世界一高い鉛筆「パーフェクトペンシル」

ファーバーカステル「パーフェクトペンシル」
左から9000番・UFO・プラチナコーティング

創業240年を越えるドイツの筆記具&画材メーカー、ファーバーカステル社。鉛筆の芯の硬度の基準を作ったり、六角形の鉛筆を開発した、いわば鉛筆の元祖的メーカーが作ったのが「パーフェクトペンシル」です。丁寧に作られた、折れにくい芯と徹底して材質にこだわった持ちやすい消しゴム付き鉛筆に、キャップ兼エクステンダー、鉛筆削りが一体化して、「書く」「消す」「削る」「携帯する」の全てに対応することから「完全なる筆記具」と呼ばれています。

そんな「パーフェクトペンシル」の存在は、今では「世界一高価な鉛筆」として、普通に知られていますし、文房具好き、筆記具好きの憧れの逸品として高い人気を誇っています。平たくいえば、キャップ付きの消しゴム付き鉛筆でしかないのですが、そのデザインの良さや、老舗ならではの格調の高さ、そして何より、その無駄にゴージャスな価格と「鉛筆」という存在の軽さとのギャップが、男心と言いましょうか、物欲、ガジェット好き、小物好きなどなどの魂を揺さぶるのです。

しかし、実際の所、このパーフェクトペンシルの筆記具としての実力はどの程度なのでしょう。また、伯爵コレクションと呼ばれる、一連のファーバーカステルのシリーズの中の「パーフェクトペンシル」(26250円)と、その廉価版とも言える「UFOパーフェクトペンシル」(5250円前後)、「カステル9000番パーフェクトペンシル」(3150円)との違いは一体どこにあるのでしょう。

今回、それらをじっくり使い比べる機会を得ましたので、そんな「パーフェクトペンシル」の実際について検証してみました。以下が、そのレポートです。

とにかく「所有欲」を満足させてくれる「伯爵コレクション」

「伯爵コレクション・パーフェクトペンシル
プラチナコーティング・ブラウン」
定価:26,250円

まずは、伯爵コレクションの「プラチナコーティング」の「ブラウン」と「ブラック」をじっくりと使ってみました。憧れの「パーフェクトペンシル」です。手に取って、まず驚くのは、キャップ部分や、消しゴム部分をカバーするパーツなどの金属部品のズッシリとした重さです。只者では無いという感じです。何せ、消しゴムをカバーするパーツでさえ、単体で買えば1個5000円です。そんな小さな部品でも、きちんとねじ切りされていている芸の細かさが、また感動的です。

胸ポケットなどに挿すためのクリップは、スプリングが内蔵されていて、無理なく小さな力で動作するのに、ホールディングはしっかりしています。鉛筆を差し込む部分には板バネが仕込まれていて、スムーズに差し込めるのですが、外すのにはちょっと力がいるように作られています。消しごむのカバーも、単に凝っているというのではなく、ポケットなどに入れて持ち運ぶ際の消しゴムのガードであり、消しゴムの汚れを衣服に付けないためでもあり、消しゴムそのものの汚れを見せないためでもあるわけで、そのこだわりぶりには頭が下がる思いです。

それぞれのパーツは、きっちりと厳密に作られているので、例えばキャップの嵌め外しとか、シャープナーの取り外しなどが、とても気持ち良く、つい、何度も分解したり戻したりを繰り返してしまいます。それは、「満足行くモノ」を手にした時の、人間の基本動作のように、気がつくと、口元を緩ませつつ、鉛筆を弄り倒しているのです。「モノ」を所有する喜びについては文句ない製品だと言えるでしょう。

通常よりやや太く軽い鉛筆の書き心地

「伯爵コレクション・パーフェクトペンシル
プラチナコーティング・ブラック」
定価:26,250円

鉛筆(ポケットペンシル)部分は、まず、その軽さが際立ちます。そして、しっとりと手に馴染むような、木の温もりを残した軸の持ち心地の良さ。それは、通常の鉛筆より一回り太い、そのサイズと、丁寧に削られたストライプのシェイプによるホールディングの良さで、確かに書きやすい、とても書き味が良い鉛筆です。

ただし、硬度は「B」なのだけど、普通の鉛筆のBよりもやや硬め。もう少し柔らかいと、持ち心地の良さと相まって、書く気持ち良さが増すのにと思いました。このあたり、力を入れても、よく撓んで折れにくいファーバーカステルならではの芯の構造と関係あるのかも知れません。

細部まで作り込まれた美しさと持ち心地の良さ

 

