デザインフィル 飯島さん
デザインフィルで数々のステーショナリーをプロデュースしている飯島さん
日常を旅にたとえ日々の出来事を綴るというスタイルをコンセプトにしたトラベラーズノート。今年で4年目を迎え、独特な世界観を作り上げている。
そのトラベラーズノートの生みの親であるデザインフィル プロデューサーの飯島淳彦さん。

今回の「隣の文具活用術」ではその飯島さんにお話をお伺いしてきました。

どんなトラベラーズノート活用術が飛び出してくるのか楽しみです。


ガイド:
まず飯島さんの仕事の内容についてお聞かせください。

飯島さん:
私はクリエイティブセンター プロダクトグループで主にミドリ商品のプロデューサーをしています。

ひとつのプロダクトを作り上げるにはデザイナーや生産担当者など3~5名のスタッフがチームを作って進めていきます。私が担当するプロデューサーの役割は、そのチームのリーダー的な存在です。


ガイド:
これまで飯島さんはトラベラーズノート以外にどんな商品を手がけてこられましたか?

飯島さん:
最近のもので言えば、MDノートもそうです。それ以外では、女性向けの小物雑貨、例えば布製のペンケースやカードケースそして、「ペーパークラフト」といったシールなども担当しています。
デザインフィル 雑貨・ペーパークラフト
飯島さんが手がけている女性向けの小物雑貨やペーパークラフト


ガイド:
男性向け商品だけでなく、女性向けの商品を担当されているんですね。

飯島さん:
もともとミドリは、女性ユーザーの占める比率が高く、これまで私自身も女性向け商品をたくさん作ってきました。

男性ユーザーが多いということで言えば、別ブランドになりますが、KNOX(ノックス)というブランドがあります。全体の中では、男性向けのものはそれほど多くはありませんでした。

そういう意味でトラベラーズノートは、多くの男性の方々に使っていただくことができ、ある意味、当社の中でも異色とも言える商品なんです。


ガイド:
もともと、現在のような商品企画の仕事をやっておられたんですか?

飯島さん:
新入社員として入社した時はまず営業に配属され、その後、海外部で輸出入に携わってきました。

海外部では、当時、「SHALA(シャラ)」という自社ショップがありまして、そのショップ向け商品の海外仕入れを行っていました。その頃知り合ったのが現在トラベラーズノートの生産をお願いしているタイのチェンマイの会社なんです。


ガイド:
トラベラーズノート誕生には、飯島さんのこれまでのお仕事が色々と関わっている訳ですね。




ガイド:
では、そろそろ飯島さんの愛用文具を拝見してきたいと思います。まずはスケジュール帳から見せていただけますか。

飯島さん:
私はこのトラベラーズノートのダイアリーを使っています。トラベラーズノートには、マンスリーとウィークリーバーチカルタイプの2種類のダイアリーがありますが、現在私はウィークリータイプを使っています。
トラベラーズノート
どこに行くにも必ず持ち歩くというトラベラーズノート。

特に工夫して使っているという点は、あまりないのですが、あえて言うなら、「ラフに書く」ということでしょうか。

自分自身の性格もラフなので、このスタイルがどうやら一番しっくりとくるようです。当社はダイアリーメーカーでもありますので、これまでシステム手帳はじめ色々なダイアリーを使ってきました。しかし、どれも1~2年で挫折していました。
トラベラーズノート
現在はウィークリーバーチカルタイプを愛用。確かに予定を細かく管理というよりかはいい意味でラフな印象。


そんな中このトラベラーズノートのダイアリーだけはもう4年目になっています。

どうやら私のラフな性格に合っているようです。

と言いますのも、このダイアリーを企画していく中で、自分自身をコアターゲットと考え、自分自身が使いやすいものと考えてきました。

ガイド:
飯島さんがこのダイアリーを企画する上で工夫したのは、例えばどんなところですか?

