ザ・ソプラノズ~哀愁のマフィア
テレビ界の波を変えた『ザ・ソプラノズ~哀愁のマフィア』
これまで星の数ほどのドラマがアメリカで製作されてきました。

ドラマはその時代の背景を反映したものが多く、またその時々で流行するトレンドなどもあります。

西部劇が主流の50年代に迫力あるアクションがうけた60年代。70年代はメッセージ性の強いドラマが人気を集めました。その時代ごとにドラマを追っていくと「海外ドラマのいまと昔」がはっきりと見えてくるのものなのです。

今回は80年代から現在まで放送され人気を集めたアメリカのドラマをラインアップし、「海外ドラマのいまと昔」をご紹介いたします。

<INDEX>


80年代は探偵ドラマとファミリードラマの当たり年 ・・・P.2
ワンランク上のハイクオリティードラマが続出した90年代 ・・・P.3
ハリウッド映画を超える完成度のドラマが続出2000年代 ・・・P.4



素晴らしき日々
オープニングの曲が切ない気持ちにさせた『素晴らしき日々』

80年代は探偵ドラマとファミリードラマの当たり年

80年代は探偵ドラマの当たり年でもあり、ブルース・ウィルスの出生作『こちらブルームーン探偵社』(85年)、5代目ボンドとしてブレイクしたピアース・ブロスナン主演の『探偵レミントン・スチール』(82年)、上流階級夫婦が難問を解き明かす『探偵ハート&ハート』(79年)などがヒットしました。

その昔はテレビドラマに出演するのは映画に出られない「ワンランク下」の役者だといわれていたのですが、この時代からドラマで成功した役者が映画界へ進出し大成功を収めるケースが目立つようになります。

刑事・警察ドラマも健在で、意思を持つスーパーカー、ナイト2000とタッグを組み悪を叩き潰す『ナイトライダー』(82年)、ハワイを舞台にダンディなトム・セレックが活躍する『私立探偵マグナム』(80年)、マイアミの強い日差しが全てを魅力的に見せた警察ドラマ『マイアミ・バイス』(84年)、マフィアやテロリストとも戦う『特攻野郎Aチーム』(83年)、女性刑事コンビが主人公の『ギャグニー&レイシー』(82年)など、スピーディーなアクションに加え「ちょっいワルな雰囲気でかっこいい」というイメージで主人公が描かれるようになってきました。

また暖かなファミリードラマも多く製作され、レオナルド・デカプリオの出世ドラマ『愉快なシーバー家』(85年)、アフリカン・アメリカン一家のコメディ・ドラマ『ザ・コスビー・ショー』(84年)、主人公が少年だった60年代を振り返った「古き良き時代」ドラマ『素晴らしき日々』(87年)などがヒットしました。

数多く放送されたファミリードラマの中でも一番人気だったのは、何といってもオルセン姉妹のデビュー作『フルハウス』でしょう。口うるさいお母さんが居ない分、ほのぼのとしてた和み系ドラマに仕上がっており幅広い層から支持されたのでした。『ファミリー・タイズ』(82年)も高い視聴率をマークし続けましたが、こちらはヒッピーな両親と共産党支持者の息子の価値観のギャップが大うけしており、時代を色濃く反映しています。

女性のお年寄りが主人公のドラマ『The Golden Girls』(85年)も登場。お色気たっぷりのブランチ、ボケ役のローズ、サバサバと男っぽい性格のドロシー、ドロシーの母でシニカルなソフィアが繰り広げる笑いアリ時には涙ありの友情物語で、孫がいるような年でもまだまだ人生を楽しみ満喫するというゴールデン・ガールズ・パワーに共感するグランマたちが続出し、ドラマは大ヒットを納めました。

70年代に放送スタートとなった『ダラス』で確立されたプライム・ソープのカテゴリーには、『ダイナスティ』(81年)が登場。基本的に『ダラス』と似たような設定だったのですが、とにかく何かにつけ全てが豪華で、今でもゴージャスさではこのドラマにかなうものはないといわれているほどです。

また、80年代の代表作としてこれまでの法廷ドラマよりもより一層リアルな内容になった近代法廷・裁判ドラマの草分け的ドラマ『L.A.ロー 7人の弁護士』(86年)、女性版刑事コロンボ『ジェシカおばさんの事件簿』(84年)、私生活はいまいちなバリバリなキャリアウーマンが主人公のコメディドラマ『TVキャスター マーフィー・ブラウン』(88年)などが挙げられます。

