の目まぐるしい展開と、次々とあらわれる新しい暗号に引っぱられて、ページをめくる指が止まりません。

【3月の注目】シモネタが嫌いじゃなければどうぞ~クリストファー・ムーア『アルアル島の大事件』

アルアル島の大事件
〈全ページ抱腹絶倒〉というキャッチコピーは大げさですが、あまりのくだらなさに脱力すること請け合い。
4月になって入社、入学、転勤、引越しなどなど、環境が激変した人も多いことでしょう。新しい所属場所や人間関係に疲れたら、笑えるミステリー小説はいかがですか? と、いっても、シモネタが嫌いな人にはおすすめしませんが。あらすじはこんな感じ。

主人公のタックは、化粧品会社社長のお抱えパイロット。酒場で引っかけたカワイコちゃんに「一度飛行機でしてみたかったの」とせがまれ、よせばいいのに安請け合い。機上で不埒な行為に及んだ挙句、ズボンを下ろしたまま大事故を起こしてしまい、雇い主はカンカン。途方にくれるタックの元に、南の島の伝道医師から、専属パイロットになってほしいという依頼の手紙が届きます。その島とは、ミクロネシアにあるアルアル島。思わぬ好条件に飛びつくタックですが、その裏には何やらいわくがあるようで……。

おバカだけど憎めない主人公と変人ぞろいの島民たちが可笑しくて、随所でプププと吹き出してしまいます。植民地政策の中で発生したという“カーゴ・カルト”(支配者がばらまいた物品と現地の伝統宗教が結びついた積み荷崇拝のこと)も興味深い。島に隠された秘密はなかなかヘビーですが、ラストは痛快です!

次ページでは、これから発売の注目文庫本をセレクト>>

【4月上旬】3冠受賞を果たした垣根涼介『ワイルド・ソウル』が文庫化

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今月は何を読む? ※発売は予定ですので、変更になる場合がございます。
第6回大薮春彦賞受賞、第25回吉川英治文学新人賞受賞、第57回日本推理作家協会賞受賞の3冠を達成した作品がいよいよ文庫になります。

1961年、アマゾンの地に降り立った衛藤一家。夢の楽園と信じて疑わなかったブラジルへの移住。ところが移民たちはジャングルで過酷な生活を強いられます。彼らは日本政府の“棄民政策”の犠牲になったのでした。それから40年以上経って、ある復讐劇の幕が上がります。

ブラジル移民問題を背景に、予想もつかないストーリー展開でぐいぐい読者を引きつける冒険犯罪小説。幻冬舎より4月上旬発売予定です。

<ほかの注目文庫>
・ローラ・チャイルズ『グリーン・ティーは裏切らない』(ランダムハウス講談社文庫)4/1発売予定
・松岡圭祐『千里眼 背徳のシンデレラ(上)(下)』(小学館文庫)4/6発売予定
・船戸与一『流砂の塔(上)(下)』(徳間文庫)4/7発売予定
・馳星周『生誕祭(上)(下)』(文春文庫)4/7発売予定
・スティーヴン・キング『ドランのキャデラック』(文春文庫)4/7発売予定
・朱川湊人『都市伝説セピア』(文春文庫)4/7発売予定
・上遠野浩平『ブギーポップ イントレランス オルフェの方舟』(電撃文庫)4/10発売予定

【4月中旬】石持浅海『月の扉』が文庫に

「閉鎖状況」ミステリー、といえばこの人。石持浅海の『月の扉』が文庫化します。毎度、特殊な状況設定で読者を楽しませてくれる著者。『月の扉』の場合は、ハイジャック犯に乗っ取られた航空機の中です。

舞台は国際会議を控え、厳重な警戒下にあった那覇空港。3人の犯行グループが、乳幼児を人質にして飛行機を乗っ取ります。彼らの要求は警察に留置されている〈師匠〉を滑走路まで連れてくること。そんななか、トイレで乗客の死体が発見されます。

犯行グループはハイジャックに集中するため、なんと死体を発見した乗客〈座間味くん〉に、殺人犯の捜査を依頼! 奇妙な推理劇が始まります。光文社文庫で4/12発売予定。

<ほかの注目文庫>
・米澤穂信『夏期限定トロピカルパフェ事件』(創元推理文庫)4月中旬発売予定
・鯨統一郎『ミステリアス学園』(光文社文庫)4/12発売予定
・友成純一『黒魔館の惨劇』(光文社文庫)4/12発売予定
・恩田陸『黒と茶の幻想(上)(下)』(講談社文庫)4/14発売予定
・井上夢人『もつれっぱなし』(講談社文庫)4/14発売予定
・北森鴻『桜宵』(講談社文庫)4/14発売予定
・D・ハンドラー『コールド・ブルー・ブラッド(仮)』4/14発売予定
・今野敏『二重標的 東京ベイエリア分署』(ハルキ文庫)4/15発売予定
・西澤保彦『リドル・ロマンス 迷宮浪漫』(集英社文庫)4/20発売予定
・佐々木譲『帰らざる荒野』(集英社文庫)4/20発売予定

【4月下旬】気になるミステリー

下旬は内容の情報がほとんど入手できてないので、タイトルのみ紹介します。

・結城信孝『絶体絶命 ギャンブル・アンソロジー〔ゲーム篇〕』(ハヤカワ文庫)4月下旬発売予定
・イアン・ランキン『影と陰』(ハヤカワ文庫)4月下旬発売予定
・リンダ・フェアスタイン『殺意』(ハヤカワ文庫)4月下旬発売予定
・リチャード・ベン・サピア『遺骨(上)(下)』(扶桑社ミステリー)4月下旬発売予定
・ケリー・アームストロング『ビッテン(上)(下)』(扶桑社ミステリー)4月下旬発売予定
・ウィリアム・サン・ティレール『長椅子で』)』(扶桑社ミステリー)4月下旬発売予定
・今邑彩『ルームメイト』(中公文庫)4/22発売予定
・ポール・サスマン『聖教会最後の秘宝(上)(下)』(角川文庫)4/25発売予定
・服部真澄『GMO(上)(下)』(新潮文庫)4/25発売予定
・H・P・ラヴクラフト 他『怪奇小説傑作集〈3〉英米編III【新版】』(創元推理文庫)4/28発売予定
・芦辺拓『グラン・ギニョール城』(創元推理文庫)4/28発売予定

<関連サイト>
・関連リンク集太洋社文庫発売一覧……出版物卸売会社(取次)の太洋社のサイト。文庫の発売予定が日付順、出版社順、著者名順に見られて便利。情報ソースとして使わせていただいています。

・関連リンク集e-hon文庫新刊案内……出版社別に当月の文庫新刊を一覧でチェックすることができる。


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