何だか、映画のガイドでもないのに3週連続で映画関連記事となりました。KERAことケラリーノ・サンドロヴィッチが脚本・監督として放つ80年代青春映画『1980』・・・80年代回帰現象が叫ばれる昨今ですが、やはりこんな恥かしくって素晴らしい映画は、紹介したい。

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KERAって当然知ってますよね。日本のインディーズ・レーベルの象徴ともいえるナゴムレコード(トレードマークのアヤトリシアワセ印はゲルニカのメンバー、太田螢一によるもの)主宰者。ホントに家内制手工業みたいです。そして、メンバーがくるくる変った有頂天のリーダー。有頂天以外にも、大槻ケンジ、内田雄一郎との空手バカボンやソロとして活動。有頂天後には、映画でも好演したみのすけやP-MODELのメンバーとしても活動した中野テルヲらとのロング・ヴァケーション(21世紀に再活動する予定だったがやめちゃったみたい)や新生ナゴムからザ・シンセサイザーズ(1999年12月のイヴェント「DRIVE TO 2000」でもライヴ)として活動したテクノポップ~ニューウェイヴの落とし子的存在。ナゴムが和製アタタック(ドイツのニューウェイヴなレーベル)ならば、KERAは和製ピロレーター、有頂天は和製デア・プランというの言いすぎです。もっとナゴムの事が知りたければ、平田順子のバイブル的力作『ナゴムの話~トンガッチャッタ奴らへの宣戦布告』(2000年)を読むしかない。

YMOの遺伝子~第2回(空手バカボンも「Rydeen」をカヴァー)
プレパラート過剰(平田順子さんのサイト)

ケラリーノ・サンドロヴィッチは、劇団健康を経て1993年にナイロン100℃を立ち上げ、演劇界の人となる。知らないうちに、ミュージシャンKERAよりも演出家ケラリーノとしての名声を得る事に。2003年初夏、僕も、ムーンライダーズのアルバムのタイトルから頂いたミュージカル『Don't Trust Over 30』(DVDリリースもされています)を見に行きました。かなりメジャーなキャスティング(ユースケ・サンタマリアや最近結婚した奥菜恵)なのですが、ナイロン100℃の役者たちと作り出すナゴムとはまた違う、独特のバランス感覚を持った世界に吸い込まれました。そして、たまたま雑誌でともさかりえのインタヴュー記事をたまたま見かけて、『1980』で映画監督デビューをする事を知り、映画のタイトルだけで行かずにおられない心境となりました。

ナイロン100℃

さて、映画『1980』について。細かい話は、↓の公式サイトに盛りだくさんに掲載されているので僕がここで説明する必要は無い。1,000円出せば、写真の『1980事典』というパンフとしては豪華なパンフも買える。ジョン・レノンが銃弾に倒れた翌日から、そのシーンは始まり、しびれる台詞を銃弾のように放つ先生(長女)を演じる犬山イヌコ、恋多きほとんど淫乱な元アイドル(次女)を演じるともさかりえ、聖子ちゃんカットの岡田有希子のような女子高生(三女)を演じる蒼井優の三人姉妹が繰り広げる1980年の12月の話。1980年を体験した者たちにとっては、こだわりのディテールを発見するたびに辱めを受ける栄光の1980年を供養しているような気分にさせられる映画。そして、さだまさし呼ばわりされるテクノカットの冴えない奴、衣笠君は誰よりも途方も無く悲しい・・・

■1980■
*12月6日よりテアトル新宿で公開。全国でも順次公開予定。詳しくは↑の公式ページ参照。

では、次は重要なサントラ『1980』の解説。
サントラ『1980』は、KERAがプロデュース、そして岸野雄一がサウンド・プロデュース。ナゴム・レコードの命名者でもある岸野雄一は、京浜兄弟社の社長。でも、現在は会社(有限会社として登録されていた)としての活動でなく、岸野雄一のプロジェクト的名称と捉えるべきでしょう。本人曰く「集団がきらいな人達が集まって作った音楽研究集団」。つまり、ユルイ閉鎖的集団。ナゴムと京浜兄弟社はスタンスを異にする部分もありますが、人脈的には繋がっています。京浜兄弟社は、加藤賢崇(映画『たんぽぽ』で名演)がいた東京タワーズのファンクラブが母体として常盤響によって名付けれられました。まぁ、そんな人たちがブレインとなって映画にも登場する人たちと共演してできたサントラです。

