高嶺の花に魅せるセルフプロデュース

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写真はあるキャバ嬢の名刺。数年前からは顔写真入りも流行している
源氏物語54帖の題名にちなんでつけられた、宮中の女官や武家の奥女中などの呼び名、源氏名。近世以降は遊女や芸者につけられ、現代ではキャバクラ等のホステスの営業の中だけの名前として一般的だろう。と、唐突ながらここでクエスチョン。『一愛』。これ、ボクが知り得るキャバ嬢で最も印象に残った名前なんだが、いったい何と読むのでしょう。

答えは『にのまえあい』。一と書いてにのまえと読ませる。一が名字で愛が名前だ。

「漫画やアニメの世界の主人公ってインパクトのある名前が多いじゃないですか。名前だけでなく名字を付けるのは、その影響が大きいと思います。覚えにくいけど忘れないような難しい名前を付けてみたり、わざと読みカナを難しくして『こう読むんだよ』みたいな。『一愛』さんはまさにコレですね。そこには高嶺の花に魅せるためのセルフプロデュース的な意味合いも含まれています」

こう話すのは、キャバクラ1号店で知られる新宿歌舞伎町の『CATS』を立ち上げたレジャラース・グループの担当者。キャバレーもキャバクラも、昔は松田聖子や中森明菜など芸能人の名前を使うことが多かったが、肖像権等の問題で代わりに源氏名を作るようになった。その名残か、少ないながらも現在でもキャバレーや老舗のキャバクラでは芸能人と同じ名前のホステスが在籍しているという。

「本名と全く違う名前を付ける方もいますが、基本的には本名に似ている名前を付ける場合が多い。というのは、源氏名を呼ばれて自分が反応できなければ結局、名前の意味がなくなってしまいますから。例えば、由里(ユリ)さんという女性がいれば、違う当て字で優里にするコもいれば、由里子にするコもいます。また、入店時は基本的に下の名前だけですが、慣れてきて指名を取るようになるとフルネームに変えることが多いようです」(レジャラース・グループ担当者)

ご存知の通り、水商売に見る源氏名は本名を知られたくない女性が使う場合が多い。というのも、男女間の疑似恋愛を楽しむ場のため、女性に対して逆恨みをする輩も少なからず存在する。詳細はハブくが、個人情報を暴く糸口になりストーカー等のトラブルに発展しかねないからだ。

キャバ嬢を演じる女優めいた覚悟

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写真は永久欠番・瀬名今日子さんの著書『愛されの法則 キャバイブル』(イーハトーヴフロンティア刊)
経験者であれば前の店での名前を尊重する。同じ名前で各店を渡り歩くキャバ嬢も多く、本名と同じく愛着のあるものなのだ。が、困るのは、移籍先に同じ名前のコがいた場合だ。名字のかぶりは問題ないが、一つの店でふたりが同じ名前を使うことはできない。というのも、指名客は下の名前しか覚えてないことが多く、名前が被ると混同するのからだ。
また、A店に由里というコがいて、後からいくら名前が売れている由里が入ってきても由里という名前は使えない。これは経歴や水商売歴に関係なく断行される、業界のルールでもある。

「ナンバーワンになって名前が売れると他の女のコも同じ名字、名前を使いたくなる。だから名前が似て来ちゃうっていうのはあるんですね。実際、未経験のコでも『Aさんに憧れているので同じ名前にしてください』ってケースは多いですよ」(前同)

ならば最新の名付けの事情も聞いてみたい。それに現在、流行している名前は何だろう。

「女のコにはまず、呼ばれて反応できる名前を聞きます。無ければ親友の名前だったり、そのコの出身地から拝借したり。県名だと露骨すぎるので市町村などから使えそうな名前を選びますね。名字は、例えばキャバクラ嬢っぽい名字がいいと言われれば姫条、白咲、一条、一ノ瀬など明らかにキャバクラで働いているっていう名前を何個か出してあげて、その中から名前と合うもので決めます。また名刺を作る場合、名前だけより名字があった方が安っぽくならない、という理由も。愛称ではなく、あくまで源氏名だからでしょうか」(去る4月にオープンしたばかりの吉祥寺のキャバクラ「glitter」代表)

源氏名はデザインであり、これからキャバ嬢という別人格を演じるという女優めいた覚悟、といったところか。

ちなみにキャバクラの源氏名には、球界の永久欠番に見る「今後ふたりと存在しない源氏名」めいたものがある。それは伝説のキャバ嬢・青木瀬里奈さんに代表される、二階堂静香、瀬名今日子、浜崎ひとななど、かつての売れっ子キャバ嬢たちの源氏名。仮にこれらを踏襲したいコがいても店長は「その源氏名は使わない方がいいよ」と言い、店の先輩キャバ嬢も「名前負けするよ」とたしなめる。彼女たちを知る誰もが、さもありなんと納得するエピソードだろう。

事実、ボク、先の青木瀬里奈さんに取材等でお会いしたことがあるのだが、プライベートで一度だけお店に行って、随分と間が開いて約2年ぶりに再来した際「2年ぶりくらいですよね。前はクラブの話で盛り上がって....」などと指名すらしておらず、しかもわずか数分話しただけなのに当時を事細かに覚えていてくれて「なんて出来るキャバ嬢だ。この人は別格!」と感動すら覚えたものです。

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