あと、この鉛筆の良さを本気で味わうには、消しゴム保護のパーツも取り外して書くことをお勧めします。時々、キャップを後ろに挿して使う人がいますが、パーフェクトペンシルに関しては、あの使い方は間違いです。正しい使い方は、キャップを外したらまず後ろに装着して、そのまま鉛筆を回転させます。すると、消しゴムカバーもキャップの中に収納されたまま、鉛筆だけが取り出せるので、その状態で書きます。これが、正しいパーフェクトペンシルの使い方のようです。少なくとも、ガイド納富は、この方法が最も書き味良く鉛筆が使えて、なおかつ、パーツなどをなくすこともない利用法だと思いました。

シャープナーは、実はあまり能力は高くないようです。ただ、ギンギンに尖らせることが出来なくなっているのは好きです。あと、軸の材質の関係かも知れませんが、ブラックの軸の方が、やや削りにくいというか、削った時に削り跡がイマイチ綺麗になりませんでした。やや粘るというか、削った跡が滑らかになりにくい感じです。ただ、黒軸は中も黒いので、削った面が多少凸凹していても目立ちませんが。

次ページは、「UFOパーフェクトペンシル」との使い比べです




デザインに賛否両論の「UFOパーフェクトペンシル」

ファーバーカステル
「UFOパーフェクトペンシル」定価:5,250円

パーフェクトペンシルの普及版とも言えるのが、「UFOパーフェクトペンシル」です。あのパーフェクトペンシルが5000円で買える、というので発売当初は入手が難しいくらい売れた製品でもあります。よく考えると、鉛筆が5000円というのは十分高いのですが、伯爵コレクション版の25000円に比べると、ちょっと買ってもいいかな、という価格に思えてしまったのです。

ただ、材質がアルミになったり、消しゴムカバーがなくなったり、といった部分はともかく、その大きく変わったデザインには賛否両論ありました。特に伯爵コレクションへの思い入れが強いユーザーには、あの妙に丸い頭のデザインや、グリップ部分の丸いゴムなどへの拒否反応が強かったようです。

逆に、道具としてのデザインは伯爵コレクション版より良いとする人も多く、まあ、このあたりは好みですね。ガイド納富は、写真で見ている間は好きではなかったのですが、実際に手に取って使って見ると、これが意外に使いやすく、また、その気取り過ぎないデザインは、毎日持ち歩いている内に、とても愛着が持てるものだということに気がつきました。

市販の鉛筆が使えるのも魅力の一つ

伯爵コレクション版が、専用の鉛筆でないと使えないのに比べ、UFOの方は、一般の鉛筆が使えるというのも嬉しいところ。お気に入りの鉛筆を、ポケットに入れて持ち歩けるようになるわけです。クリップこそ、スプリングなどは装備されていない普通のクリップですが、内部の板バネは伯爵コレクション同様に、鉛筆を気持ち良くホールドしてくれます。また、ボディが長目のシャープナーは、伯爵コレクション版より使いやすい感じでした。

専用鉛筆の消しゴムが黒いので、カバーが無くても汚れが目立ちませんし、深い赤の軸色もとてもキレイです。しかも、素材の木に薄く塗装しただけの仕上げなので、握り心地もとても良いのです。1本210円もするのですが、それでも使いたくなる良い鉛筆だと思います。

芯は伯爵コレクション同様「B」のみで、色や硬さなどもほぼ同じですが、書き味は、個人的にはこちらの方が好きでした。握り心地は伯爵コレクションには及ばないのですが、大量の文字を書くなら、こちらの方が向いているように感じました。僅かに柔らかいのです。

エクステンションとしてのパーフェクトペンシル

エクステンション機能は鉛筆が短くなってから

 

伯爵コレクションのページにも書きましたが、本来、パーフェクトペンシルのキャップは、鉛筆が本当に短くなった時に使うものです。あのキャップはキャップとしても使いますが、エクステンションでもあるわけです。だから、キャップの下部に、伯爵コレクションならヤスリ状の、UFOならゴムの、すべり止めが付いています。あそこを握って書くように作られているわけです。

上の写真のように、キャップを直接握る形になると、伯爵コレクション版のキャップの重さが、逆に書きやすい重みになります。またUFOの方は、やや太めに作られたキャップの太さと、二つのゴムのリングが、とんでもなく指先にフィットして、その書き味の良さに、思わず家中の短い鉛筆を探してしまったほどです。

次のページは「カステル9000番パーフェクトペンシル」と、使い比べのまとめです




プラスチック製パーフェクトペンシルの実際

ファーバーカステル
「カステル9000番パーフェクトペンシル」定価:3,150円

「カステル9000番パーフェクトペンシル」は、現在の所、最も安価なパーフェクトペンシルです。1905年に発売されて以来ずっと世界中で愛用された鉛筆「カステル9000番」の100周年記念のための限定モデルで、9000番の代名詞でもある緑の軸と同じ色のエクステンダーが付いています。

