「お化粧テクノ(1)~ルージュマジック」に続く第二弾は1982年夏から1984年春まで。お化粧テクノの黄金期であります。

1982年夏~赤道小町ドキッ

赤道小町ドキッ
夏になると様相が一転します。今度は、カネボウが総立ち久美子こと山下久美子による「赤道小町ドキッ」で形勢逆転を狙います。山下久美子自体は、当時からテクノなイメージが希薄なわけですが、これは松本隆=細野晴臣の黄金コンビによるトロピカル系テクノ歌謡の金字塔と言えましょう。結果、オリコン2位を記録し、彼女の代表曲となるわけです。カヴァーについては、別企画「裏YMOカヴァー」でさらに詳しく書くつもりです。

キスラ・キスラ 踊るファンデーション
さて、ここでマックスファクターが参入します。82年夏のパンケーキのキャンペーンに使われたのが、ブッシュマンの「キスラ・キスラ 踊るファンデーション」。パンケーキとは、マックスファクターが発明した水で使うコンパクト・ファンデーション。ブッシュマンとは、当時、ニカウさんも来日して盛り上がった映画『ブッシュマン』由来だと思われますが、決してニカウさんがやっているわけでない。サウンドを聴く限り、ムーンライダーズが絡んでいるに違いないと勝手に確信を持っています。

1982年秋~すみれSeptember Love

すみれSeptember Love
カネボウのテクノ路線は、一風堂の「すみれSeptember Love」で82年秋へと続きます。それまでは何らかの形でYMOが絡んでいたのですが、これは珍しい初めての非YMO(土屋昌巳自身は、YMOのメンバーとのコラボはしています)によるヒットしたテクノ化粧品CMソングです。一風堂としては既に3枚のアルバム、5枚のシングルを出し、土屋昌巳のソロ『Rice Music』をリリースして直ぐに後ですね。

MAGIC VOX
結果、オリコン2位と一風堂としては最大のヒット曲となり、ご存知のように後にSHAZNAがカヴァーをしました。今までオリジナル・アルバムがちゃんとCD化されていなかった一風堂ですが、2006年には、ボックスセット『MAGIC VOX~IPPU-DO ERA 1979-1984』がリリースされました。これを聴くと、「すみれ・・・」だけが一風堂の魅力でない事が分かって頂けるはずです。UKニューウェイヴ的なレゲエの解釈などがちゃんとできる稀有なバンドでした。

1983年春~恋は春感

夢・恋・人
83年はもうテクノが化粧品CMを占拠します。春は3社がテクノ祭。カネボウは、元キャンディーズの藤村美樹のソロとしてはデビュー曲となる「夢・恋・人」。松本隆=細野晴臣によるテクノ歌謡ですが、それほどヒットした記憶はないですね(調べてみると、オリコン13位)。豪華なサポート陣で作られたアルバム『夢・恋・人』は、一度CD化されましたが、廃盤なので再評価の意味もこめて再発してほしいです。

う、ふ、ふ、ふ
対する資生堂はEPOの「う、ふ、ふ、ふ」を起用しました。80年代のEPOはこの時期、化粧品とは蜜月関係にある事がこの後読み続けるとわかります。また、「ひょうきん族」で使用されたシュガーベイブのカヴァー「DOWNTOWN」からアレンジャーとしてEPOと抜群のコンビとなった清水信之は、EPOの高校の先輩で、この曲も手がけています。清水信之のアレンジはテクノというと言い過ぎかもしれませんが、分かりやすい教授サウンドといった感があります。

EPO自体はそれほどテクノのイメージが強くないですが、「JOEPO~安易テクノポップの巻」や教授の「TIBETAN DANCE」のカヴァーとかもしていますから準テクノな人です。体育会系の大貫妙子と僕は呼んでいます。なお、「う、ふ、ふ、ふ」は現在、ダイハツ・ミラのCM曲としてリヴァイヴァル中であります。

恋は春感
今まで登場しなかったコーセーは、83年春、山口美央子の「恋は春感」でテクノ化粧品CM戦線についに参戦。なんだかモデルの山口小夜子に似ていますが、妹ではないでしょう。エキゾチックなテクノ感と乙女なメロディーがうまく結びついた名曲だと思いますが、オリコン最高位は22位で終わっています。いい曲だから売れるわけではない。ちなみにこの作品を作詞・作曲したのは山口本人ですが、その後は歌手というよりも作家として岡田有希子、高井麻巳子など数多くのアイドルなどへ曲を提供する裏方に回ってしまったようです。また、前述の土屋昌巳のアレンジによりこのシングル曲(この曲だけ後藤次利のアレンジ)を含めたサード・アルバム『月姫』(1983年)にリリースしています。

ゴールデン☆ベスト
実は、コーセーにはこれ以前に使った特筆すべき曲というのがあります。鈴木慶一のプロデュースでアルバム『Motion Picture』 でデビューしたシネマが、81年前後にコーセー・エスプリークのCM用に「恋のバースティー」という曲を作っています。松尾清憲や鈴木さえ子がいたシネマはテクノポップというよりもブリティッシュ系モダンポップですね。この曲はもろに商品名が歌詞に出てくるのが珍しいです。このCM曲はタイアップ曲として発売されることも無く長らく封印されていましたが、2006年に発売された『Motion Picture』全曲も含んだ『ゴールデン☆ベスト』でやっと日の目を見ました。

1983年夏~君に、胸キュン。

君に、胸キュン。
カネボウ83年夏はご存知、YMOの「君に、胸キュン。」(作詞は松本隆)です。82年冬にはキャンペーンソングは無かったので、「赤道小町ドキッ」から4連続テクノ路線を採っている事に時代を感じます。皮肉なことにこの曲のオリコン1位を阻んだのは、松本=細野による松田聖子の「天国のキッス」です。ちなみにカネボウ83年秋は、横浜銀蠅の「おまえに、ピタッ!」。もう一つの80年代を感じます。

1984年春~くちびるヌード

くちびるヌード
YMOの起用で一つのピークを迎えたテクノ化粧品CMソングですが、資生堂84年春は、高見千佳の「くちびるヌード」。これはEPOが作詞・作曲、清水信之が編曲と基本的にシンガーは変わったものの、「う、ふ、ふ、ふ」路線です。中華テクノ歌謡として完成の高いこの曲は、EPO自身が後に「くちびるヌード・咲かせます」としてセルフカヴァーをしています。また、高見千佳は、戸川純・作詞、矢野顕子・作曲、戸田誠司・編曲という豪華な作家陣による「怒涛の恋愛」という名曲も歌っていますね。

次回はついに最終回! まだまだありますお化粧テクノ。

お化粧テクノ(1)~ルージュマジック
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