ジェロが歌うジャパニーズソウル

海雪
ジェロ 『海雪』
タイトル曲は作詞:秋元康、作曲:宇崎竜童という豪華タッグの手によるもの
史上初の黒人演歌歌手として話題のジェロは1981年生まれ。

新人演歌歌手の営業の基本である「レコード店巡り」を地道に続けている頃かと思いきや、早々にブレイクしてその活動の規模を日に日に大きくしているようです。

HIP HOPなファッションに身を包んでいるものの、優等生的な受け答えや優しげな眼差しには思わず「ご飯食べてるの?」と訊きたくなるようなチャームがあります。これは演歌の元々のユーザー層であるオバサマ達にはたまらないものがあるでしょう。

そして歌は「演歌」そのもの。BLUESとはまた違う湿り気を歌に滲ませていく力は、ただ日本語を話すことが出来るというレベルを大きく越えたものです。

間奏でダンスをビシッと決めて、歌が始まるとまた演歌の世界にすっと戻る、このギャップも素敵。音を消して見たら演歌だと思う人はいないでしょう。テレビ映えもするのでまさにひっぱりだこの様相です(3月31日には『徹子の部屋』に出てました)。

シングルのカップリング曲「東西南北ひとり旅」はベテラン漫才トリオ レツゴー三匹(レツゴー三匹は誤り)の隠れた名曲だそう。デビュー前に出場した『NHKのど自慢』で坂本冬美の「夜桜お七」※を歌い合格したという逸話もあるので、彼をフィルターにして演歌のあれこれを知る方もこれからどんどん増えていきそうですね!

※ 坂本冬美の「夜桜お七」
筆者の知る限り最も"ROCKな"演歌。主人公の情念を歌に出来るかがカギとなる難易度高の楽曲には中森明菜やキンモクセイが挑戦している
中森明菜 『艶華-Enka-』 / キンモクセイ 『さくら』


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【関連リンク】
  • JERO/ジェロ
    オフィシャル・サイト。その非凡なプロフィールはコチラで知ることが出来ます。シングル収録曲2曲の試聴や「海雪」のPV視聴も有り
  • All About WEEKENDER 「“マルチの男”秋元康の才」
    "休みの日くらい、リラックス" All About WEEKENDERの秋元康特集(2007年11月)


"B"すぎる「黒人天才」

clubz thugz sex drugz
黒人天才 『clubz thugz sex drugz』
「Ketsutobi」他収録の1st。黒人天才のアイテム各種は コチラ で買えます
知性が表情に出てツルリと喉ごしも良いジェロに比べると、目つきからしていかにも"B"な印象の「黒人天才」は日本語でラップするHIP HOPグループ。

コワイ系HIP HOPの典型的なリリックをそのまま直訳したような歌詞は、日本語に対する理解度の低さがそのまま武器になっています。

例えば代表曲「ケツトビ」は「HIP HOP」を彼ら風に日本語訳したもの。どんなにILLなJ-ラッパーも彼らのような詞は書けない(書きたくない)し歌えない(歌いたくない)事でしょう。

黒人天才はmyspaceで数曲を公開しているので後悔覚悟で聴いてみてください。頭がイイ人が多いのでついメッセージ性を帯び、つい文学的になってしまう日本のHIP HOPではあまり聴けない、ごっつ直球のライムにヤられること必至です。

海外アーティストの日本語ソング

ベスト・ダム・シング-スペシャル・エディション
アヴリル・ラヴィーン 『ベスト・ダム・シング-スペシャル・エディション』
「ガール・フレンド(日本語ヴァージョン)」収録のDeluxe Edition
"日本語で歌っている"ということだけに絞ると、思った以上に多く、思った以上にメジャーなアーティストの作品が発見出来ます。

白人男性アーティストのものでは"ノースカロライナのクリンゴン"ことBen Folds Fiveの「金返せ(Song For The Dumped- Japanese Version)」(コチラ に収録)が記憶に新しいところ。白人女性アーティストだとAvril Lavigneの「ガール・フレンド(日本語ヴァージョン)」が新しめですね。

いずれも日本語の響きに対する好奇心、あるいは日本のファンに対するサービス、といったところでしょうか。

曲単位で見てみるとThe Boomの「SHIMAUTA(島唄)」(関連記事はコチラ)が世界各地のミュージシャンにカヴァーされていますが、これは日本に対する憧憬というよりも曲そのものの強さに対する共鳴といえそうです。

それでは日本人の「魂(ソウル)」を発露した外国人はジェロが初めてなのでしょうか?

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【All About内関連記事】

日本を愛しニホンゴで歌った外国人の、元祖

バートン・クレーン作品集~今甦るコミック・ソングの元祖~
『バートン・クレーン作品集~今甦るコミック・ソングの元祖~』
2006年1月23日発売と、そんなに古いものではないのですがインディーズ発売な為か既に品薄になりつつあるようです。資料的な価値も大きな1枚ですので入手困難になってしまわないうちに、ゼヒ
バートン・クレーンは1901年生まれ(1963年没)のアメリカ人。ジャーナリストとして在日中にカタコトの日本語の歌を宴席で披露していたのがレコード会社の目にとまりデビュー。そのデビュー曲「酒が飲みたい」が大ヒット~そんな経歴をもつ人です。

私はゴンチチのラジオ番組でこの人の歌が紹介されているのを聴いて衝撃を受けましたが、その録音物がこんなにあるということは全く知りませんでした。ちょっと可笑しな歌詞をJIVEな楽曲でスウィングさせる感触はSlim Gaillard※に通ずるものがあります。

※ Slim Gaillard (1916~1991)
JIVEという文章化しにくいジャンルを代表するミュージシャンで、レパートリーには「Gomen Nasai」なんて曲も有り(コチラで聴けます)。吾妻光良(関連記事はコチラ)やバンバンバザールのルーツのひとつでもあります


そしてこの記事の構成を決めて改めてこのCDの事を調べるとすぐに、制作者である石川茂樹氏がLive Cafe Againの店主であることがわかりました。私はその時、音楽が持つ「めぐりあわせの力」を感じずにはいられませんでした。それは2008年3月28日東京ローカル・ホンク Live Cafe Again公演を観に行く数日前の事だったのです。

クレーンが残した全33曲の内25曲が収録されたこのCDは その内容はもちろん、歌詞や解説から詳細なデータまで、すみずみまで目の行き届いたブックレットも大変素晴らしいものです。税込2,000円という価格設定や、Againに置いてあったカラー刷りのチラシなどからも採算度外視、というか儲けの事は二の次の愛情と情熱が感じられます。

ホンクのLIVE終了後、後片づけに忙しそうな石川さんを無理矢理引き止めお話をさせていただきました。ナイアガラーだという事前情報を得ていたので内心少々怖々でしたが、とても気さくに、でもバートン・クレーンのことはとても真剣に話してくださいました。なんと次の展開も進行しているとのことで、こちらも期待して待つことにしましょう。

※ ナイアガラー
大瀧詠一マニアの事。彼を師匠と呼び音源にとどまらず調査してコレクトするヘビー級から、CDを全て揃える程度のライト級までの総称。ちなみに筆者はライト級の少し上くらいです



【関連リンク】
  • 武蔵小山 Live Cafe Again
    東急目黒線 武蔵小山駅から徒歩0.5分、ビルの地下1階にあるLive Cafe。ROCKバンドのLIVEからレコード・コンサート、落語まで多彩でありながら1本筋の通ったイベントが日夜行われています。1階にあるレコード店PET SOUNDS RECORDも併せて東京の音楽的魔窟といえそう
【All About内関連リンク】
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