書店POPから火がついた『思考の整理学』

思考の整理学 (ちくま文庫)
<DATA>タイトル:『思考の整理学』出版社:筑摩書房著者:外山滋比古価格:546円(税込)
「東大・京大で1番読まれた本」(※2008年大学生協調べ)ということで、テレビでも紹介され、話題になっている『思考の整理学』。1983年に単行本が出て、文庫化されてからも20年以上経っている本がブレイクしたきっかけは、盛岡の書店員・松本大介さんの手書きPOPなのだそう。筑摩書房のサイトで経緯が語られています。松本さんのこんな言葉が印象的です。

僕はこの本が二十年前の本だということを知らずに読んでいたんです。読んでから最後を見て、「ああ、二十年前に出た本なのか」ということに気づきまして、全く色褪せないということを感じました。

知的生産術について書いた本は、過去にもベストセラーが出ています。しかし、ほとんどの本は、一時的にはブームになっても、いつの間にか消えていってしまう。なぜ本書は、ずっと版を重ね続け、現代の若者にも支持されているのでしょうか。

実際に読んで考えてみました。

四半世紀以上前に書かれた本なのに読まれている理由とは?


四半世紀以上前に書かれた本なのに読まれている理由

思考の整理学 (ちくま文庫)
<DATA>タイトル:『思考の整理学』出版社:筑摩書房著者:外山滋比古価格:546円(税込)
本書は6部構成。第1部では、知識はあるが自分の頭で考える力がないグライダー人間と、グライダー人間ばかり育ててしまう学校の問題点を指摘しています。このあたりが、勉強はできるけれども創造力には自信がない学生や、資格を取得したり、ビジネス書を読んだりして努力しているけれども、いま一つ結果につながらない社会人の心を掴んだのでしょう。

第2部以降では、著者の思考方法を述べていきます。そのなかで核になると思われるキーワードが“見つめるナベは煮えない”。何度も繰り返し出てきます。つまり、研究テーマを決めたり、仕事で企画を立てなければならないとき、アイデアや素材を集めたら、しばらくそっとしておくことが重要だということ。そうすると、麦が発酵して酒になるように、アイデアや素材が熟成して、テーマや企画になる。急ぐとなかなか形にならない。なったとしても、弱いものになってしまうというのです。

だけど、現実には急いでしまうんですね。論文や仕事には〆切があるから。特に仕事では、速く結果を出すことが求められます。熟成されるまで待ってはくれません。だから普段から、さまざまなアイデアや素材を寝かしておかなければ……ということで、情報の整理法も紹介されます。

一つひとつの方法は、驚くようなものではありません。けれども、編集の仕方が絶妙です。まず、生活を朝型にするとか散歩するとか簡単なことから始めて、だんだんメタノートを作るといった高度な作業に移っていくので入りやすい。文章は平易で、具体例は豊富。考えがまとまらないときはとにかく書いてみようとか、せっかく見つかったテーマや企画を否定されると凹むので、褒めてくれる人に会おうとか、癒されるアドバイスもあります。

そして何より、著者の体験談から、自分だけの研究テーマを発見したときの喜びが伝わってくるところが本書の魅力ではないでしょうか。じっくり考えることって面白そう! そう思わされる一冊です。

【今年一番の話題の本といえばこれ】
寄り道しながら『1Q84』を読む【1】

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。