飯島さん:
スケジュール帳には珍しく各ページに数ヶ月先まで先のカレンダーが入っている点です。これは例えば、1月や2月という時期でも5月のゴールデンウィークの休日の予定も考えられるようにしたものです。私自身が、ずっと先の休日のことを考えながら毎日を過ごしたいと考えたことがありましたので。
トラベラーズノート
ウィークリーの全ページには前後5ヶ月のマンスリーカレンダーがある。


そして一方で、仕事でも我々はものづくりをやっていますので、納期などで常に数ヶ月先を見る必要があります。

つまりプライベートでも仕事でも常に数ヶ月先を意識することが多いので、ウィークリーもマンスリーのいずれのタイプでもこの数ヶ月先のカレンダーを全ページにわたって掲載しています。

ガイド:
確かに他ではあまり見かけませんね。カレンダーがあってもだいたい1から2ヶ月先ぐらいでしょう。

さて、次にノートを見せてください。

飯島さん:
やはり同じトラベラーズノートをはさみ込んでいます。先にダイアリーを入れて、その次にノートをセットしています。

ちなみにトラベラーズノートには、基本一冊のノートしか挟み込めませんので、私はカバーの裏表紙の内側にオプションで発売しているポケットシールを貼ってそこにセットしています。

トラベラーズノート
ノートの表紙には飯島さんらしいシールやスタンプによるデコレーションがある。


無地やセクション、横罫など色々と使っていますが、特に気に入ってるのがこのセクションです。




ガイド:
このノートにはどんな事を書いていますか?
トラベラーズノート
各ページの冒頭に必ず付ける日付スタンプ。


飯島さん:
打ち合わせのメモや会議の議事録、アイデアなどを書いています。以前はプロジェクトごとにノートを分けるということも試していましたが、どうしても二つのカテゴリにまたがってしまうことも出てきてしまい、不便を感じていました。今ではすべてを1冊にまとめて、ただただ時系列に書き進めています。

時系列ということで言えば日付スタンプを使っています。手書きでももちろんいいですが、こうした定型フォーマットにすると後で情報を検索するのもとても楽になります。
トラベラーズノート
色々なペンをこれまで使ってきたそうだが、今や鉛筆に落ち着いているという。

トラベラーズノート
ファーバーカステル パーフェクトペンシルUFOのブラックを愛用。普段はペンホルダーにキャップをセットしたままの状態で、書くときは鉛筆だけ引き抜いて使っている。


ガイド:
使い終わったノートはどうされていますか?
トラベラーズノート 専用ボックス
書き終わったトラベラーズノートはこうして専用ファイルに入れて保存。


飯島さん:
このように専用ボックスにやはり時系列にファイリングしていきます。以前はこうして保存することなく、捨てていました、と言うよりもいつの間にかなくなっていたことの方が多かったと思います。

トラベラーズノートを使うようになってからは、そうしたこともなくなり、すべて保存するようになりました。
トラベラーズノート
あとで見返しやすいように上に日付インデックスを付けている。


ガイド:
それはなぜでしょう?

飯島さん:
きっとノートのサイズが全て一緒なので、保存しやすいということがあるんだと思います。

飯島さんのトラベラーズノートの全貌

トラベラーズノート
ギッシリと詰め込まれた飯島さんのトラベラーズノート


トラベラーズノート
表紙を開けると、まず右側にジッパーケースが。この中にはトラベラーズノートをカスタマイズするためのステッカーがタップリ入っている。


トラベラーズノート
ジッパーケースの次にウィークリーバーチカルダイアリー。その次にくるのが名刺ホルダー。この片面には<ポスト・イット>専用スペースにしている。なるほど、これなら取り出しやすい。


トラベラーズノート
ポケットファイルの一部を切ってそこに定規を挿している。


トラベラーズノート
基本は時系列にノートを書いていくと言うが、これだけは例外。これは、仕事上必要な紙の規格や主な取引先の連絡先などをまとめたもの。工場や海外出張の時には、これを必ずトラベラーズノートに挟み込むという。




ガイド:
このトラベラーズノート以外で、他にノートは使っていますか?