忘れてはならないのは『将軍 ショーグン』(80年)。出演した島田陽子が日本人として初めてゴールデングローブ主演女優賞を獲得し、アメリカの・テレビ界における第一次日本人役者ブームを巻き起こしたのでした。


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ツイン・ピークス
日本でも社会現象にまでなった『ツインピークス』

ワンランク上のハイクオリティードラマが続出した90年代

90年代はシットコムが高い視聴率を稼いた時代でバラエティーに富んだシットコムが次々と誕生しました。中味のない番組(The show about nothing)をキャッチフレーズにした日常スケッチ『隣のサインフェルド』(89年)の爆発的なヒットに引き続き『そりゃないぜ!?フレイジャー』(90年)、ゲイの弁護士と大親友のデザイナーがマンハッタンで同居する『ふたりは友達?ウィル&グレイス』(98年)、口うるさい両親、強い妻に悩まされる中年男の『Hey!レイモンド』(96年)など、国民的ドラマが次々と登場したのです。

シットコムは、時事ネタがふんだんに振り込まれているため日本人の笑いのツボとはずれておりピンと来ないかもしれませんが、この時期にアメリカに居た方、アメリカと縁が深かった方には懐かしく感じられるドラマだと思います。90年代のアメリカを知りたいという方はぜひ、上に挙げたシットコムを見てください。この時代のアメリカがギュッと凝縮されています。

80年代、バーに集まる人間の友情物語を描き大ヒットした『Cheers』(82年)に続くような形で登場した『フレンズ』(94年)は、ターゲットを独身男女6人に絞り大ヒットしました。メインキャラクターを演じていた6人全員が大ブレイクし、時の人となりました。

『ビバリーヒルズ高校白書/青春白書』も、70年代から続いているプライム・ソープと同じ路線で、リッチな人々にスポットを当てていますが、今回はビバリーヒルズに住む高校生たちが主人公に。貧富に関わらずアメリカのティーンが面している問題が赤裸々に描かれドラマは大ヒットし、メインキャラクターを演じていた役者らも『フレンズ』同様大ブレイク。パパラッチに追わタブロイド誌をにぎわせることになったのでした。

摩訶不思議な怪奇現象などをテーマにした名作もこの時代に生まれています。鬼才デビット・リンチ監督が手掛けた、これまでにないタイプのミステリードラマ『ツイン・ピークス』(90年)と科学や常識では説明できない怪事件を追う『X-ファイル』(93年)。この二つは真似ることが不可能な作品、超えられない作品として今なお熱狂的なファンから絶大な支持を受けています。

同じく熱狂的なファンを生んだ弁護士ラブコメディ『アリーmyラブ』(97年)は80年代の『TVキャスター マーフィー・ブラウン』同様キャリアに生きる女性が主人公なのですが、『アリー~』はコメディではなくドラマであり、幸せを追い求める繊細な女性の気持ちが見事に描かれ多くの女性の共感を呼びました。

もうひとつの人気弁護士ドラマ『ザ・プラクティス ボストン弁護士』(97年)は、本格的社会派法廷ドラマとして手に汗握る展開となっています。前半は刑事ドラマ、後半は検察の訴追の様子を描いた『ロー&オーダー』(90年)も、独特の緊迫感溢れる番組構成で大ヒットなり、『Law & Order 性犯罪特捜班』(99年)、『Law & Order Criminal Intent』(2001年)のスピンオフも人気番組となっています。。アメリカ軍犯罪法務部JAGの活躍を描いた『JAG 犯罪捜査官ネイビーファイル』(95年)もタブーとされがちな事件なども取り上げ大きな話題を呼びました。

80年代に放送されていた『St. Elsewhere』『Hill street Blue』に、より一層のリアリティー感を加え、最高級のスタッフにより作られた医療ドラマの決定版『ER 緊急救命室』(94年)がスタートし、同年放送開始となった『Chicago Hope』(94年)と共に新しい医療ドラマの時代を築き上げていきました。『ER』を手掛けたジョン・ウェルズは、他に『サード・ウォッチ』(99年)や下で紹介している『ザ・ホワイトハウス』など、クオリティーの高いリアリティー・ヒューマンドラマを製作し、90年代大活躍しました。

