前回のその3以来ずいぶん時間が経ち、1年半以上のインターバルとなってしまいましたが、久しぶりに「エフェクトの基礎知識」の再開です。今回取り上げるのは、ダイナミックス系エフェクトの代表であるコンプレッサとリミッタです。以前その1で分類したときは、レベル系という表現を使っていましたが、まさにそのレベル=音量をいじるエフェクトです。

■コンプレッサとリミッタは表裏一体

コンプレッサおよびリミッタというのは、非常に強力な機能を持ったエフェクトであり、音楽制作をする上で欠くことのできない存在です。しかし、そんな強力で代表的なエフェクトでありながら、このコンプレッサ、リミッタというのは初心者にとって、ちょっと分かりにくいエフェクトなのです。

コンプレッサ,リミッタというのも、このエフェクトを通しても何が変わったのかすぐに実感できないからです。リバーブを通せば明らかに反響音が加わるし、コーラスやフランジャーなら違った音に変化します。そのほかにもディストーション、ディレイ、イコライザ……とたいていのエフェクトの場合、音の変化がはっきりと感じられるのに対し、コンプレッサやリミッタでは、その変化がよく分からないケースが多いからです。とりあえず、感じられるのはボリュームが多少上がったとか下がったと感じる程度で、エフェクトとして役になっているのか、分かりにくいのです。


冒頭で、レベル系エフェクトであると書いたとおり、音量をいじるエフェクトなので、音色自体何も変化しないので、エフェクトとしての効果を実感できないのは当然といえば当然なのですが、単に音量をいじるだけのものをエフェクトといえるのか疑問に感じる方もいるでしょう。

具体的な話に入る前に、コンプレッサとリミッタの違いについて触れておきましょう。実はこの2つ、名前は違うけれど基本的には同じものなのです。実際1つのエフェクトに「コンプレッサ/リミッタ」と書かれているようなものも数多く存在しているとおり、表裏一体なのです。強いて言えば使い方によってコンプレッサと呼んだり、リミッタと呼んだりしています。コンプレッサは、直訳すれば圧縮機となりますが、その名のとおり、音を圧縮する、つまり音を潰すことを目的としたエフェクトです。

一方、リミッタのほうを直訳すれば制限機となりますが、こちらは限界以上の音量の音を抑えてレベルを整えることを目的としたエフェクトです。とはいえ、単純にそう説明されて分かるというものでもないでしょう。もう少し具体的な例を交えて紹介しましょう。
■スレッショルドとレシオ

まず比較的分かりやすいのがリミッタとしての使い方なので、こちらから見ていきましょう。楽器の演奏というのはダイナミックレンジが広く、非常に小さい音から大きい音まで出ます。しかし、これを録音したり、アンプを通して音を出すとなると、扱える音量には範囲が絞られてきます。もし、範囲を超えた音を入力すると、音量オーバーとなって、音が割れたり、歪んだりしてしまいます。そこで登場してくるのがリミッタです。つまりある音量以上の音が入力されたら、それを抑えて制限範囲をオーバーしないようにするという働きをするわけです。

コンプレッサ,リミッタといっても、範囲ギリギリのところで、いきなり抑えたのでは不自然な音になってしまうし、結果的に音も割れてしまいます。そのため、その少し手前の音量から音を抑えるのです。そのレベルのことをスレッショルドレベルと呼んでいます。また、どのくらい抑えるかを比率で設定し、その比率のことをレシオと呼んでいます。右のグラフのようなもので、スレッショルドレベルまでは普通に音が出て、それ以上になると音の大きくなり方が緩やかになるというわけです。


それに対し、コンプレッサというのは、より積極的に音を抑えに行く使い方となります。そのため、よく「音を潰す」という表現をしますが、実はこれが非常に有効なエフェクトなのです。使うシーンはいろいろありますが、DTMユーザーにとって非常に意味があるのが、マスタリングでの使い方です。そう、最終的に音楽が仕上がった後にコンプレッサを通すことで、よりいい作品として完成するのです。
■音圧を上げて、曲全体に迫力を出す

コンプレッサは、ちょっと魔法のエフェクトのようですが、なぜ曲制作の最終段階にコンプレッサをかけるのでしょうか?実際に音楽作品を作った方なら経験があると思いますが、自分の作った音を聴いてみると、何かモノ足りないとか、迫力がないと感じることがあるでしょう。とくにCDにして聴いたときなど、プロの作品と比較して貧弱というか……。実際、音量レベルに違いがあることに気付く人も多いと思います。同じボリュームで音を出しても、音量が全然違うという問題が起きるのです。

コンプレッサ,リミッタこれを音圧と表現していますが、普通に作っていると、音圧が低く、最大レベルが同じだとしても聴いた感じの音量が小さくなってしまいます。そこで、コンプレッサを用いて音圧を上げようというわけです。分かりやすい例として、右の波形はスネアとハイハットの音で、大きいのがスネアおよびバスドラム、小さいのがハイハットを表しています。これを見ても分かるとおり、スネアやバスドラムは最大レベルに達しているから、これ以上音量を上げるということはできません。


コンプレッサ,リミッタそこで、先ほどのリミッタと同様にスレッショルドを非常に低く抑え、レシオを1:10程度にして音を思い切り潰します。まあ、これだと単に音量が小さくなるだけなので、その後全体の音量を上げて、最大レベルを先ほどのものと揃えると、右の波形のようになります。どうですか?見た目でも迫力が出てきていますよね。これがコンプレッサの威力なのです。


コンプレッサには、このように、リズムで利用する方法もあれば、エレキギターやベースで利用する方法、そしてマスタリングで使う方法などいろいろあります。ただ、ここで紹介したのは、あくまでも触りの部分です。実際に使ってみれば分かるとおり、アタック、リリースといったパラメータもあれば、ディストーション的に利用する方法などもあります。また、先ほどの例のように極端に潰すと音質劣化するというデメリットがあることも事実です。こうした、より突っ込んだ内容については、また機会があれば紹介したいと思います。うまく使うと非常に効果のあるエフェクトなので、ぜひ有効活用してください。

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