文章:松原 洋一(All About「日本画」旧ガイド)
創画展は洋画団体の新制作協会から日本画部が分離して発足して以来、今年で第27回展を迎えます。日本画の団体としては他に日展日本画部や院展などがありますが、創画展は前衛的な作風が多く、若手作家の出品が目立ちます。ぜひ会場でご覧になることをお勧めしてます。会期は下記の通りです。団体展というのは展示作品が非常に多いので一作品ごとにじっくりと味わいながら見ていくと、途中で集中力が尽きてしまい、結局入り口付近にある大家の作品しか記憶に残らないということはありがちです。団体展を鑑賞するコツは対象をグッと絞り込んで見ることでしょう。たとえば同じ出身地だとか、世代が同じだとか、そんな作家を意識して毎年みていると、逆に全体が見渡せるようになるものです。
創画展は若手作家の出品が多いので、まだ知られていない人に注目してみましょう。
今回の創画賞は岩本和夫、雲丹亀利彦、重政啓治、清水豊、津田一江、松本祐子、室井佳世、伴戸玲伊子さんの8人でした。前の7人は秋や春季での受賞を重ねたうえでの受賞でしたが、伴戸玲伊子さんは初入選の初受賞です。今春女子美の大学院を出たばかりで、5月に銀座の小野画廊で友人と2人展を開いていました。そうと分かっただけでもうワクワクしてくるでしょう。
ほかには、伴戸さんと女子美で同級生の藤倉明子さんも初入選です。武蔵美大2000年院修了の木島孝文と島崎夏世、1999年院修了の岸本明子の3人も着実に入選を重ねていい感じです。多摩美大では2000年院修了の鶴巻謙郎、1998年院修了の桜井律子。東京芸大はこの頃勢力が弱いですが、1999年卒の日南山貴司というところです。
ちょっと歳上になりますが東京芸大院95年修了の阿部千鶴さんは見るごとに汚れなく清らかになっていきます。清新さに限界はないのかと感心してしまいます。もちろん作品の話です。
先入観を持って作品を見るのは台無しですが、思考のきっかけになる要素を持っていることはいいことだと思います。まだ知られていない若い作家だから、見る側も精神を開放して、自分の思った通りに解釈してしまいましょう。
「うーん、初めて見る作家だが、ここを変えればよくなるぞ。なかなか将来性がありそうだ」とかなんとか人に言ってみるのもいいでしょう。
創画会
第27回創画展
東京展 2000年10月17日~10月31日 東京都美術館
京都展 2000年11月3日~11月16日 京都市美術館
名古屋展 2000年11月21日~12月3日 愛知県美術館ギャラリー