shop MECANO

1966年に出来た、当時としては六本木ヒルズのような場所、それが中野ブロードウェイ。オタクの聖地的な見方もされますが、現在、そこには秋葉原とはまた違う、レトロかつマニアックな空気があります。中野ブロードウェイの3階にあるのが、shop MECANO。テクノポップ界(そんなものがあれば・・・)では知らない人がいたらもぐりだと思われる、MECANOの店長のメカノこと中野泰博さんにインタヴューしました。
shop MECANO(外観)


shop MECANO

テクノポップ・レコ屋でやっていける?

ガイド:
今日は古い話もお聞きしたいのですが、まずはshop MECANOについて教えてください。テクノポップやニューウェイヴが割りと多いレコード屋さんはありますが、MECANOはテクノポップ&ニューウェイヴに特化している、たぶん世界で唯一のレコード屋さんではないかと。お店が出来たのを知った時、All Aboutで同じようなジャンルでやっていて、とても勇気づけられました。最初からこのジャンルで十分やっていけるという勝算はあったのでしょうか?

メカノ:
shop MECANOはテクノポップに強い店ではありますが、実はもう少し間口は広いんです。つまり私のセレクト・ショップなので、ある人にとってはジャーマン・ロックに強い店であり、ある人にとってはDJネタの店でもあるんです。私は雇われ店長時代、渋谷地区3店、オールジャンル計5フロアの管理をやっていた事があります。当然売り上げに対するそれぞれのジャンルの割合は把握していました。その中で私が仕掛けたものについて考えたら、1/10の規模でも自分でやっても営業可能、という読みはありました。金銭的なことは当然出店前にシュミレートはしましたよ。置くものを選り好みしているので大儲けは出来ませんが、おかげで二年間潰れずに営業出来ています。

ガイド:
渋谷でも秋葉原でもなく、中野ブロードウェイという立地を選んだ理由は? 僕は東京人ではありませんが、レコード屋さんが結構あったんで、僕自身も割りと知っていた場所です。なんだか、懐かしいというかレトロな風情がいいですね。食べ物コーナーでは、ばかでかいソフトクリームとかも売っていていい感じです。

メカノ:
場所はリアル店舗を出すさいには最重要ですね。かといって渋谷新宿は家賃高いですから(笑)。ゆるく普通の中古盤屋をやるなら地元の国分寺でも良かったんですけど、出来れば好きな音楽の店にしたかったし。高円寺も考えたのですが、例えば「高円寺純情商店街のどこそこの角を曲がる路面店」より「ブロードウェイ3F」といった方がはるかにわかり易いでしょう。それにブロードウェイってまんだらけとかレンタル・ボックス多いでしょう。潜在的にね、マニアックな人が多く歩いてるんです。メカノは結構固定客以外の通りすがりのお客さん多いんですよ。有頂天のCDかけてたら前を通りがかった女性が「あっ!有頂天のCDあるんですか!」と飛び込んで来たりして。そんなことは他所では考えられない。同じフロアにCD、LP、DVD屋がありますがまったくライバルとは思っていません。ジャンルは勿論、営業形態が全然違いますから。むしろ新しいお客さんを呼んでくれて感謝してます。

ガイド:
店名でもあり、中野さんのニックネームでもあるメカノという名前は、どこから来たんでしょうか?

メカノというバンド

メカノ:
メカノ人形
単純にナカノが機械音楽が好きでメカでメカノなんですが、出典は80年前後のオランダのニューウエーブ・バンド*です。生涯5本の指に入る位好きなバンドで、お店のマークにしているメカノ人形も、メンバーに了承取ってリライトして使っています。音は全然テクノポップじゃないです。キーボードの入ったロックなんですが、フレーズやリフ、ギター・ソロまで細かく計算づくのアレンジをするバンドです。

一昨年からヴォーカリストとベーシストで活動を再開していますが、ユーロピアンな翳りのある歌物になっていて万人向けではありません。究極の全盛期音源集「The Half Inch Universe」は最高ですが現在在庫切れらしく入手は難しい。私がNETで使うHN「養子」も実は彼等の歌の一節でして「I wore the face of the frozen one. wasn't born, picked up life, as adopted son」というのの最後の部分です。異なった由来の部品を接続して生まれた、ロックやポップスとは血の繋がっていない存在、という意味です。
*スペインに同名のエレポップ・バンドがありますので間違わないように。

ディスクユニオン店長時代

ガイド:
中野さんがディスクユニオン渋谷2号店の店長をやっていたのは、いつからいつまでなんでしょうか? その時の2号店はどんな感じだったのでしょう? 関西人としては、ユニオンがいっぱいある関東はうらやましいのです。