飯島さん:
MDノートのA4変形判サイズ、そしてトラベラーズノート パスポートサイズも使っています。
MDノート
トラベラーズノートの他、MDノート(A4変形判)とトラベラーズノート パスポートサイズもも使い分けている。

MDノート
黒革のカバーは飯島さんの自作。
MDノートの方はデザインアイデアのラフスケッチ用です。以前はこうしたものを書く時 A 4のコピー用紙を持ってきてよく書いていました。しかし、それだといつの間にかなくなってしまいます。そこでこのMDノートを使うようになりました。

ここには、デザイナーにこういう感じでデザインしてくださいというイラストを描いて、それをコピーしてそのまま渡したりしています。パソコンでもこうした指示はもちろんできますが、私は手書きの微妙なニュアンスをとても大切にしています。
MDノート
手書きしたデザインスケッチ。

MDノート
先日青山スパイラルで開催されたトラベラーズノートイベントのブースデザイン。

その手書きのニュアンスが最終的に商品になったときも、やはり残っているものなのです。とても細かなところですが、私自身、こだわっている点です。

ガイド:
もう一つのトラベラーズノート パスポートサイズはどんな用途ですか?
トラベラーズノート パスポートサイズ
すでにいい味が出ているトラベラーズノート パスポートサイズ

飯島さん:
こちらは主にメモとして使っています。レギュラーサイズのトラベラーズノートは鞄にいつも入れて持ち歩き、このパスポートサイズはポケットに入れています。

リサーチのため立ち寄ったショップなどで、ちょっと気づいたことを書く時に、鞄からノートを出すのは大げさになってしまいます。このパスポートサイズなら、それほど気になりません。
トラベラーズノート パスポートサイズ
電車の中で書いたというトラベラーズノートのカタログコピー。

トラベラーズノートでは、ある程度固まったこと書いていくのに対し、このパスポートサイズの方ではまだゆるい段階のものひとまず書き残す、という具合に使い分けています。
トラベラーズノート パスポートサイズ
パスポートサイズばゼブラの手帳用ボールペンをセットしている。カバーに挿した時もペンの頭が飛び出さない点が気に入っているという。

パスポートサイズのノートは全ページミシン目で切り取ることができます。大切なメモは、このように切りとってポケットに入れています。
トラベラーズノート パスポートサイズ
すぐに見返す必要のある大切なメモは、このように切りとってポケットに入れている。




ガイド:
もう一つ、そちらに味わい深い茶色のトラベラーズノートありますが、それは?

飯島さん:
実はこれ、プライベート用に使っているものなんです。中には画用紙リフィルだけを入れています。
トラベラーズノート
まるでスウェードのような表情のトラベラーズノート。
ちなみにこれは、ジーンズのように洗濯してこの味わいを作ったという。

会社や家では、なかなか1人になれるという時間がありません。そこで、私は休日の夕方カフェによく行くんです。そこで一人本を読んだり、黙々と絵を描いたりするのですが、そのときに使うのが、このプライベート用のトラベラーズノートです。

20分~30分という短い時間で1枚の絵を描くのですが、その間、無心になれてとても心身ともにリフレッシュできます。


ガイド:
どんな絵を描くのですか?

飯島さん:
デジカメやiPhoneで撮りためた気になる風景などを描くことが多いです。絵を描く時、何かをもう一度じっくりと見つめなおすと、今まで見えていなかった細部の意味や美しさに気付かされます。

ちなみにそれらの絵はトラベラーズノートのブログでも紹介しています。
トラベラーズノート
 

トラベラーズノート
絵の勉強は時にこれまでしたことがないというが、実に上手!


トラベラーズノート
絵を描く時はハイテック C の0.3mm で線を、そしてぺんてるのマルチ8で彩色するという。

トラベラーズノート
休日の夕方、このセットを携えてバイクでカフェに向かう。




ガイド:
次に、話をちょっと変えまして、書類の整理についてお聞かせください。

デザインフィル 本社オフィス
フリーアドレススタイルのデザインフィル本社
飯島さん:
当社では、フリーアドレスという各自が専用の机を持たないワークスタイルをとっています。ですので、自分専用のスペースは引き出し一つと、そこに入るファイルボックスがひとつしかありません。個人の書類は全てそこに入れなくてはならないんです。


ガイド:
個人のファイイングスペースが一つとは、少ないですね。それで足りるものでしょうか?

