2004年も残り後わずか。
先ごろ発表された今年の流行語大賞に「冬ソナ」がノミネート

さらにヒット商品番付では、トップの「東の横綱」に、
ドラマ「冬のソナタ」と、ロケ地ツアーやDVDソフトなどの
「韓流関連商品」が、合わせ技で選ばれました。
まさに韓流ブーム一色の一年でした。

そして、今年のトリを飾るNHK紅白歌合戦にも韓国歌手が二人出場します。
Ryuとイ・ジョンヒョン。
白組のRyuは「冬のソナタ」のテーマ曲「始めから今まで」を歌ったことでご存知の方も多いと思いますが、
紅組のイ・ジョンヒョンについては、まだあまり知られていないのが現状です。

今回は知られざるイ・ジョンヒョンの素顔をご紹介しましょう。


デビュー作は映画「花びら」

「美しき日々」ではチェ・ジウ演じるヨンスと一緒に孤児院で姉妹同様に育ったセナを演じる彼女。
歌手を目指し、反抗的で陰のある役をちょっと不思議な(?)ヘアスタイルで熱演しています。

彼女のデビュー作は、今から8年前「花びら」という映画です。
映画のポスターのイ・ジョンヒョンは、一輪の花を髪に挿した、
おかっぱ頭でやせっぽちの女の子。
やや斜めに構え、意志が強そうなまなざしで
こちらを見つめているのが印象的でした。

当時16歳の彼女が主演したのは、
韓国の歴史の転換点ともいえる「光州事件」を扱った硬派で重いストーリー。

舞台は1980年の光州。
民主化を求めるデモを当局が弾圧する事件の真っ只中で逃げ惑う母親と少女(イ・ジョンヒョン)。
銃に撃たれ助けを求める母親を目の当たりにして、
少女は硬く握られた母親の手を思わず離し、見捨てて逃げ出してしまいます。

母への罪悪感からか半狂乱となった少女は、
唯一心の支えであった兄を探して歩きまわります。
そんなとき、工事現場で働く男と出会い、
兄だと思い込んで彼の薄汚い小屋に住みつくようになり、
徐々に心を通わせていくという切ない物語です。

映画の中で彼女は電車の窓に割れるほど頭を打ちつけるという、
すさまじい演技を見せます。
この作品でイ・ジョンヒョンは
大鐘賞新人女優賞や青龍映画祭新人女優賞、映画評論家新人演技賞などを総なめにしました。

衝撃的な映画デビュー。
と、ところが・・・
イ・ジョンヒョンはその後テクノポップの女王として歌手デビューを果たします。


歌手としての物語は次のページで。
テクノポップでデビュー

歌手としてのイ・ジョンヒョンが広く知られたのは2000年のことでした。
韓国総選挙のテーマソングに彼女の「パックォ!」が使われたのです。

「パックォ」とは、韓国語で「変えろ」の意味。
学生運動世代のいわゆる386世代が台頭し、古い政治から新しい政治へと、
政治の世代交代がテーマとなった00年の総選挙に
新しい時代を象徴する歌として彼女に白羽の矢が立ったのです。

新しい時代の象徴…
それもそのはず、彼女の歌手ビューは映画にもまして衝撃的でした。

99年にGoofyの「ゲームの法則」のミュージックビデオに出演したのをきっかけに、
歌謡界でも注目を浴びるようになり、歌手に。
ミュージックビデオの彼女は、宇宙人のようなサイバー衣装、
頭にかんざしを挿した李朝時代風衣装などをまとい、
小指の先に小型マイクをつけて歌うなど、
「新世代」を体現したスタイルだったのです。

こうして書くと彼女の活動は支離滅裂のようにも見えます。
でも、イ・ジョンヒョンの個人史は、
韓国の歴史を映し出しているといっても過言ではない、と私は思うのです。

イ・ジョンヒョンは80年生まれ。
奇しくも同じ80年に起こった光州事件の悲劇の主人公を演じながらも、
彼女自身にその時代の記憶はありません。
イ・ジョンヒョン自身は
90年代後半に民主化の産物として脚光を浴びた新しいタイプの若者「新世代(シンセデ)」であり、
斬新なスタイルのダンスと歌で、
386世代が躍進した00年総選挙のシンボル的存在となりました。

そして、2004年大晦日。
イ・ジョンヒョンは海を越え紅白の大舞台に立ちます。

彼女の歌を聞きながら、
韓国エンタテイメントが日本と韓国の距離を急速に近づけたこの一年を振り返り、
彼女に重なる韓国の歴史に思いをはせてみるのはいかがでしょうか。

■関連サイト
イ・ジョンヒョン公式ホームページ
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