01. Fantastic Explosion: タイトゥン・アップ
いきなり「テクノ、テクノ」で始まる。朝の登校シーンでの衣笠君と歌川カナエ先生(犬山イヌコ)との会話のサンプリングが挿入された、YMOもカヴァーしたArchie Bell & The Drellsの「Tighten Up」をカヴァー・・・というか明らかにYMOのカヴァーですね。カヴァーしたのは、TransonicのFantasitic Explosion・・・この人たちも辿っていけば、京浜兄弟社へと繋がっていきますね。

02. Plastics: Good
今回、唯一使われた80年代テクノポップのオリジナル。映画の冒頭で使われて、これは普通の80年代ではなくて、あのテクノな80年代を扱った映画なんだと予感させる。

03. KERA: ランナウェイ
KERA自身が、シャネルズのドゥ・ワップ歌謡をニューウェイヴ・ファンク歌謡的にカヴァー。編曲は鈴木慶一(カメラ屋のオヤジでも出演)、演奏はかなりこれまた80年代ニューウェイヴなラインナップ~鈴木慶一、鈴木智文(元ポータブル・ロック)、中原信雄(元フィルムス、ヤプーズ)、金津宏(元プラチナ・キット)。

04. 岸野雄一: 1980サントラ1~三姉妹ハイスクール登校編~
スペース・ポンチとしても活動する岸野雄一によるサントラに造詣が深いと思われる本格的サントラ。

05. 犬山イヌコ: 防人の詩
さだまさしの原曲を鈴木慶一がクラフトワーク型テクノポップにアレンジ。さだまさしと言えば、ニューウェイヴ少年少女の仮想敵国である。もっと悪意がこもったカヴァーかと思いつつ、意外としっくりしすぎてやばい。やはり、衣笠君へのメッセージなのかこれは? 犬山イヌコですが、1993年にKERAがプロデュースした『東京ポーキュパイン・コレクション Vol. 3 feauring INUYAMA INUKO』でロング・ヴァケーションをバックに似非フレンチ・テクノポップを歌っていました。

06. ともさかりえ・犬山イヌコ・蒼井優: 魂のジュリエッタ
出だしからもろテクノ歌謡の確信犯。誰が作ったんだ? 岸野雄一だ。元エキスポの松前公高(この人も京浜兄弟社系)が協力。

07. 岸野雄一: 1980サントラ2~欲望という名の私
ヒゲの未亡人こと岸野雄一・・・途中で「ジンギスカン」になるのが意外で楽しい。

08. SKYFISHER: ゼロ・エミッション
劇中にもライヴ演奏をしてくれるスカイフィッシャー。80年代リヴァイヴァル、エレクトロクラッシュ以前の1990年代末、ネオ・ニューウェイヴという小ムーヴメントがありました。TiN Starからリリースされた『Tokyo New Wave Of New Wave '98』(1998年)には、スカイフィッシャー、ポリシックス、モトコンポ、スプージーズなどのバンドが参加。初期P-MODELを彷彿とさせるテクノパンク!

SKYFISHER

09. 東馬健: セルロイドの夜
及川光博がプロデュースした自称、平成歌謡界のハレー彗星。映画における彼の節操の無い流行を追い続ける姿勢には、敬意を払わずにはおられない。アルバム『流星』(2002年)に既に収録されている曲であるが、あまりにこの映画にはまりすぎている。それは、1980年がムード歌謡という意味ではなく、彼の姿勢である。なお、ムード歌謡曲が10曲詰まった東馬健ヒット・コレクション『セルロイドの夜』もたったの1,575円で発売中。

◆東馬健の公式ウェヴ

10. 岸野雄一: 1980サントラ3~終業式・操行ゼロ~
自称「スタディスト」、岸野雄一・・・さすが勉強家と言えるエピソード。以前、懐かしのハイパーカードで出来た『京浜購入ガイド1.0』(94年版)という貴重な資料を頂き、こちらのページを作る参考にしました。

11. 星陵高校映画研究会: TOKIO (Making plan for TOKIO version)
これも「ランナウェイ」と同じ編曲・演奏で、沢田研二のテクノ歌謡(サウンド以上にコンセプト的に)をXTC(「Making plan for Nigel」から推定)風にカヴァー。

12. TOKIO (Instrumental)
こっちはインスト。

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