KORG MR-1後継のポータブルDSDレコーダー

MR-2
5月下旬に発売されるDSD対応のポータブルレコーダー、KORG MR-2
ドイツ・フランクフルトで開催されている楽器の展示会、Musikmesseにおいて、KORGが新たなポータブルレコーダー製品、MR-2を発表しました。5月下旬発売で、定価75,600円とやや高価な製品ですが、どんなレコーダーなのでしょうか。

これは2006年末に同社が発売したMR-1というポータブルレコーダーの後継モデル。最近各社からリニアPCMレコーダーが発売され、ポータブルレコーダー・ブームともいえる状況になっていますが、MR-1はその初期時代に発売された製品でした。後述するとおり、MR-1もMR-2もリニアPCMレコーダーとして機能する製品ではあるのですが、最大の特徴はDSDレコーダーであるという点です。

PCMとは異なるレコーディング方式のDSDを採用したレコーダーは、ポータブルに限らなくても、数少なく、非常に高価な製品ばかりですが、MR-1は価格破壊を起こしたといっても過言ではない製品で、プロを含む多くの人たちから注目を集めました。しかし、発売から4年近くが経過したため、製品として時代遅れな部分も目立ってきていました。それを現在の製品としてチューニングしなおしたのがMR-2というわけです。


MR-1
2006年末に発売された前モデル、DR-1
最大の違いはMR-1が40GBの内蔵HDDにオーディオデータを記録方式であったのに対し、SD/SDHCに記録するものになったこと。これにより、データがクラッシュする心配が著しく減り、持っていると気になった振動の問題も改善されています。また、MR-1ではマイクが内蔵されず、ややオマケ的ニュアンスのマイクが付属していただけでした。それに対し、他社のリニアPCMレコーダーには高性能なマイクが内蔵されていたので、やや見劣りしたのですが、MR-2では210度回転する高性能ステレオ・マイク内蔵され、これひとつで高音質なレコーディングが可能となっています。

また、やはり他社のリニアPCMレコーダーの多くに搭載されているリミッターやローカットフィルターに関してもサポートされるようになりました。アナログリミッター、ローカットフィルターに加え、ベースEQも搭載されているので、より高品質なレコーディングが可能となっているのです。

そもそもDSDって何だ?

MR-2
SACDにも採用されているレコーディング方式、DSDのロゴ
ところで、DSDって何?と思われるかたもいるでしょう。

DSDとはDirect Stream Digitalの略であり、1ビットオーディオなどとも呼ばれるもの。比較的身近なところでは、次世代(?)のCDフォーマットと呼ばれるSA-CD(Super Audio CD)に採用されているもので、その対極にあるのが、ごく一般的なPCMです。ご存知のとおり、普通のデジタルオーディオであるPCMでは24bit/96kHz、16bit/44.1kHzなど量子化ビット数とサンプリングレートで音質が変わり、数値が大きいほどよいといわれています。それに対し、DSDでは、そもそもの単位が大きく変わってきます。


まず、大きい違いは量子化ビット数が1bitであるということ。つまり音があるのか、ないのかのみを検知するわけです。そして、サンプリングレートは単位が異なり、MR-2で使われているのは2.8224MHz。PCMと比較してまさに桁違いの精度でのサンプリングを行っているのです。これにより、音の波の粗密を直接記録することができ、よりアナログ感覚でのレコーディングを実現し、実際の音に近い記録ができるといわれているのです。

ただし、PCMと比較してのデメリットもいろいろあります。まずは、データ編集するには膨大な演算が必要となるため、実用上においてはデータを切ったり、つないだり、フェード処理をするのがせいぜい。デジタル的にEQ処理をしたり、エフェクトをかけたりといったことは事実上不可能に近い状況です。どうしてもエフェクト処理などをしたい場合には、アナログでかけるか、一旦PCMにデータを変換してからDAWなどを用いて処理するというのが一般的です。