メカノ:
93年ユニオン・テクノ・コーナー前
84年に入社して、2号店の店長になったのが88年かな。当時ユニオンの最短記録の筈です。店長昇進の。その前は新宿店でチーフだったんですが、輸入のプログレとニューウエーブ担当でそれはそれで一時代あったんですよ。バッハレヴォルーションの小久保さんとか、静岡から上京したての石野卓球さんとか常連でした。今やユニオンのプログレ館といったら有名ですが、あれは上司のKさんと私がやっていたコーナーがそもそもの始まりです。20年前にマグマのCDとか百枚単位で売りましたから。

店長就任当事の渋谷2号店は現在のあのビルの地下ワンフロアで、インディーズの店でした。その頃渋谷の中心は公園通りの方で、宇田川町って裏通りだったんですよ。なにしろ隣りは畳屋だったし。そもそも私はユニオンに入る前にバンドやってたんで日本のバンドの事は多少詳しかったんです。インディ店長として色々な企画をやりました。CD購入者特典でビデオ上映会とか、オリジナル・グッズとか、サイン会とか、一日店長とか。結構喜ばれましたよ。でもバンドブーム後期はキつかったなぁ。ゴミなバンドがやたら出てきて(笑)。

そういった仕事で稼いで、店の端っこに趣味のテクノコーナーを始めた訳です。最初はレコードとCDたった一列でした。テクノポップなんて全然CDになってなかったし、LPも廃盤だらけだったんで。しょうがないから中古も混ぜて、当事誰もテクノとは呼んでいなかったクラスターとかもルーツとして入れたんですよ。そしたら何故か良く売れました。後にわかったんですが、買っていたのって田中雄二さんとか、ケン・イシイさんだったんです。クラフトワークの『The Mix』は91年リリースでしたが、その頃はもういっぱしのコーナーになっていました。面白かったですよ。リリースされるもの全て、「ドイツ盤の英語版」とか「アメリカ盤のみ一曲MIX違いの12インチ」とか「カセット・シングル」なんてのを仕入れる度に砂原良徳君とかトランソニックの永田君なんかが走って買いに来てくれましたね。アメリカのレジデンツ・ファンクラブにコンタクト取って、FCオンリーのCDやグッズを仕入れて売ったりもしました。

あと私は永年の平沢進ファンですから、当然ヒイキして品揃えをしてました(笑)。リリースの度に何かしら特典を付ていたら固定客が雪ダルマ式に増えてくれて、しまいには事務所から話をもらってレーベル「DIW/SYUN」というシリーズを17タイトルもリリースすることになりました。で、グループ全体のテクノ担当として95年いっぱいで店から本部へ移動になるまで、約7年間ですね。2号店は。

ガイド:
雑誌『レコード・コレクターズ』で連載している「レコ屋日記」も読ませていただきましたが、中古レコード屋に勤めたきっかけはとにかくレコードを聴きまくりたいという不純な動機だったと書かれていますね。ユニオンに居た時代、1日に何枚くらい聴いていたんですか?

メカノ:
店にいる10時間前後は連続して何か音楽がかかっていますよね。自分の好みでなくても同僚がかける何かを常に聞いてきました。だから私はクラッシュだろうがストーンズだろうがオジー・オズボーンだろうがブルーハーツだろうがあらゆるアルバムを聞いて知っています。仕事を始めたのは84年でしたが、中古も扱ったために古いカタログも含めジャズ、ブルース、ソウルなどもです。さらに自分の趣味でも店頭でかけられない非ポップなものを一日3枚借りて家で聴いて、他に新譜も旧譜も買っていましたから、寝るか、メシ食っている時間以外は音楽聴いていました。当事はTV持っていませんでしたから。音楽ビデオが見たかったんでしかたなく買いましたが、アンテナに繋いだのは3年位後でした。

幻のLLE

ガイド:
LLEというバンドで活動されていたんですよね。残念ながら聴いたことがないのですが、どんなサウンドを作っていたんですか?

メカノ:
中野ライヴ
あはは。そこ来ますか。正確にはLLEという名前のバンド集団があって、そこのレコード製作係だったんです。インディー以前の「自主制作」の時代ですね。私はイギリスでインディ・レーベルを体験していたので、日本でもやろう、と思っていたんです。81年から4年までかな。カトゥラ・トゥラーナとかメトロファルス、リビドーなんかはLLEがデビューです。そこにはまだ米米になっていなかった石井達也もいたんですよ。

私のバンドはD.R.Y .projectといってカセット・アルバム二本とシングル二枚作りました。全然売れなかったけど。音はリズムマシンとシンセのリフやベースをカセットのピンポン録音で重ねてオケを作って、ライヴではエレクトリック・ドラム入れて、私はシンセとギターと、恥ずかしながら唄も歌いました。
 
