文章:山田真巳
YAMADA MASAMI
         1996年~ インド ニューデリーに在住

左は「ハス」(クリックで拡大)
古代エジプトの世界最古の創世期神話に、初めに水があり、その中からハスの花が咲 き出し、その花の上に太陽神が生まれたとある。ヒンドゥー教ではハスの花から世界 の創造神、梵天(ブラフマー)が生まれたそうだ。観音様もハスの花の御出身。ちな みにハスはインドの国花だ。

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山田真巳略歴
    
カルの意味

インド暮らしも数年たって、少しはヒンディ-語が判るようになった。“カル”は “明日”という意味に使われている。ところがインド人とカルの約束をしても破られ ることが頻繁にある。こんな時、決まって「ノープロブレム。カル」と言われ、約束 をどんどん先延ばしされてしまう。まあ悠久の国インドだから、と半ばあきらめてい た。そんなある日、インドの高名な宗教学者R博士にお会いした。僕は「インドで “カル”という言葉の意味は“明日”ではなく“未来”という意味でしょう」と申し 上げた。ところが博士は真顔で、「山田さん、“カル”は明日や未来だけじゃない。 “来世”の意味もあるんですよ」。この世で果たせなかった約束は、また生まれ変 わった時に果たせば良いではないか、と言うことらしい。私は皮肉を込めて、大げさ に“未来”と言ってみたのだが、“来世”と言われてはもう返す言葉もない。博士は 僕に追い討ちをかける様に「“カル”には又“過去”という意味もあるのだ」、と付 加えた。つまり過去も未来も、前世も来世もすべて輪のように繋がっているのでしょ うね。いやインドは本当に哲学の国ですよ。


「吉祥天(ラクシュミー)」(クリックで拡大)

世界創造神のヴィシュヌの奥方であるラクシュミーは、ハスの花の女神(パドミニー) とも呼ばれ、総ての生き物や物体を生み出す母神でもある。物質的世界の幸運の象徴 だ。お金は幾らでも好きなだけ手から吹き出せるし、水も滴る究極の美女だから、皆が憧れるのも無理はない。


    

※今回を持ちまして連載エッセイ「風を食べて飛び続ける鳥」は終了させていただきます。ご愛読ありがとうございました。 次ページにあとがき-連載ご愛読の御礼、そして2006年日豪交流年記念プロジェクトに向けて

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