プラスチック製ながら、デザインはUFOスタイルではなく、伯爵コレクション版を写したもの。シャープナー周りのデザインなどは、UFOのデザインが苦手だった人にも支持されています。また、木とプラスチックと素材感が違うにも関わらず、同じ色だと思わせる色合わせが出来ている軸とキャップのコンビネーションは、100周年限定モデルに相応しい丁寧な仕事だと思います。

サイズは9000番鉛筆に合わせてあるので、UFO同様、普通の鉛筆が使えます。また、他のパーフェクトペンシルと違い、専用鉛筆には、「B」と「HB」の二種類の硬さが用意されています。HBは、やはり通常の鉛筆のHBより硬く、H程度の感じですので、鉛筆デッサンなどにも使えます。紙へのノリがとても良いので、絵画用鉛筆としての方が向いているのかも知れません。

鉛筆としての「パーフェクトペンシル」

それぞれに個性的な専用鉛筆たち

例えば、ボールペンや万年筆ではなく「鉛筆」が使いたい、という場合、パーフェクトペンシルを選択するというのは、あまり正解とは言い難い気もします。消せる、ということではシャープペンシル、それもファーバーカステルのシャープペンシルは、とても使いやすい道具です。同時に持ちものとしての喜びもあります。

シャープペンではなく、太い芯が好きなんだという人には、いわゆる芯フォルダ系のものが使いやすいと思います。しかも、シャープペンも芯フォルダも、「携帯する」「書く」「消す」を1本の中に備えていて、シャープペンなら「削る」も必要がない、という形で内包しています。

ただ、それにも増して魅力的だと思えるのは、やはり木の軸であり、使っていけば減っていくということだと思うのです。使っている鉛筆がだんだん短くなって、エクステンションを付けてでも書いて、それでも書けなくなると、また新しい鉛筆を削ってキャップに装着。そんな作業が楽しいし、「書く」楽しみを倍増させるのです。


ガイド納富の「こだわりチェック」

「カステル9000番発売100周年記念缶入りセット」
(1,800円)

アイディアをまとめるために、広いノートに発想の断片を書きつけていったり、下書きの下書きのようなメモを作る時など、書いては消せる、濃くも薄くも書ける、軽い、温かい、鉛筆で書きたくなることがあります。そんな時、パーフェクトペンシルが手元にあるというのは、中々心強いものだと思います。実際、ガイド納富も「UFOパーフェクトペンシル」を入手して以来、毎日持ち歩いて鉛筆を活用するようになりました。

鉛筆としては、どう考えても無意味に高く(それは3000円の9000番モデルでさえも)、「書く」「消す」「削る」「運ぶ」が一体になっている、というコンセプトも、様々な筆記具がある現在、それほど有効なものでもなくなっています。そういう意味では、このパーフェクトペンシルは、完全に趣味のものです。ただ、趣味のものだからこそ、細部にまできちんとお金をかけたモノも作れるわけです。そういう意味では、伯爵コレクション版の25000円は高くはありません。ここまで作り込んだら、そりゃこの値段にはなるな、というものなのです。

また、伯爵コレクション版の鉛筆の太さとエクステンションの太さのバランスの良さは、キャップが付いた筆記具全体の中でも抜群です。このバランスを手に入れるためにも、パーフェクトペンシルを持つ意味はあるかも知れません。もっとも、伯爵コレクションの万年筆も、同じバランスとデザインの良さなので、要するに伯爵コレクションがカッコ良いということなのかも知れません。

趣味と実用の両方を取るなら、ガイド納富は「UFOパーフェクトペンシル」をお勧めします。鉛筆そのものの書き味も、UFOが一番良かったように思います。また、毎日持ち歩ける気楽さと、「鉛筆」そのものの質の高さを両方味わえるのもUFOの魅力。9000番は記念品として、持っておきたいと思わせるものですが(同様に100周年記念で発売された9000番鉛筆の缶入りも、買える内に買っておきたいアイテムではあります)、「パーフェクトペンシル」という存在とプラスチックという素材は、どこか不似合いなのです。

ということで、ガイド納富はたっぷりと「パーフェクトペンシル」が使えただけでも満足でした。何と言うか、使うことで何かが充足するグッズではあるのです。レンタルとかあると良いですよね。


<関連リンク>

日本シイベルヘグナーの「伯爵コレクション」ページ
日本シイベルヘグナーの「UFOパーフェクトペンシル」ページ
ファーバーカステルの日本法人「日本シイベルヘグナー」のページ
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