飯島さん:
もちろん、足りませんね。ただ、こうしてあらかじめ入れられる量が決まっていることで、本当に必要なものだけを保存するようになります。

何か新しいものが増えたら、何かを減らすということをせざるを得ません。

そうした個人のボックスとは別にチームの共有ボックスというものもあります。いずれにしてもとても限られたスペースしかないことに変わりありません。
ファイリング
このボックスはトラベラーズノートの共用のもの。

トラベラーズノート ファイル
中には飯島さんが海外で集めてきた。コースターやチラシなどの様々な紙のサンプルがぎっしりと入っている。


ガイド:
最後に、飯島さんにとって文具とはどんな存在ですか?

飯島さん
トラベラーズノートのコアユーザーを自認しておられる飯島さん。
飯島さん:
究極に言ってしまうと、「道具」だと思います。

私も含めて男性はそうした道具に深い思い入れを込めるものです。当然自分が普段使う文具などは、自分の好みに合うものを選びます。つまり、その自分が持っている道具によって自らの考えや趣向性などを主張するわけです。

特に当社では先程もご紹介した通り、自分の机がありません。机があれば、好きな写真を飾ったり、そうしたことができますが、私たちはそもそもそれができませんのでその分、持っているもので自分の世界を作っていくということにもなっていると思います。

また、今年私は、ちょうど40歳になったのですが、最近つくづく感じるのは、時間が経ったものが生み出す味わいの心地よさです。

その味は、地道に日を重ねていくことでしか作ることができません。そうしたことを大切にしたいと、思うようになりました。

と言いますのも、40歳の私が普段使っているものがすべて新品ばかりだというとなんだか薄っぺらい感じがします。

20歳であれば、まだ、試行錯誤の段階ですので、新品ばかりを使っていても全く問題はないでしょう。しかし、ある程度の年齢に達したら、年を経てきただけの何かを持っていたいものです。

あともうひとつ大事なことは、文具は表現のための道具であるということです。多くの表現は、白い紙に何かを記すことから始まります。使い込んだ味のある道具は、表現を心地よく喚起し、サポートしてくれます。そんな道具に囲まれて暮らすことで、生活がより豊かになるような気がします。

私自身、トラベラーズノートをはじめ、ものづくりをするときにもそうした点をとても重要視するようになりました。


ガイド:
本日はありがとうございました。

トラベラーズノート
一冊のノートから奥行きのある世界を作り上げているトラベラーズノート。


取材後記

当初、飯島さんにこの隣の文具活用術の取材を申し込んだ際、「いや~、私はそれほどこだわりはないので」と、おっしゃっていました。

しかし伺ってみると、飯島さんならではのこだわりが次々に飛び出してきました。

ご本人もおっしゃっていましたが、トラベラーズノートのコアターゲットは自分自身であるというように、実際飯島さんは、トラベラーズノートすべての商品、たとえばダイアリーやノートその他アクセサリに至るまで、必ず1回自分の実生活の中で、使い込みその時これはちょっと違う、ということがあれば迷わず商品化を中止してしまう、そうです。

それが、トラベラーズノートのあの独特な世界感を作っているんだとつくづく感じました。

<関連リンク>
トラベラーズノートの公式サイト
飯島さんの作品(絵)も掲載されているトラベラーズノートのブログ

<「隣の文具活用術」バックナンバー>
「隣の文具活用術」手帳メーカー編
「隣の文具活用術」雑誌編集者編」
「趣味の文具箱」編集長の愛用文具一挙公開
銀座・伊東屋 万年筆売り場の方の愛用文具
「隣の文具活用術」読売新聞記者編
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