政治ドラマのカテゴリーでも話題の作品が登場。マイケル・J・フォックスが病気のため途中でチャーリー・シーンにバトンタッチしたコメディドラマ『スピン・シティ』(96年)は軽いタッチで政治の世界が紹介しており、『ザ・ホワイトハウス』(99年)はタイトル通りホワイトハウスが舞台の壮大なスケールのドラマで、リアリティー溢れるヒューマンドラマとしても高い評価を得ました。

魔女ドラマも復活しており『バフィー恋する十字架』(97年)、『チャームド魔女三姉妹』(97年)が日本でも人気となりました。

90年代には、これまでのドラマの常識を覆す作品が続出していますが『ザ・ソプラノズ~哀愁のマファイア』(99年)以上に衝撃を与えた作品はないといえるでしょう。コマーシャルのない有料チャンネル米HBOで放送されたため規制が緩く、視覚的により一層リアルな表現が可能となり、結果最高級のヒューマンドラマが完成したのだといわれています。

HBOでは凶悪犯ばかりが収容されたマキシマム・セキュリティー刑務所が舞台の『OZ』(97年)、マンハッタンに住む女性たちの恋愛を赤裸々に描いた『SEX and the City』(98年)など、大人向けの人気番組なども放送されています。これらの名作はHBOだからこそ誕生したのです。


次は、映画を超えるクオリティーのドラマが続出する2000年代です次ページへ>>

デスパレートな妻たち
ゴールデンアワーに主婦が主人公のドラマ『デスパレートな妻たち』が放送

ハリウッド映画を超える完成度のドラマが続出2000年代

2000年9月11日アメリカ同時多発テロ事件が起こり、アメリカは対テロ戦争と称してアフガニスタンとイラクを攻撃。戦時中となったアメリカでは愛国心、そして愛する人のために戦う、をテーマにしたドラマが大ヒットしました。

みなさん、ご存知『24 TWENTY FOUR』(01年)です。他にも9.11時世界貿易センタービルで救助活動を行っていた消防士を描いたヒーロー・ヒューマンドラマ『レスキュー・ミー NYの英雄たち』(04年)、コンセプトは異なりますがアメリカのために、愛する人のために戦う二重スパイという設定の『エイリアス』(01年)が多くの視聴者を獲得しました。

医療ドラマはリアリティー溢れる特殊メイクの世界から一歩離れて、医師の内面など精神的なものにフォーカスを当てた番組が登場。ヒュー・ローリーがシニカルな型破りの医者を演じ評判となった『Dr.HOUSE』(04年)、激しい恋愛に苦しみ外科医インターンとしても成長していく姿を描いたスタイリッシュ医療ドラマ『グレイズ・アナトミー ~恋の解剖学~』(05年)、そして整形手術をテーマにした『NIP/TUCK マイアミ整形外科医』(03年)が安定した人気を集めています。

一方犯罪ドラマは、特殊メイクや特殊効果を駆使したリアルな作品が次々と登場。最新科学を駆使し現場証拠品をかき集めて犯人を捜し当てる科学捜査班の活躍を描いた『CSI:科学捜査班』(00年)スピンオフの『CSI:マイアミ』(02年)、『CSI:ニューヨーク』(04年)はこの特殊効果が素晴らしく大ヒットしています。

『CSI』シリーズを手掛けたジェリー・ブラッカイマーは、もともと『アルマゲドン』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』などを手掛けた映画プロデューサー。ビッグ・スクリーンだけでなくスモール・スクリーンでも彼の才能は100%発揮されており、行方不明者を敏速な捜査により救い出す『FBI失踪者を追え!』(02年)や長期間にわたり未解決となっている事件を地道に解決していく『コールドケース迷宮事件簿』(03年)なども製作しています。

検死医たちが法医学を駆使し次々と難事件を解決へ導く『女性検死医ジョーダン』(01年)もそうですが、2000年代の犯罪ドラマは派手なアクションで直接対決するのではなく、じわじわと悪人を追い詰めていくのがトレンドだといえるでしょう。尋問のプロが主人公の『クローザー』(05年)も高視聴率を更新中です。

とはいえ派手なアクションが売りのドラマも健在で、中でも『ザ・シールド ルール無用の警察バッジ』(02年)は高い人気を誇っています。映画『ターミネーター』などを手掛けた映画監督ジェームズ・キャメロンのSFドラマ『ダーク・エンジェル』(00年)もアクション満載で人気を呼びました。

