何か物足りない自分で作ったサウンド

George Yohng's W1 Limiter VST
DAWを使っても楽曲を完成させても、何か迫力に欠けると感じている人も多いはず
DAWなどを使って、MIDIの打ち込みやオーディオのレコーディングを行い、ミックスダウンまで完了。そこそこ満足のいくデキにはなったけれど、CDに焼いて聴いてみると、何か迫力に欠ける……。そんな思いを持っている人は少なくないでしょう。

実際、プロが作ったCDを再生した場合と比較して、明らかに音量が小さく感じるというケースはよくあります。これはどこに原因があるのでしょうか?これはマスタリング作業がしっかりできていないためと考えられます。

確かに各トラックのバランスをとって、ステレオ2chにミックスダウンすれば作品としては基本的に完成します。しかし、プロの音楽制作の世界では、その次にマスタリングという摩訶不思議(!?)な工程が存在しており、これによって、最終的にできあがるCDの音が大きく変わるのです。


マスタリングとは

George Yohng's W1 Limiter VST
最近はマスタリング用のソフトウェアもいろいろある。画面はIK MultimediaのT-Racks 3
では、そのマスタリングとは一体どんな工程なのでしょうか?

元来マスタリングというのは、完成した2chのサウンドをCDにプレスするための単純作業のことを意味していました。つまり、デジタルデータとして完全なものとするとともに、トラック間の時間を設定したり、商品としてのCDの番号を入力するといった工程です。

しかし、現在はそれだけではなく、最終的により聴き心地のいいサウンドに、よりインパクトのあるサウンドに仕上げる工程をマスタリングと呼んでいます。つまり、ミックスダウンによって完成したはずの作品の音をマスタリング工程でいじっているわけなのです。

ここで用いるツールは主に
   イコライザ
   コンプレッサ

の2種類です。この2つを用いて、マスタリングエンジニアと呼ばれる、とても耳のいい人が、音をいじっているのです。

最近はPC上で動作するマスタリング専用のソフトウェアといったものもあるので、これらを活用するというのも手です。

音圧を上げるコンプレッサ

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通常のレコーディング、ミックスした際の波形
イコライザとコンプレッサのうち、「何か迫力に欠ける」という問題を改善するのがコンプレッサです。

コンプレッサとは、その名のとおり、音を圧縮するものです。「音を潰す」という言い方をよくするのですが、これは大きい音を小さくし、小さい音はそのままにしておくというエフェクトです。とすると、音に迫力が出るどころか、小さな音になってしまいますよね?


George Yohng's W1 Limiter VST
コンプレッサをかけると、圧縮されるため、波形は小さくなるが、粒が揃う
確かに、圧縮しただけでは音が小さくなりますが、これで粒が揃うので、その後、音量を上げる処理を行うことによって、大きい音は元の状態に、小さい音は元よりもグンと大きくなるという仕掛けになっているのです。


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コンプレッサをかけた音にノーマライズをかける形でレベルを上げると、音圧の高いサウンドが完成する
結果として最大音量は変わらないものの、常に大きい音が出続けるので、聴感上の音量が大きく増大するのです。

こうした作業を音圧を上げると呼んでおり、マスタリングにおける重要な作業となるのです。

素人には難しいマスタリングの音圧調整

George Yohng's W1 Limiter VST
コンプレッサはスレッショルドやレシオといった感覚的に分かりにくいパラメータも多く、素人にはなかなか扱いにくい
しかし、このコンプレッサの操作というのがなかなか難しいのです。

一般にコンプレッサには、どのくらいより大きい音を潰すかを決めるスレッショルド、それをどのくらいの比率で潰すかを決めるレシオというパラメータがあります。さらに、スレッショルドを超えた音が入力されてから圧縮を開始するまでの時間を設定するアタックタイム、入力音がスレッショルドレベルを下回ってから圧縮を終了するまでの時間を設定するリリースタイムといったパラメータもあり、これらをどう設定するかによって完成する音も大きく変わってくるのです。

ディストーションやリバーブなど、明らかに音質や音の鳴り方が変化するエフェクトと異なり、コンプレッサは音量にだけ影響するエフェクトであるだけに、素人には非常に扱いが難しいのが実情です。


実は簡単に使えるプロ御用達ツールWAVES L1

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プロ御用達のマスタリング用コンプレッサ、WAVESのL1 Ultramaximizer
もちろんマスタリング用のコンプレッサはプロにとっても扱いが難しいわけですが、そんな中、多くのプロが飛びついたツールがあります。

それがイスラエルのWAVES社が開発したL1 Ultramaximizerというコンプレッサです。これはプラグインタイプのコンプレッサなのですが、ピークリミットを先読みすると同時に優れた再クオンタイズを行うことで、従来のコンプレッサでは不可能ともいえる音圧と音質を実現してくれるのです。

ただ、L1があまりにも簡単であったがゆえに、音圧競争が激化し、迫力はあるけど、メリハリのない音楽ばかりになった、などとも言われています。

WAVES L1クローンのGeorge Yohng's W1 Limiter VST

George Yohng's W1 Limiter VST
WAVESのL1 Ultramaximizerクローンのフリーウェア、George Yohng's W1 Limiter VST
それなら一般のDTMユーザーもL1を買えばいいのですが、やはりプロ用のツールだけに、なかなか高価で手が出せないのが実情。最近は、L1を含め、WAVES社の複数のエフェクトをパッケージ化したバンドル品も登場して安くなってはいるものの、それでも気軽に買えるというほどではありません。

そんな中、L1クローンのフリーウェアという、一般のDTMユーザーにとって非常にうれしいソフトが登場しているのです。
   George Yohng's W1 Limiter VST
というのがそれです。

これは4Front Pianoなどでソフトウェア音源で著名な開発者、George Yohng氏が開発したソフトで、動作上、WAVESのL1そっくりな操作性、音を作り出すプラグインエフェクトなのです。

Windows用のVSTプラグインとMac用のAUプラグインのそれぞれがフリーウェアとしてリリースされているので、ぜひ入手して使ってみてください。


W1 Limiter VSTの基本的使い方

George Yohng's W1 Limiter VST
W1は独自のパネルデザインがないので、母体となるDAWなどによって画面は異なる
このW1は、非常に軽いソフトウェアで、また独自デザインのパネルを持っていません。そのため、どのソフトで起動させるかによって、見た目のデザインはまったく変わってきます。ただし、どのソフトで起動させても、パラメータは同じです。

具体的には
   Threshold
   Ceiling
   Release

の3つだけです。つまり、レシオもアタックもないのですが、使い方はいたって簡単。スレッショルド(Threshold)の値を小さくしていけばいいだけです。これだけで、音圧はガンガンと上がっていきますし、音圧を上げても音が割れたりもしません。


George Yohng's W1 Limiter VST
基本的にはThresholdを下げるだけで、音圧を上げることができる
一方Ceillingは音量の天井をどこに設定するかというものですが、これは通常は0.0dB、つまり最大音量としておけばOK。またReleaseはデフォルトで200msecとなっていますが、通常はこのままで構いません。

実際に使ってみて驚くのは、適当にスレッショルドを設定しても、音が破綻しないこと。好きなだけ音圧を稼ぐことができます。ただ、注意点は、音圧を上げすぎないこと。確かに、その場ではいい感じがするのですが、後で改めて聴いてみると、あまりにもメリハリがなく単調な音になっているケースが多いので要注意です。

いずれにせよ、ぜひ一度、W1の威力を試してみてください。



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