文章:山田真巳
YAMADA MASAMI
         1983年 オーストラリア個展

左は「飛ぶ鳥」(クリックで拡大)
オーストラリアの首都キャンベラ郊外、初夏の風景。空気は徐々に乾燥しはじめ一面 枯れ草になってきた。つがいの水鳥がオアシスをもとめて飛翔する。(ニューサウス ・ウエルス州立美術館蔵)

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ブッシュファイアー

何処までも続く広大なユーカリの森に真っ赤な炎が壮烈に燃え上がる。天は煙で暗くなり、太陽が不気味に赤くぼんやりと見える。ハイウエーを走る車はヘッドライトをつけ、消防車やパトカーはサイレンをけたたましく鳴らし走りまわる。まさにこの世の最後のような情景だ。夏は乾季にあたり殆ど雨が降らず、気温も高く、その上同国の樹木の80パーセントを占めるユーカリの木は大量の油分を含んでいる。木と木の摩擦や落雷による出火、ビンのかけらがレンズのように働いて火を熾したり、誰かの火の不始末が原因で火災が発生する。なにしろ一旦木が燃え出すと、隣の木が熱で蒸され、油が染み出して気化するので、いっぺんに爆発したかのように火が燃え広がっていく。それに追い討ちをかけるように強風が吹けば、時速170キロで燃え広がった記録もある。焼け跡は一面真っ黒に変わり、黒焦げになった立ち木が林立し、地獄のような光景だ。しかし半月も経つと、なんと墨のように真っ黒な立ち木のあちこちから鮮やかな緑色の芽が吹いてくる。雨季になれば美しい新緑の森となる。ユーカリとともにブッシュを形成するアカシアなどの低木のなかには、この火によってのみ種子の硬い殻が燃えて発芽するものもある。夏の風物詩と言うにはあまりにも過酷な自然の摂理だ。


「ブッシュファイアー」(クリックで拡大)

オーストラリアの夏、特に北部のアウトバック(荒野)は乾燥し、気温は50度近く になる。日中自動車のボンネットで卵焼きを作れる。


※次回は「オーストラリア犬と猫」です。     

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