事故で予知能力が目覚めた男性のドラマ『デッド・ゾーン』(02年)はホラー作家スティーヴン・キング原作とあって、精神的に訴えてくるエピソードが多くあります。『スティーヴン・キングのキングダム・ホスピタル』(04年)もテレビドラマとしては最高級のホラー作品なのではないでしょうか。死者に触れると「助けて」という声と共に時間がまき戻る『トゥルー・コーリング』(03年)も面白い設定で日本では高い人気がありますが、アメリカでは低視聴率のためシーズン2半ばで打ち切りになってしまいました。

イラク戦争の終わりが見えなくなってくるにつれ、家族がテーマのドラマが受け入れられるようになります。郊外に暮らす姉妹のような年の近いシングルマザーと娘の物語『ギルモア・ガールズ』(00年)、牧師と妻が様々な問題に面しながらも7人の子供を育て上げていく『7th Heaven』は96年にスタートしたドラマですが、派手な展開がないものの安定した視聴率をマークし続けていました。妻を亡くしたワーカホリック外科医が子供を連れて田舎での生活をスタートさせる『エバーウッド 遥かなるコロラド』(02年)も暖かい感動の物語として人気を集めました。

2000年のコメディドラマは強迫性障害などに悩む元名刑事だった男性の鋭い洞察力で次々と難問を解決しいく『名探偵モンク』(02年)の一人勝ち状態が長い間続いていました。しかし、英国で大ヒットした郊外の支店が舞台のヒューマン・シニカル・コメディをリメイクした『The Office』(05年)やコロンビアの大ヒットドラマ『ベティ~愛と裏切りの秘書室』のリメイク版『Ugly Betty』(06年)の人気が高まっており、今後はこの二作がリードすることになりそうです。

業界暴露系ドラマもHBOが放送しており、大人気となっています。ハリウッドで大成功しつつある俳優とその御つきの友人たちの友情を描いた『Entoutrage』(04年)『隣のサインフェルド』を手掛けプロデューサーとして巨万の富を得たラリー・デイヴィッドの日常を描いたとされるシニカルなドラマ『ラリーのミッドライフ★クライシス』(00年)、ハリウッド俳優を目指すもののチャンスがつかめずもがき苦しむ役者が主人公の『Extras』(05年)は、コメディドラマとして高い評価を得ています。

無実の兄を自分の全てをかけて救いだそうとする刑務所が舞台(シーズン1)の『プリズン・ブレイク』(05年)、無人島に墜落した飛行機の生存者たちのミステリー溢れる物語『LOST』(04年)など、先の見えない展開のドラマも大ヒット。先が見えないといえば、リッチな子供たちが直面しているアルコール、ドラッグ、セックス、妊娠を含む様々な問題をリアルに描き、またリッチな大人たちの恋愛も存分に楽しめた『The OC』(03年)も、ミーシャ・バートン演じるキャラクターの奇想天外な行動が読めず、視聴者をハラハラさせていました。

最後に2000年の一番人気ドラマとして『デスパレートな妻たち』(04年)をご紹介いたします。90年代終わりからリアリティー番組に流れていた視聴者をドラマへと引き戻したとされているこの番組は、2005年4月末にホワイトハウス担当記者らが主催したパーティーで、ジョージ・ブッシュ大統領の妻ローラ夫人がスピーチに引用し全世界に知られるようになりました。プライム・ソープとカテゴライズされていますが内容はそれ以上のものがあり、恋愛、ミステリー、サスペンスと様々な要素が混じりあったテンポの速いストーリー展開に、気が付くとどっぷりはまってしまいます。奥様向けドラマと見られがちですが、既婚者、独身者、性別、年齢関係なく楽しめるドラマで「アメリカのドラマっていいなぁ」と思わせてくれる番組なのです。


アメリカのテレビ番組は視聴率が低いと1話でも打ち切られてしまいます。

時代を反映したアメリカ国民が求める世界を、そしてヒーローをテレビ界は生み続けているのです。

衛星テレビの普及に伴い、アメリカで放送された話題のドラマが時間を空けずに日本でも放送されることが多くなってきています。今後も海外ドラマから目が離せそうにありません!
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