五十音 ボールペンと鉛筆
銀座の喧騒がうそのような路地裏の先にその店はあります。
東京銀座、晴海通り沿いにある天賞堂の裏に回ってみると、銀座の真ん中に、こんな静かな路地があったのかということに驚かされます。ひと気のないその路地を進んでいくと、ペンをモチーフにした使い込まれた赤い看板が目に入ってきます。「五十音」というこのショップは、2004年の11月にオープンしたボールペンと鉛筆の専門店。万年筆専門店というのは、聞いたことがありますが、ボールペンと鉛筆の専門というのは珍しいな、なんて考えながら店のドアを開けてみました。

五十音 ボールペンと鉛筆
ペンの形をした赤い看板が目印です。



タイムスリップしたような不思議な空間

五十音 ボールペンと鉛筆
年代モノのショーケースには、こだわりのペンがいっぱい並べられています。
五十音 ボールペンと鉛筆
手前は、クロス社のKIMONO。奥は自由の女神が描かれたカラダッシュ。
五十音 ボールペンと鉛筆
試し書きコーナーも雰囲気たっぷり
こじんまりとした店内には、まるでアンティークショップの様に色々な年代モノの商品が並んでいました。

オーナーの宇井野さんとのご挨拶もそこそこに、私は水を得た魚のように、しばし店内を拝見させていただきました。年代モノのショーケースがいくつもあり、そのひとつを覗き込んでみると、ちょっと見たこともない古いボールペンがありました。お聞きすれば、メーカーも分からない相当古いものだそうです。そのすぐ横に現行のラミー2000のボールペンが並んでいたりします。古いものと新しいものがなんの違和感もなく同居しています。

オーナーの宇井野さんは、もともと文具の中でも筆記具がとりわけお好きで、このお店を始められたそうです。
気になっていた、ボールペンと鉛筆に絞り込んだ理由についてお聞きしたところ、、、

「一番身近な筆記具で馴染むという感覚を思い起こさせてくれる道具だから。そして、なによりボールペンと鉛筆が好きだから。」

「ボールペンは、観光地で買えるお手ごろなものから、宝飾を施したものまで色々なバリエーションがあります。そうですね、女優に例えるなら、万年筆が大女優で、さながらボールペンはコメディからシリアスな役までこなせるチャーミングな女優というところでしょうか。」

「一方、鉛筆は誰しも使ったことがある身近な筆記具ですし、使い込むほどに短くなり、より手に馴染んでくるところが魅力です。」


と、お話しをお聞きして、並々ならぬ文具好きということが、ひしひしと伝わってきました。そうした想いでこの店に集められた数多くのペンは、アメリカやヨーロッパに直接出向いて買い付けているそうです。日本未発売のものも多く、見ているだけでとても楽しくなってしまいます。

ふと、見ると見慣れない艶やかな光沢を放っている鉛筆がありました。これは?とお聞きすると、なんと漆塗りの鉛筆とのこと。



漆塗りの鉛筆とは・・・>>次のページへ

五十音 ボールペンと鉛筆
春慶塗りの鉛筆 1500円/1本

工芸品のような堂々とした存在感のある漆塗り鉛筆

五十音 ボールペンと鉛筆
黒塗りと茶色塗りのコントラストが見事にマッチしています。
五十音 ボールペンと鉛筆
色々な色が混ざり合った独特な雰囲気の津軽塗り鉛筆 1600円~
一見すると、上質なお箸のようにも見えてしまうその鉛筆は、春慶(しゅんけい)塗りといわれるものです。透明な塗りのため、木目の美しさも垣間見ることができます。職人さんの手により何層にも塗り重ねられたそれは、見事な光沢があります。

漆を塗った鉛筆というのは、おそらくこれまでにない試みだと思います。その実現までには色々とご苦労されたそうです。漆塗り職人の方のところに出向いて、鉛筆を塗って欲しいとお願いすれど、「削ってしまうものには、塗れん!」と断れ続けたそうです。確かに、精魂込めて塗ったものを削ってしまう訳ですから、職人さんの気持ちも分かります。宇井野さんは、それでもあきらめきれずに、何度もお願いして、ようやく実現したそうです。

宇井野さんにとって、そうした想い入れのある鉛筆ですが、
「これは飾り物ではなく、鉛筆としてしっかりと使って欲しいですね。削るには、鉛筆削りで簡単に済ませるのではなく、職人さんが手塩にかけて塗ったその想いを感じるためにもナイフでじっくりと味わっていただきたい。」
とおっしゃっていました。なるほど、ひと塗りひと塗り心を込めて塗られた鉛筆を、今度はひと削りひと削り、漆の味わいを確かめながらじっくりと削るということなんでしょう。書くだけでなく、削りも愉しめる贅沢な鉛筆なのです。

握ってみると、まるで手に吸い付いてくるような感触は、漆ならではです。この春慶塗り以外にも、津軽塗り鉛筆などもありました。

五十音 ボールペンと鉛筆
店内の雰囲気にとてもマッチした鳩時計
色々と素敵な商品を見させていただいているうちに、店内の壁にかけてある鳩時計が「ポー、ポー」と泣き始めました。時がたつのをすっかり忘れて夢中になってしまったようです。めまぐるしく人が行き交う銀座の中にあって、五十音の店内だけは、まるでタイムスリップしたような、ゆったりとした時間が流れているようでした。銀座に行かれた際は、覗いてみると楽しいですよ。


■ 五十音
   東京都中央区銀座4-3-5松輪ビル1F宝童稲荷前
   TEL 03-3563-5052
   営業時間 平日 12:00~19:00
        土日祝日 13:00~18:00
        不定休 


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