24bit/192kHzのリニアPCMにも対応

MR-2
MR-2の右側面。
編集があまりできないとすると、やはりDSDは扱いにくい……と思う方もいるでしょう。

でもこのMR-2、高品質なDSDでレコーディングできるだけでなく、リニアPCMにも対応したレコーダーとなっているのです。他社のリニアPCMレコーダーの大半が、24bit/96kHzが最高とクオリティーとなっているのに対し、このMR-2は24bit/192kHzでのレコーディングに対応。もちろん、サンプリングレートの設定を変更することで96kHz、48kHz、44.1kHzなどで使うこともできるので、ユーザーのニーズに応じて、さまざまなフォーマットで扱うことができるのです。


MR-2
MR-2の左側面。
実際にこの高品質レコーダーで使うかどうかはともかく、MR-2ではDSD、リニアPCMに加え、MP3、MP2という圧縮オーディオでレコーディングする機能も装備しています。

ところで、ここでちょっと気になるのが、DSD、PCM、MP3でそれぞれどのくらいのデータ量を喰うのかという点です。もちろんPCMでも16bit/44.1kHzか24bit/96kHzかで3倍近い容量の差が出てくるわけですがここでは、DSDとPCMの16bit/44.1kHz、24bit/192kHz、MP3の128kbpsがそれぞれ1GBのSDカードに何分録音できるかを比べてみると、以下のようになります。

   DSD 2.8224MHz    : 22分
   PCM 16bit/44.1kHz  : 90分
   PCM 24bit/192kHz   : 13分
   MP3 128kbps     : 900分

一般に2.8224MHzのDSDと24bit/192kHzのリニアPCMがほぼ同じ程度の音質といわれているので、容量の面でいうとDSDのほうが有利といえそうです。

音楽CDやDSDディスクが作れるAudioGateV2.0

MR-2
付属するフォーマット変換ユーティリティ、AudioGateV2.0
以上の通り、MR-2ではさまざまなフォーマットを選択した上で、レコーディングが可能です。また一言でDSDといってきましたが、データフォーマット上は、DFF、DSF、DSDIFFと3つがあり、レコーディング時にどのフォーマットを選択するかによって、音質はもちろん、録音後の利用法なども変わってきます。

とはいえ、せっかくSD/SDHCのカードにレコーディングされるわけですから、その後もうまく利用したいところです。そこで、便利なのが、MR-2にバンドルされるAudioGateV2.0というソフトです。これはWindowsおよびMacで利用可能なソフトで、MR-2でレコーディングされる各データをPC上で再生可能にするとともに、各フォーマット間でのデータコンバートを実現するものとなっています。

さらに、コンバート時に自動的に最適なレベルでエクスポートするノーマライズ機能や、エクスポート品質を向上させるTPDFディザと、コルグが開発したノイズ・シェイプド・ディザ(KORG AQUA)という2種類のディザ処理オプションを搭載しているので、16bit変換してCDに焼く際、一般のCDライターよりも、ワンランク上の高音質オーディオCDを簡単に作ることができるのです。

もうひとつの特徴はSACDと同等の音質を実現するDSDディスクもAudioGateV2.0でDVD-Rなどに焼けるという点。DSDディスクをサポートしているプレイヤーはまだ少ないのは事実ですが、そうしたプレイヤーがあれば、MR-2で録音した緻密なサウンドをDSDディスクを介して、思い切り楽しむことができるのです。


クロマチック・チューナー機能も搭載

MR-2
MR-2に搭載されたクロマチック・チューナー機能
そのほか、オマケ機能として便利なのがクロマチック・チューナーを内蔵した点。最近のリニアPCMレコーダーの多くが搭載しているだけに、KORGも搭載したのではないかと思いますが、アナログメーター風の使いやすいものになっています。

また、1Hz単位で435Hzから445Hzの範囲でキャリブレーションも可能なので、ギターのチューニング用にはもちろん、さまざまな楽器のチューニングに活用できそうです。


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