よく若い人からはじめて万年筆を買うんですけど、何かオススメはありますか?というご質問をいただくことがある。その要望をよくよくお聞きしてみると、はじめてなのであんまり値段は高くない方がいい、それでいて、デザイン性にもこだわりたいという。これまでは、そうした要望に対して海外のものをオススメしてくることが多かった。そんな中、日本のものにもその選択肢のひとつに入れてもいいのではというものが出てきた。これは、れっきとした日本製ではあるのだが、海外で育まれてきたという帰国子女的なユニークな経歴も持っている。
昨年末に発売されたトンボ鉛筆のObject(オブジェクト)万年筆だ。
![]() |
トンボ鉛筆 Object(オブジェクト) 万年筆 6,300円、水性ボールペン 3,150円 |
欧米で人気を博したモデル
このオブジェクトはトンボのデザイン性の高いペンシリーズである「トンボ デザイン コレクション」のひとつとして発売される。今回のオブジェクトは厳密に言うと、新製品ではない。実は今から20年前の1989年に欧米で発売されたモデルである。1990年代と言えば、時代はデザイナーズブランド全盛。有名デザイナーのロゴがついたものばかりが売れていた時代だった。そんな中このオブジェクトはその全く逆をいくようなデザイン。ボディには大きなロゴもなければ、装飾的なデザインもないというシンプルに徹したスタイル。それが返って新鮮に受けとめられたのであろう。欧米でじわりじわりと人気を集めていった。
今回、そのオブジェクトが日本でも発売されることになった。海外でひと旗上げて日本に里帰りしたということになる。
流行に左右されない普遍的なデザイン
![]() |
シンプルな中にも他とは違う独自性のあるデザイン |
![]() |
今回のオブジェクトをはじめ、数々のトンボデザインコレクションのデザインも手がけてこられた形見氏 |
「このオブジェクトのデザインで最もこだわったのは、シンプルでありながらいかに特徴を出していくかということです。これは相矛盾することですので、とても難しいことです。」とは形見氏。
ペンのデザインというものはとても制約が多い。長さにして13~14cm程度、幅に至っては15mm前後という限られた中でのものとなる。そのわずかなスペースの中で各社いかに他社と違う独自性を出そうと競いあっている。
![]() |
ボディの両端が絞られ、ほぼ左右対称となっている。 |
今回のオブジェクトは一見すると実にシンプルに見える。しかし、他のどのペンとも違うオリジナリティというものも感じる。
その最たるポイントはボディの両端の独特なライン。端の部分だけキュッと絞られている。中心軸の直径は13mmと比較的太めではあるが、この両端の絞りのおかげでそれ程太いという印象を与えていない。
![]() |
優しく緩やかなライン。 |
![]() |
キャップをボディの後ろにさしても、美しいボディラインは保たれる。 |
もちろんキャップも軽量なアルミなので、キャップをさしても、軽快な握り心地が味わえる。
![]() |
アルミボディにより一般の万年筆にはない軽量感が味わえる。 (重量18.9g) |
落ち着いたカラーリング
![]() |
筆記具のカラーとしては珍しい中間色。 光加減できれいなグラデーションを生み出す。 |
こうした中間色のペンは筆記具の中ではあまり見かけることがない。それは、この処理が大変難しいためだ。アルマイト処理は大変繊細で、ちょっとした作業環境の温度や湿度などで、仕上がりの色が変わってきてしまうのだと言う。特にペンは、キャップとボディが別パーツであるため、それらの色あいがぴったりと一致しなくはならない。そうした点が難しいため、筆記具では敬遠されてきた。
気軽に使える。
![]() |
急いでいるときもサッと使える、引っ張るだけのキャップ式。 |
![]() |
ステンレス製ペン先は丸みを帯びた形状で硬めのタッチ。 |
![]() |
ペン先は普段使いに最適なF(細字)のみの設定。 |
インクはカートリッジ(ブルーのみ)だけの設定ではあるが、一般的な形状をしているので、合うものがあればコンバーターもセット可能だという。
![]() |
インクはカートリッジ式。ボディには予備カートリッジも1本収まる。 |
![]() |
スーツの胸ポケットにさしても映えるボディカラー。 |
<関連リンク>
トンボ デザイン コレクション公式サイト
<ガイド関連記事>
「シンプルな中に隠されたこだわりZOOM535」