自分で「良い」と思ってやっていましたから自信はありましたよ。レコードは「ロックマガジン」にも好評が載ったし、来日したジョン・ピールが気に入ってラジオでかけてくれました。でもそんなスタイルと音楽って当事他にいなかったんで対バンには苦労しました。結果的には自分をプロモーション出来なかった、というのが敗因ですかね。

たまに聞きたいと言ってくれる奇特な方がいらっしゃるのですが、マスターがオープンリールなんで再生出来ないんです。そこからちゃんとCDにするにはかなりの作業時間がかかりそうで、なかなか…。

ジャーマン・ロック

ガイド:
ジャーマン・エレクトロ・リミックス
中野さんは1997年にMARQUEEから出た『ジャーマン・エレクトロ・リミックス』を編集されているジャーマン系研究家としても知られていますが、この本を作ったきっかけは?

メカノ:
ジャーマンロックって70年代はプログレに分類されてたんですよ。キング・クリムゾンやジェネシスと比べられて。で、当然評価は低かったんです。妖精物語じゃないし変だから。ところが何にも似ていないから10年後、20年後に別の方向から聞いても驚ける。ジャーマン・ニューウエーブ、ジャーマン・テクノと時代を移ろいながら、でも「踏み外しても一本槍」なジャーマン音楽は面白いものが多いです。それぞれに愛好者はいますが、そこを全部貫く「流行り歌ではない核を持った音」がわかると、より音楽が深く、面白く聴けるのではないか、と思いまして。あと私の音楽の聞き方、変遷ってのは同時代には賛同者に出会った事が無かったので、あの本を出した当時はそれが伝わるかな、と思いました。でもあの本から10年たっているので今やったらかなり違う切り口になると思います。

ドイツ~イギリス

ガイド:
ドイツへはご自身でも結構行かれているんですよね。やっぱり、入り口はクラフトワークだったんでしょうか?

メカノ:
いや最初はバックパッカーで。21歳の時ですね。それまで滞在していたイギリスから出た後、ヨーロッパ各国、スペイン、ユーゴスラビア、ギリシャまでほっつき歩いた放浪の最終地点でした。その頃にはヨーロッパ鉄道のフリーパス券が切れていてヒッチハイクで移動してました。ミュンヘンで「コンピューター・ワールド・ツアー」を見れたのは日程の都合はつけましたが偶然です。

その後は取材やら仕事、最近はジャーマンロックに強い友達のレーベル「キャプテン・トリップ」のツアー添乗員とかでも行ってますね。私、普段は酒を飲まないんですが、ドイツのビールは別ですね。実にウマイ。あとドイツの施設の機能美はいつも惚れ惚れします。だからドイツに行くのはクラフトワークが特別目的ではありません。勿論クリング・クラング・スタジオは見に行きましたけど。mixi見れる方は下記日記をどうぞ。

ガイド:
でも、ロンドンにもおられたんですよね。ドイツでなくてどうしてイギリスに?

メカノ:
大学行くより海外生活をした方が面白かろう、と高校時代から計画していました。親に言い訳として英語をマスターしに留学すると言いまして。アメリカは好きじゃないんで選択肢に入りませんでした。そもそもプログレが好きだったってのもあり、なら本場はイギリスだろう、という19歳の判断で。でも渡英資金を貯めているうちにニューウエーブがどえらい事になってしまい、その火中に飛び込む結果になりました。あれは得がたい体験でした。それもmixiに書きましたが、

見れない方に説明すると80-81年にロンドンで
バウハウス /デッド・オア・アライヴ /リーグ・オブ・ジェントルマン /サイケデリックファーズ /ドクター・フィールグッド /スプリット・エンズ /キャバレー・ボルテール /U2 /リック・ウエイクマン /YES /メタボリスト /レモン・キトゥンズ /ルーダス /エッセンシャル・ロジック /UKサブス /DAF /ディス・ヒート /ポップ・グループ /シンプル・マインズ /タキシード・ムーン /ホークウインド /タンジェリン・ドリーム /モノクローム・セット /OMD /シアター・オブ・ヘイト /ファッド・ガジェット /キリング・ジョーク /ディスチャージ /ペル・ウブ /ヴァージン・プルーンズ /MO-DETTS /ジャパン /チェルシー /オウ・ペアーズ /ジョン・アンダーソン /トーキング・ヘッズ /ヒューマン・リーグ /ウルトラヴォックス /ピーター・ハミル /SPK /ACR /ニューオーダー /ドゥルッティコラム /スロッビング・グリッスル /NON /CLOCK DVA /MAGMA /RICHARD PINAS /ラウンジリザース /アソシエイツ/スネークフィンガー……
などを見たんです。これは人生狂いますよ。(笑)
* * *

インタヴュー前編はこの辺で終わりとします。引き続き、MECANOお勧めディスクなどは後編にて。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。